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第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。

38 唯一の半身

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 クリスが俺を抱き上げる。
 特に会話もないまま、風呂場を出てベッドまで進む。
 …ドキドキが、強くなった。
 クリスはゆっくり俺をおろした。全身にあたるベッドのシーツが、妙に冷たく感じる。
 クリスはテーブルの上の果実水を口に含み、俺に口付けた。
 爽やかな香りの果実水が、流し込まれる。ちょっとずつ。お風呂で熱くなってた身体に、水分が染み込んでいく。
 何口目かの口移しを飲み込んだ後、唇は離れなかった。
 何度も角度を変えて、唇が触れる。
 口の中に入ってきた舌は、くすぐるように口内を舐め、優しく舌を絡め取る。

「ん………」

 いつもの奪われるようなキスも好きだけど、ゆっくりゆっくり、官能を引き出すようなこんなキスもいい。

 一度離れたとき、俺とクリスの口元が糸でつながった。それを見るだけで、身体中が熱くなる。

 クリスはテーブルの上のランタンを、ぎりぎりまで暗くした。
 真っ暗じゃないけど、本を読めるほど明るくもない。
 そんな暗さだけど、クリスの姿はしっかり見えるし、表情もわかる。

「アキ……愛してる」

 誓いのように左手の指先を持たれ、口付けられた。
 俺を見てくるクリスの瞳に熱を感じる。
 ちゅ…って指先に何度も唇を落として、徐に、ベッドサイドの棚から小瓶を取り出した。

「…なに、それ」
「主に初夜に使う香油だ。ほんの僅かに媚薬が含まれてる」
「び、やく」
「そんなに、強いものじゃない。痛みを少し和らげるくらいの効果しかないものだ。久しぶりだからな。…アキにつらい思いをさせたくないんだ。……使ってもいいか?」

 ……痛みを和らげるだけ……、って、いろんなフラグにしか思えない。俺が乱れまくる未来しか思い浮かばない。
 けど、『初夜』って。
 ……ああ、うん。そうだね。気分的にそんな、感じだ。

「……いいよ、使って」

 そういうの使わなくても、俺、最初から気持ちよくなってたから…、そういうものがあるんだってことも知らなかった…。

「つらかったり痛かったりしたら言うんだぞ?隠してもわかるからな?」
「わかるなら言わなくてもいいじゃん」

 ふふ…っと笑ってしまった。
 クリスも微笑んでくれる。

「クリス、愛してる……」
「俺もだ。アキ……アキラ、俺はお前だけを愛している。アキラの全て、俺のものだ。俺も、アキラだけのものだ」
「うん………うん」
「俺の……唯一の半身」

 もう一度、唇を重ねた。
 好き。大好き。愛してる。

 クリスがキスしたまま、俺の左手を持ち上げて、自分の首に回した。意図がわかって、回された左手を、右手でギュッと掴む。
 じわりと涙がにじむ。
 ほんと、どうしてわかってくれるんだろう。
 両腕で抱きつきたかった。しっかり、くっついていたかった。
 自分じゃどうしようもないことを、クリスが叶えてくれた。

「ん……んん……くりす、すき、すき…っ」

 クリスが右手で俺を抱きしめてくれる。背中に腕が入ったから、背筋が少し弓なりに反った。
 何か蓋を開ける音がして、花の香がした。
 それから、クリスの左手が俺の胸に触れてきたけど、その手は妙にヌルっとしていて、息を詰めた。
 多分、初夜用っていう香油なんだろうけど、そのヌルヌルした指で、優しく優しく乳首を撫でられて、頭の中がおかしくなりそうだった。

「はぁ……ぅん」
「気持ちいい?」
「ぅん……、いい……は、ぁぅ」

 右も左も優しくこねられる。つままれるときでさえ、もどかしくなるほどに優しい。左の胸をいじるときには、殊更優しさを増した。左肩から胸の先にかけて、何度も何度も撫でて、時々、心音を確認するようにピタリと止まる。
 それから、クリスが体をずらした。
 俺の腕の中から抜けて、左胸にキスを落とす。
 口に入れても問題のないものなのか、香油に濡れた乳首を、唇で挟むように愛撫してくる。

「んん……、やぁぅ…、ひぁ、ぁっ」

 食まれ、吸われて、舌先でちろちろ舐められる。
 ひどく丁寧に。
 ……ああ、でも、香油をなめたら、クリスにも媚薬成分が入っちゃうんじゃないのかな…。
 なんとなく目を開けて、クリスの方を見てしまった。途端、乳首を吸っていたクリスと目があって、顔が熱くなる。クリスは俺に見せつけるように舌を出し、舌先で乳首を甚振り始めた。

「あ……あ……っ、くりす、くりす…っ」

 視覚的にもやばい。
 は…っ、は…っ、て、短い呼吸を繰り返していたら、背中に回っていた手……は、ん、右と左、いつかわったんだっけ?頭の中が熱くて考えられなくて。多分、左胸をいじられたあたりから、右手と左手の役目が変わったんだと思うけど…。はっきり覚えていない。
 ただ、今は、左手が背中に当てられていて、その手がクリスの体ごと下に下に降りてきたことだけはわかった。

「アキ…足を」

 やんわりと太腿を押し広げられる。
 多分、俺の息子は十分反応してて、頭をもたげてるはず。そこに痛いほどの視線を感じて、さらに固くなった気がした。

 クリスの指が、太ももの内側をくすぐるようになでていく。……クリスの息遣いも荒くなってて、それが嬉しく感じる。
 ゆっくり俺の息子に触れてきた指先に、そこまで優しくなくてもいいのに…って、じれったい気持ちが生まれる。気持ちよすぎてどうにかなりそうなんだもん…。
 どうしよう…と、思っていたら、左手も体の下から抜かれた。それからすぐに、俺の息子の先に、冷たいような、熱いような、とろっとした液体がかけられた。

「あ……」

 多分、例の香油。
 鈴口をいじられながら、ぬるぬると竿をしごかれる。
 ……あ、それはだめ。気持ちよすぎる…!

「あっ、あぁぁ……っ、ぁんんっ」

 香油がたされた。
 それは当然のように流れ落ちて、尻のほうまで濡らしていく。

「痛かったら言うんだぞ?」

 クリスがそう言葉にして、香油に濡れた指を、窄まりの中に入れてきた。


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