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第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。
38 今のうちに作戦会議!
しおりを挟むいちゃついてていーよ
って、ギルマスは言い置いて、ムカつく魔法師さんたちを連れて森に行った。
だったら堂々といちゃつけばいっか!ってことで、ずーっとクリスの膝の上。クリスが心配しすぎて俺をおろしてくれないだけだけど。俺もおとなしくそこに収まってる。だって、誰も嫌味言わないし、むしろそのままでいいって言ってくれるし、クリスの機嫌良くなるし。
俺達の周りには、冒険者さんたちとオットーさんとザイルさんがいる。俺のいちゃつき云々は、まあ、別として、敵がいないうちに打ち合わせ!
「貴方方も聞いていたとおり、この森の幻惑魔法に関しては、魔法師長の仕業だ。下調べが間に合わず申し訳ない」
「いや、殿下方の落ち度じゃないでしょ。むしろ、アキラさん以外、誰も気づかなかたのだから、仕方ないっすよ。アキラさんが気づいてくれたおかげで、こちらは致命的な被害は出ていない。何度もいいますけど、あまり謝らないでくださいよ。報酬さえいただければ、俺達は満足なんで」
冒険者さんたちの総意ってことらしい。
「うん。じゃあ、そのあたりもういいでしょ?クリス。あの人たちのことは、クリスがどうにかするだろうし。だから、とりあえず、どこまでがあの人たちの仕業だったか、ってことだけど」
わかっていることは、森の幻惑魔法と、蟻の大群30匹についてはあいつの仕業ってこと。
「クリスがここの調査に来ること決めたのって、魔物の目撃が増えたのと、近隣の村の畑被害だよね」
「ああ」
んー、なんか、熊みたい…。冬眠する前後で森の中や山の中での目撃情報が増えたり、民家の畑とかで作物食べたり、って話はよく聞く。……でも、魔物として処理されてる熊が冬眠するとも思えない。
森の幻惑自体は、冒険者さんたちが調査を開始した時点でかけられていたと思う。結構な広さの森だから、ヘルハウンドやグリズリーがでることもわかる。よくわからないのは、オーガとかワームかな。
広い森と言っても、街道があるくらいなんだから、それなりに管理されてるはずだよね。
「クリス…、森の魔物の目撃情報って、どんな魔物が、とか、種類は特定されてないんだよね?」
「そうだな…。『何かが動いた』『唸り声が聞こえた』『足音が聞こえた』そんなものだった。ああ、ヘルハウンドだけは一度報告に上がっている。商人がこの森を通ったときに襲われた」
「ヘルハウンド…」
目撃情報だけじゃなくて襲われた人もいたって聞いてたけど…、そっか。商人さんが…。
「護衛についていた冒険者が撃退している。誰も怪我はしていない」
それならよかった。
「だとしたら、他の魔物目撃情報って、嘘かもしれないよね?商人さんが襲われたっていうのは、本当のことだと思うけど」
「何故そう思う?」
「あいつがクリスをここに向かわせるために仕組んだことなら、納得できるかなぁ、って」
森の件については。
「では村は?」
「俺としては、そっちは別件で、足跡とか調査しないとわかんないけど、ゴブリンとかの被害なんじゃないのかなって思うよ」
ゴブリンが村の畑や家畜を襲うのはセオリーだからね!TRPGの!
「確かにそういった内容の依頼は何度か来るな」
幼馴染のディーさんが頷くと、周りの冒険者さんたちもうんうん、と。
おお……。本当にリアルTRPG……。
「我々冒険者側としても、西が騒がしいとの情報は得ていた。詳細は店主殿じゃなきゃわからないが…」
ディーさんって、なにげにギルマスの信頼厚いよね。きっとできる人なんだな…。
「あ、あと、もしかしたら、クイーンはいないのかも」
蟻の巣があって、クイーンがいて、戦闘蟻を増やしているんじゃないか…って予想してたけど、蟻があいつらの仕業なら、これ以上はいないのかも。数的には一致する。
だとしたら、30匹もの蟻をここに運んだ手段、森に隠し続けた方法がわからないんだけど。
「そのあたりは店主が戻ったら相談だな」
クリスの指が、俺の髪を梳いてく。…ちょっとぞわってするからやめて。真面目な話ししてるんだから。
「明日から…どうしよう」
西の空は橙色に染まりつつある。
あの人たちはこれから城に帰るのかな…って思ってたら、森の方から『パキン』って音が聞こえたような気がして、視線をそちらに向けた。
「あ」
「アキ?」
「…幻惑魔法、多分なくなった」
俺が感じた音は、クリスには感じられなかったみたい。不思議現象ですネ。
ってことは、そろそろギルマスたち戻ってきそうだなぁ。
「あの人達の前であまり作戦会議的なことしたくない…」
「だな。…君たちには申し訳ないが、あいつらが何か言ってきても一切取り合わず無視してほしい」
クリスが冒険者さんたちに、神妙な顔で伝えた。気分悪くするかなって思ったけど、「ええ、わかってます」って答えで安心した。なんでも、ギルマスからの指示が出てたとか。
冒険者さんたちの返事と様子をしっかりと確認したクリスは、「ありがとう」と頷く。
「明日の動きについては夜にレヴィ殿と検討する。君たちにはその後伝達するので、今日はもう自由行動に移って欲しい」
「わかりました」
解散の合図だ。
冒険者さんたちは、PT毎に行動し始めた。
夕飯はみんなで一緒、は、難しそう。和気あいあいしたかったなぁ。
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