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第2章 お城でも溺愛生活継続中です。

50 西町『暁亭』 ◆オットー

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 ああやって念を押したとはいえ、殿下はアキラさんに手を出すことなく、最後まで仕事を片付けてくれるだろうか。

 まあ、俺がいなくなっても、すぐにザイルもメリダ殿も戻るだろうから心配は…いらないはずだけど。殿下に厳しいメリダ殿も、アキラさんには甘い。ザイルに至っては、殿下に言いくるめられてしまう不安がある。

 殿下がアキラさんと寝室にこもってしまったら…、手の出しようがない。アキラさんには、なんとしてでも、踏みとどまってもらわないとならないのだけど…。

「俺も甘いんだよなぁ」

 多分、アキラさんに強く出れる団員は、うちにはいないんだろうけど。
 半ば諦めつつ、『暁亭』の扉を開けた。

「いらっしゃい――――って、なんだ。オットーじゃないか」
「レヴィ殿、依頼だ」

 殿下からの書状を、カウンターの奥にいたガタイのいい親父――――この冒険者宿『暁亭』の店主をしているレヴィ殿に手渡した。

「クリストフ殿下からか。相変わらず忙しいことで」
「ようやく婚約者も決まったというのにな。まあ…仕方ない」
「へえ?そりゃ、いいことを聞いた」

 レヴィ殿はくつくつ笑いながら、書状を開き、ざっと目を通しながら表情を引き締めていた。

「ああ、確かにな。こっちにも西が騒がしいって話が来てる。間違いないな」
「どれくらい用意できそうだ?」
「明日出発できるのは二組だな。明後日には…そうだな…」

 考え込んだレヴィ殿が、指を折り始めた。

「殿下はけちらないからな。まあ、それなりの使い手を更に三組くらいは向かわせられるはずだ。いつも通りだろ?」
「あー…」
「ん?なんだよ。いつも通りじゃだめなのか?」
「いや…」

 歯切れの悪い自分に、レヴィ殿が胡乱な目を向けてきた。

「きな臭い話が絡むなら」
「あ、いや、違うんだ。……殿下の婚約者殿も同行するから、その……、ところ構わずいちゃいちゃする恋人同士を見ても狼狽えない奴がいいな、と…」
「は?」
「あと、横恋慕しない奴。そんなことになったら魔物討伐どころじゃなくなる」
「…恋人持参で戦場に行くのか?あの殿下が?」
「色々あってな」

 詳しいことは話せない。
 そんな俺に、付き合いの長いレヴィ殿は同情したかのような視線を送ってくる。

「…大丈夫なのか、殿下」
「以前よりも落ち着かれた。全て婚約者殿のおかげだ」
「お前さんも大変だなぁ…団長さん。そんな職場やめて、ここで働かないか?」
「冗談。俺は今の仕事が好きなんだよ」

 知ってるだろうに。
 レヴィ殿は少しの間無言で、俺と書状を見比べて、ため息をついて頷いた。

「わかった。まあ、依頼は受理だ。人選は任せてくれ」
「ああ。いつものことだが、魔物の種類、数等の報告も細かにしてほしい。魔物から取れる素材は冒険者たちの好きにしてもらって構わない」
「了解。実際の集合場所は、街道に沿った西の森入り口だな。明日先行する二組に野営場所を作らせておく」
「頼むよ」
「任せておけ」

 ニッ、と笑うレヴィ殿と、拳を合わせる。

「俺も行くかなぁ」
「…店主自らが出向いてどうする」
「いや。殿下と婚約者のいちゃいちゃが気になる。見てみたい」
「………お前なぁ」

 もう、苦笑するしかない。
 ほんとに来そうだな。


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