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第2章 お城でも溺愛生活継続中です。
36 引き続きクリスの膝の上で魔法の基礎から学んでます
しおりを挟む「じゃあ、続きだ。アキは魔法の何が知りたい?」
「んー、属性、かな?」
「ふむ…」
クリスはまたページをめくる。
そのうちピタリと指が止まり、また、文を指で辿る。
「属性には色々種類がある。魔力が高ければ高いほど、操ることができる属性は増える。あとは、魔力の高さだけではなく、適性も必要だな。大体は性格に左右されるとも言われているが…このあたりははっきりとはしていない。城の魔法師たちは、大体二属性くらいは持っていたはずだ。詳しくは分からないが」
「……俺、もう四つ持ってたんじゃなかったっけ……?」
「そうだな。まあ、アキの場合、まだ他の属性も使えると、俺は踏んでいる」
「火、水、風、氷………の、ほか?」
「色々あるからな。光、闇、雷、土……毒なんてものもある」
「うわぁ……」
それって、なんか悪役っぽいんですけど。
「聖属性とかはないの?」
なんとなく、平和そう、というか、癒やし系ぽいけど。
「聖属性は……」
クリスの指が動き、文字をたどった。
「かなり昔に顕現しているな。治癒や浄化の魔法を使うことができたらしい」
「昔…ってことは、今は使えない?」
「治癒や浄化は神官が行うからな。女神アウラリーネに祈り、力を借りる。それ自体に魔力は必要ない。ただ、神官になるための試験と儀式を受けなければならないが」
「クリスって、神官でもあるんだっけ」
「ああ。必要に迫られて儀式を受けた」
そう言ったクリスの表情が少し翳った。つらそうな、何かを耐えるような、そんな表情。
「まあ、俺は下位の神官位しかないからな。簡単な浄化くらいしかできないが、それでも必要なんだ。人が亡くなったときに浄化をしなければ、死人返り…魔物化することがあるから」
タリカ村でのクリスのことを思い出した。
あのときの光が、浄化なんだろう。
クリスの表情からすれば、タリカ村のときのように、魔物被害や、もしかしたら人同士の争いで、命を無くしてしまう人がいるんだろう。
辺境なら、神官さんなんていないかもしれない。そしたら、亡くなった人は魔物になってしまうかもしれなくて。だからこその、神官。祈るために。亡くなった方を、浄化するために。
「クリスはやっぱり凄いね」
少し体を伸ばして、頬にキスをする。
クリスはちょっと驚いた顔をしたあと、破顔した。
「アキ」
「クリス、大好き」
「ああ。…愛してる」
唇が触れそうになったとき、咳払いが。それと同時に湯気のあがる紅茶が注がれた。
「儀式を受けるだけでは神官にはなれませんよ。女神に対しての絶対的な信仰を持たなければ、本来であれば資格すらない。そして、その信仰は時として信者を盲目にする」
オットーさんの表情は硬い。何かを思い出したのか、いつも感じる優しさがなくて。オットーさんはオットーさんで、神官と何かあったのかな…?
「クリスは、信者ってこと?」
熱い紅茶を一口飲んでから、なにげに聞いてみた。
「まあ…国教だからな。祈りはするが、オットーが言うようなものではない。俺の場合は、特殊な魔力があったから、資格を得たようなものだ」
「お兄さんは努力家だから、って言ってたよ?」
「試験のようなものがあるんだ。三ヶ月ほどの研修の後でな。女神への信仰を試される。本来であれば絶対的な信仰。俺の場合は信仰の度合いが足りない分を、魔力で補ったってとこだろうな」
「……なかなかに…濃いというか、面倒というか……。魔力で補える資格試験て…不思議すぎる。むしろ、その研修とかきっかけにして、聖属性の魔法を使えるようになったって思ったほうがしっくりくる」
オットーさんのことも気になるけど、今はほいほい聞ける雰囲気じゃないし、そこまで親しいわけでもないしなぁ。根掘り葉掘り聞かれるの、嫌だよね。
それにしても、聞けば聞くほど魔力…魔法って奥が深い。
顔を上げたら、また、驚き顔の二人に遭遇した。…今日、こんなんばっかだね。
まあ、いいや。
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