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第2章 お城でも溺愛生活継続中です。

29 寂しかった

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 食後は寝室に戻った。
 テーブルの上に散乱した紙をまとめて、復習の時間に当てる。
 メリダさんは他に三冊の絵本を持ってきてくれて、テーブルの上においてくれた。…ちなみに、主人公は全て『うさぎ』さん。何故に。

『寒くはないですか?』
『大丈夫です』

 と、言いつつもくしゃみが出た。
 メリダさんは苦笑して、カーディガンとひざ掛けを用意してくれた。…寒くは…ないと思うんだけど、暖かくて心地良い。

 メリダさんは少し席を外したと思ったら、ホットミルクも用意してくれた。飲んでみると、少し甘い。
 ホットミルクを飲みつつ、言葉を書きつつ、要点をまとめつつ、絵本を見つつ。あっという間に時間が過ぎていく。

『アキラさん』
『はい?』
『そろそろ――――して、休みませんか?あまり――――ると、身体に悪いですよ』

 ふむ。微妙にわからん。
 最後の方は、根を詰めると、とか、そんな言葉かな。
 首を傾げてると、メリダさんは笑顔のまま風呂場の方を指差した。

『あー』

 風呂入って休め、ってことか。

『大丈夫なので、メリダさん、えーと、先に?休んでください』
『ですが』
『クリスのこと、待つ、から』

 なめらかな会話には程遠いけど、ちゃんと伝わっている。

『わかりました。今日は――――しますね。アキラさん、おやすみなさい』
『はい。おやすみなさい』

 笑って頭を下げる。
 本当に今日はメリダさんに助けてもらった。今度何かお礼がしたい。

「…それにしても…、クリス遅いなぁ…」

 メリダさんが就寝を勧めてきたんだから、そういう時間なんだろう。

「んー……」

 四冊目の絵本を閉じた。

 先にお風呂入ってもいいかな。…ほんとは、クリスと入りたかったけど…。
 クローゼットから、すっかり俺のパジャマになってるクリスの服を取り出して、風呂場に向かった。
 脱衣所の鏡に写った顔は、どことなく疲れている。

「お風呂入って、果実水飲んで、絵本の続きを読んで…」

 クリスを待てばいい。
 昼寝もしたし、まだ起きてられる。

 木の扉を開けたら湯けむりが流れ出てきた。うん。気持ちがいい。
 シャンプーみたいなもので髪を洗い、リンスのようなものも使う。ポンプ式ではなくて、透明で綺麗な細工の施されたガラス瓶に入ってる。身体は、固形石鹸。

 手早く、だけどしっかり洗って、湯船に浸かる。あー…風呂の構造まだ聞いてない。
 縁に頭をのせて目を閉じた。
 気持ちがいい。
 やっぱり疲れてたのかな。
 なんだか寝てしまいそうだけど、クリスが帰ってきたら明日のことを聞かなきゃ。

 朝、起きたときに、少しキスをしただけ。俺が寝てる間の訪問はノーカウント。俺にとっては夢の中のことだし。

 クリスに触れたい。
 抱きしめてもらいたい。
 キスしてもらいたい。

 ――――それから、クリスのを、身体の奥で感じたい。

「……………うぁ」

 思わず想像して、手で顔を覆ってしまった。
 顔が熱い。しかも、俺のソコがゾワリと震えて力が入る。
 だって、クリスが悪い。ここ数日間、散々俺のこと抱くから。なのに、突然の放置で。まあ、仕事だからね。うん、わかっちゃいるけどさ!

「………あがろ」

 これ以上ここで考え事してたらのぼせてしまう。
 ちょっとため息をつきながら湯船から出たとき、風呂場の扉が開いた。

『アキ』
「!」

 入ってきたのは、当然クリスで。

「クリス…!」

 って、俺は駆け出した。……風呂場で。

「うわ…っ」

 よって、滑るのも当然で。

『アキっ』

 倒れはしなかったけど。
 クリスの腕が俺を支えてくれてて。
 焦った顔して、でも、すぐに苦笑して。

『アキ』

 唇が触れた。
 目は閉じれない。
 嬉しくて、勿体なくて。

「んっ」

 角度を変えて何度も。
 そのうち舌が入り込んできて、それでも目が閉じれない。クリスも目を閉じないで、細められた瞳がずっと俺を見てる。

「ん……んっ、んぅ」

 喉の奥に溜まった物を飲みこんでも終わらない。
 体が震える。
 足に力が入らなくなって、裸の背中にしがみついた。

「ん………ふぁ、ぁ、クリス…っ」
「ただいま」
「ん……おか、えりな、さい……っ」



 ほんの少し、涙声になった。
 クリスがいない一日、すごく、寂しかったんだよ。


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