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第2章 お城でも溺愛生活継続中です。
16 お兄ちゃんは密かに嫉妬する ◆ギルベルト
しおりを挟む何というのか。
クリストフが用意した魔法師の正装は、ある意味予想以上のものだった。…いや、予想通り、か?この短時間でよくあの質のものを準備できたな、と、感心すらしてしまう。
すでに驚かなくなった、アキラを抱き上げての移動。私もそうだけど、アキラはすっかり抵抗していない。
それにしても、アキラの、魔法師たちへの考え方を聞いたときには、笑いが止まらなかった。
今までそんなふうに考えた事もない。私達の中では、常に彼らは高慢で厄介な存在だという認識がされているのに。
アキラは、それはいいのだと言う。あんな彼らを擁護しているようにも聞こえる発言が、次の瞬間には、「もっと魔法の練習しろよ、使えない」…とでも言っているように思えて、笑ってしまったのだ。
楽しい。
アキラに関わると、なんでもない日常が楽しくなる。
件の魔法師長のやりすぎた行為のせいで、謁見式は有耶無耶のうちに終わってしまった。
けれど、当初の予定通り、陛下から婚約について認めてもらえたし、アキラの魔法師としての力も公にすることができた。なので、成果は上々。
クリストフは父上の前でも、アキラに変わらない瞳を向ける。
それは酷く甘く、優しい。
やはりアキラは熱を出しているようで、クリストフは私達に礼を取るとすぐにアキラを連れて行ってしまった。
「ギルベルト」
「なんでしょうか、父上」
「あれは、クリストフ本人か?」
父上の言葉にまた笑ってしまった。
「間違いなくクリストフですよ」
父上の驚きもまた当然のことだ。
この数日間で、クリストフは別人のようになってしまったのだから。…あくまでも、いい意味で。
「ふむ……。やはり共に食事しながら話をしたかったな」
「まあ、そのうちできますよ。この間のときより、状態はかなり良さそうですし」
「そうか」
「それにしても」
「何かあるのか?」
「二人を見てるとなんだか妬けますね」
私の発言に、父上はまた驚いたような顔をする。
「まさか、ギルベルト」
「盛大な勘違いはしないでくださいね、父上?話がややこしくなりますから。ただ、私は、二人を見てるとティーナに会いたくなるんですよ」
「ああ、なるほど」
私の婚約者、フロレンティーナ・ヴォルタール公爵令嬢とは、3ヶ月後に結婚の儀を執り行うことが決まっている。
会いに行けば会える。望めば会いに来てくれる。…それでも、どうしても、常に手の届くところに愛しい者がいるという状況が、羨ましく思えてしまうのだ。
「では、皆で食事をするときには、フロレンティーナ嬢にも登城してもらおう。連絡を忘れるなよ?」
「!」
楽しそうに笑う父上。
「ありがとうございます」
アキラにも紹介しよう。
二人はきっと、仲良くなれるはずだから。
ティーナ。
すっかり変わったクリスを見て、どんな表情をするだろう。
早く会いたいよ、ティーナ。
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