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第2章 お城でも溺愛生活継続中です。
33 クリスの執務室に
しおりを挟む食後は文字の復習。
まだ魔力効果が残ってるから、発音は後にして、書取と、絵本を読むことを、中心にする。
時々メリダさんが淹れてくれた紅茶を飲んで、肩の力を抜く。
目を閉じて頭の中を整理して、また取り掛かる。
それを繰り返してるうちに、部屋にノックの音がした。
「はい」
メリダさんが扉を開けてくれる。
「おはようございます、アキラさん。お迎えに上がりました」
来てくれたのはザイルさんだった。
俺は大急ぎでテーブルの上を片付けて、寝室を出る。
「アキラさん、いってらっしゃいませ」
「はい。行ってきます!」
メリダさんが笑って見送ってくれた。
ザイルさんに促されるまま部屋を出て廊下を進む。途中、何人もの人とすれ違うけど、声をかけてくる人はいない。
…相変わらず視線が痛い。
ついため息をついてしまう。
そんな俺に気づいたのか、ザイルさんが話しかけてくれて、楽しく会話をしてるうちに周囲のことは気にならなくなった。
でも唐突に言葉がわからなくなって、ああ時間切れか…と納得し、肩をすくめる仕草をしたら、ザイルさんは笑って頷いてくれた。
それからは、ゆっくり、言葉を選んでの会話。俺が聞き取りやすいように。
前と同じように廊下を進む。朝の陽射しが温かい。
少し閑散とした廊下の奥に、目指す部屋の扉がある。
ザイルさんがノックをしてから扉を開けた、直後。中から伸びてきた腕に抱きすくめられた。
『アキ』
『クリス…っ』
すぐに唇が重なる。
すがりつくように背中に腕を回したら、後ろで扉が閉まる音がした。
「ん……っ」
案内してくれたザイルさんとか、もしかしたら、もっと人がいたかもしれないけど、気にする余裕もないくらいに、舌を絡めて熱を感じた。
クリスの腕は力強く俺を抱きしめてくれている。俺のことを求めてくれてるんだ…って、嬉しくなる。
「クリス…」
吐息の間に何度も喉がなった。
そのたびに体の中はポカポカと暖かくなる。…クリスの魔力が俺の中に溶け込んでるんだ。
もう離れなきゃ…って思うのに、クリスの腕は俺を抱いたまま離してくれない。
自分から唇を離そうとしても、頭の後ろを抑えられてうまく行かなくて、何度も何度も舌で口内を愛撫されてるうちに、頭の中に霞がかかったような感じがしてきた。
………あ、これ、やばいやつ。
身体が反応する。気持ちよくて、自制できなくて、しなきゃならないことも忘れて、ただただクリスを求めてしまう。
でも、抵抗はできなくて。
どうしよう、どうしよう…………。
って、内心めちゃくちゃ焦っていたら、
「殿下、いい加減にしてください。仕事、増やされたいんですか?」
………って声に、クリスの舌がとまって…、ゆっくりと、とても名残惜しそうに離れていった。
「オットー」
「アキラさんも困った顔になってるでしょう。今お茶を淹れるので、とりあえずソファにおかけください」
困った…顔してた?俺?
どうしよう…とは思っていたけど、多分困ってない。むしろ、気持ちよくて、だらしない顔してたと………思うけど。
「……困った顔、してたか?」
って、真面目にクリスに聞かれて、ものすごい勢いで首を縦に振った。
クリスは俺の顔をじっと見てから、ぷって笑い出した。
「クリスっ」
「悪い。そうだな。困らせたな。こんなに真っ赤になって、目元も潤ませているしな」
ああ、はい。そうですね。そうですよね。困ってないの丸わかりですよね!
てか、オットーさん、ありがとうございます。ここに来た目的、ちょっと忘れるところだった。
気をつけねば。
……まあ、嬉しいから文句は言わないけどさ!
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