上 下
20 / 560
第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。

19 乙女モード炸裂中です

しおりを挟む



 やらかした。
 盛大にやらかした!
 早朝にひどくアレな夢を見た。
 その夢は現実にも当然のように影響し、あろうことかクリスに処理してもらったとか、消え去りたいくらいに恥ずかしい。

 しかも、2度目に目覚めたときには体が重くて熱を出してた、とか………、俺、本当にどうしようもないくらいに情けない。




「気分は?」
「……悪くない。眠いだけ」

 大きな手が額にかかる。
 少し冷たくて気持ちがいい。
 でも、その手を妙に意識してしまって、どうしても狼狽えてしまう。
 クリスが悪いわけじゃない。
 どちらかといえば、俺がやらかしたせいであって。

「慣れないことで疲れたんだろ。出発まで休んでろ」
「でも…」
「そんなんで出てこられても、俺が仕事にならないんだよ」

 苦笑された。

「…なんで?」

 そしたら今度はため息。

「本気で聞いてるのか?」
「うん」

 そしたら、また、ため息。

「お前のことが心配だからに決まってるだろ」
「っ!」
「全く…」

 呆れた声。それから、触れるだけの口づけ。
 ううう。だめ。
 なんか、今の俺の中身、乙女っぽい。
 もっとして、ってねだりそうになる。
 胸の奥がきゅんきゅん(………)してやばい。
 も、誰か助けてっ。

「水差しの中に果実水が入ってる」
「うん…」
「休んでいろよ?」
「うん……」

 頷いたら、クリスが離れた。
 やだ。離れたら寂しい。

「いってらっしゃい」

 天幕から出ていこうとする背中を見て、思わずそう声をかけた。ほんとは、ここにいてほしい。けど、言えない。黙ったままいなくなる背中に、寂しさを感じてしまって。
 クリスは何故か驚いたような顔をしたけど、すぐに笑顔になって「行ってくる」と言葉を残した。
 …もしかして、習慣的にそういう挨拶ってないんだろうか?
 まあ、返してくれたし、嫌そうな顔しなかったし、どちらでもいいや。

「……」

 一人でいる天幕の中は静かだ。
 昨日この世界に来た時以来の一人きり。
 スライムに襲われたあたりから、俺の側には常にクリスがいた。ちょっと見上げれば笑顔に触れる距離で。

「……ちょっと……、寂しい……かな」

 たった一日しか経っていないというのに、俺の、クリスへの警戒心のなさはどうなっているんだろう。
 クリスは一目惚れした、って言ってた。
 俺は…どうなんだろう。一目惚れ、では、ないと思うんだけど。でも、クリスのことが好き…………なんだと思う。多分、恐らく。不確かな確信。

 …思考がめちゃくちゃだ。
 クリスは俺によく触る。
 俺は?クリスに触れたいと思ってる?
 触れられるのは気持ちがいい。
 触れたら…気持ちがいいだろうか?
 クリスは俺のことを抱きたい、って、言った。意味はわかる。ちゃんと、わかってる。
 夢の中のクリスは俺の願望だったんだろうか。優しくて、熱くて、激しくて。

「ん…」

 なんとなく、尻の窄まりを服の上からなでてみた。
 そこは明らかに小さくて、指だって入るかわからない。なのに、ここに、クリスのあれをいれる?

「…無理っ」

 恥ずかしさで死ねる。
 どうしようもない。思い出しただけで心臓が早くなる。
 今朝、クリスはどう思ったんだろう。俺に触れて、嫌じゃなかったんだろうか。
 クリスの手、すごく、気持ちが良くて…。

「ん」

 体が落ち着かない。
 …駄目だなぁ。休め、って、言われたのに。
 何も初めてなわけじゃない。
 ズボンの前を寛げて、下着の中に手を入れた。

「んっ」

 硬くなっていたそれを、何となくクリスの手付きを思い出しながらしごいてみる。

「……っ、ぁ」

 亀頭をいじり、竿を上下させる。…気持ちがいい。けど、なにか足りない。
 何度もしごいているうちに、十分に硬く反り上がってきたのに、何度やってもいけない。

「………っ」

 苦しさが増すだけで、あの蕩けるような解放感がやってこない。
 息だけが荒くなる。

「なんで駄目かなぁ…」

 クリスにされたときはあんなに気持ちよかったのに。
 やめた。諦めよう。今は寝てしまおう。


しおりを挟む
感想 541

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

騎士に溺愛されました

あいえだ
BL
ある日死んだはずの俺。でも、魔導士ジョージの力によって呼ばれた異世界は選ばれし魔法騎士たちがモンスターと戦う世界だった。新人騎士として新しい生活を始めた俺、セアラには次々と魔法騎士の溺愛が待っていた。セアラが生まれた理由、セアラを愛する魔法騎士たち、モンスターとの戦い、そしてモンスターを統べる敵のボスの存在。 総受けです。なんでも許せる方向け。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

処理中です...