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ふくふくおむねと僕の婚約者
ニールのお屋敷に行くときは必ず熱烈歓迎される僕
しおりを挟む『次のお休みは僕の屋敷においで』
それを言われたのは学院でだった。
なんの参考にしてたのかよくわからないニールの『ふくふくお胸もとい服の観察行為』のあった休日から、二回目の休日。
拒否する理由は何もないから、僕はその招待を快く受ける。
街歩きと違って、お屋敷に行くときはお泊りもするのが暗黙の了解で、毎回毎回お泊りだとお互いの家に印象が悪いから、『健全な』街歩きをしてる。……することはしてるけど。だって、ニールのこと大好きだもん。
「いらっしゃいませ、ジュリアン様」
「こんにちは。お世話になります」
出迎えてくれるのはいつもの執事さん。
いつもにこにこしていて、いい人。
ニールのおうちの使用人たちは、僕のことを嫌ってない。むしろとっても好意的に迎えてくれるからうれしい。
「ジュリアン、いらっしゃい」
「侯爵さま、奥さま、今日は────」
「ジュリアン?」
お屋敷の中に入ったら、今度はニールの両親が僕のことを待ち構えてる。
それで普通に挨拶しようとすると、ちょっとだけ威圧的な声で呼ばれた。
「あ、あの、た、ただいま、です、おとうさま、おかあさま」
「はい、おかえり、ジュリアン」
「今日も可愛いわ。ジュリアン!」
熱烈歓迎なんです。ほんと。まだ結婚してないのに、「おかえり」「ただいま」って挨拶させられるくらいに。
「無精の息子が部屋で待っているよ。ジュリアン、夕食は期待していなさい」
「本当はお茶もしたいのだけど、邪魔するなってニールに怒られるから。お夕食のときにはジュリアンの好きな甘いものもたくさん用意しておくわ」
「はい。ありがとうございます」
「んー?」
「……ありがとう、おとうさま、おかあさま」
「ふふ。いいのよ。それじゃ、またあとでね」
……大歓迎、なのである。
僕は迷うことなくニールの部屋に行く。
何度も通ったから、案内も断るくらい。
大きな扉をノックしたら、中から「どうぞ」って声がかかる。
「…ニール」
「待ってたよジュリアン」
ちょっとだけ扉を開けたら、すぐに大きく開かれて、ニールの腕が僕をからめとった。
抱き上げられてくるっと回って部屋に入ると、見慣れないものが部屋の隅にあった。
「……なんでドレス」
「綺麗でしょ?ジュリアンによく似合うと思うよ」
「……なんで僕?」
「ほら、この間ジュリアンと街歩きしたとき、ジュリアンに似合いそうだなと思ったんだよ。一度可愛いドレスを着せたいなと思ってたし、どうせなら僕が全部作りたかったし」
「ニールが作ったの?」
「…さすがに針はもてなかったから、形だけね。ほら、着てくれる?絶対似合うよ」
こういうときのニールは何を言っても無駄なこと、僕はよくわかってる。それに、僕だってニールがしてくれることを嫌だとは思わない。
それより、「参考に」って言ってた意味がわかって、まさかの僕用のドレスだけど嬉しくて照れてしまう。
「必要なものは全部僕が用意したから。ほら、服ぬいでね。下着も全部だよ」
きらきらな笑顔で僕のニールはそう宣った。
僕はニールのことが大好き。
ニールも僕のことが大好き。
だから、ニールのすることはなんでも許しちゃう。
それがすごく恥ずかしいことでも、最初は「いや」って口にしても最後は許しちゃう。
「にーる…はずかしぃ」
「綺麗だよ」
靴を脱いでいいように床に敷かれた毛足の長いラグの上に、僕は素足で立つ。
脱いでって言われた。下着も全部。だから、上着を脱いでシャツを脱いで、一枚ずつ足元に落としていくうちに、ニールの視線が気になって気になって、トラウザーズを落とすときには心臓が破裂するんじゃないかって思うくらいバクバク鳴ってた。
それでもなんとか上半身裸までは頑張った。
ニールが僕の体で知らない場所なんてない。だけど、こんな明るい場所で、ただ微笑みながらじっと僕を見るニールに、恥ずかしさがこみ上げないわけがないの。
寒くはない快適な室温でも、緊張とか恥ずかしさで、僕のちっちゃな乳首は硬くなってるし。ニールの視線がそこに絡みついているのが肌に感じるし。
「……全部?」
「うん。全部」
ううう。
脱がされるのと自分で脱ぐのとは、だいぶ意味合いが違うよ。
舐められるように見られてる中で、裸にならなきゃならないなんて。
でもニールが望んでるから、僕は従わなきゃならない。
覚悟を決めて下着に指をかける。
ニールは真正面から見てるけど、僕はニールを見ることができない。
おろした下着から足を抜いて、脱いだほかの服の山に落とした。
……はだか、だ。
どうしよう。はだかになった。
「ニール…」
「……はぁ」
ため息に、顔をニールに向けてしまった。
何か駄目だったのかな…ってびくびくしたけど、ニールは顔を片手で覆って天井を仰ぎ見てるだけ。
「…ニール?」
「駄目……。ジュリアン、可愛すぎるし綺麗すぎる。学院卒業してからなんて言わないで、いますぐ僕のお嫁さんにならない?」
「ふぇ…」
天井に顔をむけたままの流し目に、僕の心臓はまた限界。
大変だ……ニールが格好良すぎて死にそう。
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