女好きの親友に恋した僕と、女好きなのに親友に恋した俺の話

ゆずは

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親友をオカズにシてしまった side:征人

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 全力疾走に近い勢いで、ダッシュして、走って走って、目指すマンションにたどり着いて。
 超迷惑と知りながら、ピンポン連打して。

 ぜぇぜぇ息を付きながら、何度も連打して。

 ガチャリと鍵のあく音がした瞬間、玄関ドアを思い切り開けて。

「ぅわっ」
「ちひろ……助けて!?」
「ええ!?」

 相手も見ずに抱きついて、助けを求めた。

「ええええええっと」
「もう駄目……俺、もう駄目…。無理。こんなんじゃ生きてけない……。俺のそれなり人生設計無駄になる……」
「まさ……、まさのそれなりの人生設計ってのはどーでもいいんだけど、とりあえず中入って?近所迷惑だから」
「うう……。俺の親友が冷たい……」
「はいはい。冷たくて悪かったねー」

 俺より小さい智大ちひろに抱きつきながら、ずりずりと引きずられることに嫌な気はしない。
 口は悪いけど、智大は優しいんだよ。なんだかんだ言って。

「まさ、重い―――ん?」

 いきなり智大の動きが止まった。
 なんか、俺の首とか服とか、色んなとこの匂いを嗅いでくる。

「まさ……、女の子のとこ行ってたんでしょ」
「あ、うん」
「なんか香水とか?色々臭い。シャワー入ってきて!」
「うぉ、ごめん…」
「パパの服……より、けい君の服のほうがいいかな……。ちょっと借りてこよ。ほら、早く風呂場に行って!」
「うん」

 勝手知ったる親友の家。
 そんなに臭うのかなと思いつつ、風呂場に向かう。
 智大のとこの風呂場って、気持ちいいんだよな。浴槽でかいし。さすが、医者の家だな。
 流石にまだ昼間。
 湯を張るのは気が引けるので、シャワーで済ます。

「まさー、服、おいておくからね」

 って声が聞こえて。

「あー、うん。ありがと」

 って、なんの気も無しに風呂場のドアを開けた。

「……え」

 そしたら、けいさんの服を持った智大と目があって、途端、真っ赤な顔になった。

「ちょ、なんで開けるのさ!」
「いや、礼を…」
「もー、いいから、さっさと閉めて!!ちゃんとシャワーしてよ!」
「智大、真っ赤」
「も~~~~っ」

 男同士でそこまで照れることないのに。可愛いやつ。
 …なーんて思ってまたシャワーを使い始めたんだけど。

「うぉ!?」

 俺の息子、勃ってた……!
 なんで今頃!?

「やっぱそうだよなぁ。この年でインポとか……ないよなぁ~~」

 亀頭とか立派!竿も太いし、エラも張ってる。
 どこからどう見ても立派なペニスだ…!
 少し触れば気持ちもいいし、すぐに腹に付きそうなほど完勃ち。そりゃなぁ。寸止めどころか、最近頑張れてなかったんだから。
 せめて抜いてやろう…。
 元になってしまった彼女の体、好みだったな。柔らかくて、色白で。華奢なのに胸でかくて。
 愛液でとろとろになった膣に挿れたら、どんなに気持ちよかっただろう――――。

「………え」

 しごいて天井を向いてた俺の立派な息子。
 それが、いきなり、萎んだ。

「……え?」

 しごいてもしごいても、硬くならない。先走りすら、出てこない。
 どんなに想像しても、何を考えても、無理、で。

「うそだろ………」

 温かい雨が降り注ぐ中、再び俺は呆然と立ち尽くした。





 俺が出てくるのがあまりにも遅かったせいか、また智大が風呂場に来た。

「…まさぁ……、随分長いけど……」

 そろりそろりと風呂場のドアをほんの少し開けた智大。
 俺といえば……茫然自失状態で、風呂場の床に足を抱えてへたり込んでいた。

「え。なに、湯あたり!?」
「ちひろぉ………」
「な、なにっ」
「俺、ほんとにもう駄目…」
「だから、何がっ」
「……な、い」
「なに?」
「だから、勃たないんだよ……っ」

 ……沈黙が、痛い。

「………ちひろ、なんかいって………」
「…っ、えっと」

 なんか言って、って、言ったけど、慰めの言葉とか来たら、俺、泣く。

「え………っと」

 たっぷり逡巡して、智大が選んだ言葉は、

「……バカなの?」

 だった。

「………ひどい………」

 安易な慰めの言葉じゃなかったけど、これはこれで、俺、泣くよ!?

「ちひろがいじめる……」

 俺の心安らぐ場所がない…。
 慰めでも罵りでもないなら、俺は智大になんて言って貰いたかったんだろう。
 はぁ……ってため息ついてたら、ぴちゃぴちゃ音を立てて、智大が風呂場の中に入ってきた。

「もおー、うだうだしてないでさっさとあがんな……っていうか、体、冷え冷えじゃん……夏だからって風邪引くんだからね!?」

 ……って。
 俺の肩に触って、びくっとなって、それから、シャワーを出した。
 それを俺の頭から容赦なくかけてく。

「ちひろぉ……」
「手間かけすぎっ。明日土曜日だからいいけどさ……」

 シャワーと一緒に、頭をぽんぽん叩かれる。
 智大の手、やっぱり優しいな。
 また体が温まった頃、智大はシャワーを止めて、俺に手を出してきた。
 捕まれってことか掴まれってことかな。
 その手を握る。
 …智大の手、小さいな。
 俺より20センチ位、小さいのに、俺の手を引いて風呂場を出る智大は、なんかでかく感じた。

「ちゃんと拭いて」
「ん。智大、拭いて」
「まさが甘えてる…」

 呆れた声を出しながらも、一生懸命ごしごししてくれる。

「こっち、下着ね。新しいやつだから。それから、服。短パンと半袖だけど。いいよね?」
「うん」
「ほら、じゃあ、早く着て、出て来て」

 って言い残して、智大が脱衣所を出ていった。項と耳の後ろ、赤かったな…。
 また体が冷えそうで、折角智大が、温めてくれたんだから……と、いそいそと服を着込む。
 髪を適当に撫でつけてから脱衣所を出たら、廊下で千尋が待ってた。手にグラスを持って。

「飲んで」
「うん」

 一気飲みしたら、よく冷えたスポーツドリンクだった。

「うま」
「脱水になっちゃうからね」

 手を出されたから、空になったグラスを渡した。

「居間に行く?……僕の部屋に行く?」
「智大のとこがいい」
「ん」

 頷いた智大が、廊下を進む。
 案内されるまでもなく、わかるけど。

 智大の部屋はある意味、いつもどおりだった。余計なものを置かないシンプルな部屋。

「……なんか疲れた」
「寝てていいよ。夕飯、食べていきなよ。七時ころにはパパもけい君も帰ってくるから」
「智大のベッド、いい?」
「…………いい、けど」
「サンキュ」

 勝手知…(略)。
 持ち主の目の前で、ベッドにダイブする。
 あ、智大の匂いだ。

「おやすみ」
「ん、おやすみ」

 智大が肌掛けもかけてくれた。
 ……なんか、もう、あちこちから智大の匂いがして……酷く、落ち着く。

 何度もゆっくり頭を撫でられる。
 そのうち、俺の意識は底に落ちていった。






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