【完結】僕は夏の空色の青い瞳を見つめ続ける

ゆずは

文字の大きさ
上 下
6 / 11

しおりを挟む



 学校の屋上に勝手に忍び込んで、ごろりと寝転ぶ。
 夏の空はきれいな青色。
 僕の大好きな色。

「やっぱりここにいた」

 笑い声がした。
 驚くことはないけど。

「俺自身卒業生だから入れるけど…、他の生徒から興味津々な目で見られて居心地悪いんだよ?」
「ハル」

 笑いながら文句を言うハルは、僕の隣に寝転んで空を見上げた。

 この春から、僕はハルが学んでた高校に進学した。教師の中にはハルのことを覚えている人も多くて、僕を迎えに来るハルに、懐かしそうに話しかけたりしてる。
 まあ、だから、っていうのもあるだろうけど、先生方は僕にも優しい。孤児だから、とか、そんな差別をしない人たちだから。

「綺麗だね」
「ん…ハルの色」

 すり…っとハルの方に寄ったら、くすくす笑い声。

「今日どうしたの?」
「講義が早く終わったから、ナツに会いに来たんだよ」
「会う……だけ?」

 また笑ったハルが、僕に覆いかぶさってきた。
 下はコンクリートだけど、痛くはない。

「僕の好きな色」

 見下ろしてくる青い空色の瞳。夏の空はハルの瞳と同じ色。

「ほんと……夏の空の色だ」

 指でハルの目元を撫でた。
 ハルは嬉しそうに目を細めてる。

「小さいときは皆怖がってたのにね。俺のこの目」
「…自分たちと違うものは、小さいうちだと怖く感じるから」
「けど、ナツは怖がらなかったね。いつも傍に居た」
「うん。だって……、こんなに綺麗なんだもん。怖くなんてないよ」

 微笑み合って、ちゅ…って、軽くキスをする。

「ナツを見つけてよかった」
「え?」
「言ってなかった?…木の下で泣いてたナツを見つけたのは俺。ついでに、『夏樹』って名前を考えたのも俺」
「知らなかった……。五歳のハルが名付け親ってこと…?」
「親……は、嫌だな……」

 くすくす笑うハル。

「可愛くて仕方なかった。俺のことを見てにこにこ笑って、歩けるようになったら俺の後ろばかりついてきて」
「あんまり覚えてない…」
「今もあまり変わらないか」
「え。酷くない?それ」
「赤ちゃんの頃から可愛くて仕方なくて、今だってすごく可愛いよ。ナツが変わらずいてくれて、俺はすごく嬉しい」
「複雑……」
「怒らない怒らない。ほら、機嫌直して?夕飯、ナツの好きなハンバーグにしよう?ご飯食べたら『家』に送るから」
「ん……デザートつけてくれたら許す」
「お望みのままに」

 笑顔のままでキス。
 薄く唇を開いたら、ハルはすぐに舌を入れてくる。
 春に抱きつく手に力をいれる。

 好き。
 すごく、好き。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...