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しおりを挟む学校の屋上に勝手に忍び込んで、ごろりと寝転ぶ。
夏の空はきれいな青色。
僕の大好きな色。
「やっぱりここにいた」
笑い声がした。
驚くことはないけど。
「俺自身卒業生だから入れるけど…、他の生徒から興味津々な目で見られて居心地悪いんだよ?」
「ハル」
笑いながら文句を言うハルは、僕の隣に寝転んで空を見上げた。
この春から、僕はハルが学んでた高校に進学した。教師の中にはハルのことを覚えている人も多くて、僕を迎えに来るハルに、懐かしそうに話しかけたりしてる。
まあ、だから、っていうのもあるだろうけど、先生方は僕にも優しい。孤児だから、とか、そんな差別をしない人たちだから。
「綺麗だね」
「ん…ハルの色」
すり…っとハルの方に寄ったら、くすくす笑い声。
「今日どうしたの?」
「講義が早く終わったから、ナツに会いに来たんだよ」
「会う……だけ?」
また笑ったハルが、僕に覆いかぶさってきた。
下はコンクリートだけど、痛くはない。
「僕の好きな色」
見下ろしてくる青い空色の瞳。夏の空はハルの瞳と同じ色。
「ほんと……夏の空の色だ」
指でハルの目元を撫でた。
ハルは嬉しそうに目を細めてる。
「小さいときは皆怖がってたのにね。俺のこの目」
「…自分たちと違うものは、小さいうちだと怖く感じるから」
「けど、ナツは怖がらなかったね。いつも傍に居た」
「うん。だって……、こんなに綺麗なんだもん。怖くなんてないよ」
微笑み合って、ちゅ…って、軽くキスをする。
「ナツを見つけてよかった」
「え?」
「言ってなかった?…木の下で泣いてたナツを見つけたのは俺。ついでに、『夏樹』って名前を考えたのも俺」
「知らなかった……。五歳のハルが名付け親ってこと…?」
「親……は、嫌だな……」
くすくす笑うハル。
「可愛くて仕方なかった。俺のことを見てにこにこ笑って、歩けるようになったら俺の後ろばかりついてきて」
「あんまり覚えてない…」
「今もあまり変わらないか」
「え。酷くない?それ」
「赤ちゃんの頃から可愛くて仕方なくて、今だってすごく可愛いよ。ナツが変わらずいてくれて、俺はすごく嬉しい」
「複雑……」
「怒らない怒らない。ほら、機嫌直して?夕飯、ナツの好きなハンバーグにしよう?ご飯食べたら『家』に送るから」
「ん……デザートつけてくれたら許す」
「お望みのままに」
笑顔のままでキス。
薄く唇を開いたら、ハルはすぐに舌を入れてくる。
春に抱きつく手に力をいれる。
好き。
すごく、好き。
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