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九幕 アデラール*6

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「ここ……どこ?」
「王都に用意した僕たちの家です」
「家……」
「アデラール様との生活を誰にも邪魔されたくなかったので」
「用意してくれてたんだ…」
「ええ。なんの相談もなしに決めてしまって申し訳ないと思ったんですが……。……もし、気に入らなければ……」
「ううん。イヴが僕たちのことを真剣に考えてくれていて、すごく嬉しい」
「アデラール様……っ」

 まさかの転移魔法で連れてこられるとは思ってなかった。お陰でここが王都のどのあたりなのかもわからない。

「転移魔法まで使えるようになったんだね」
「はい。とにかくアデラール様のところに最短で戻りたくて。……登城するときも、本当はすぐにアデラール様のところに飛びたかった。でも、さすがに王城でそれをやると、アデラール様に怒られる気がして……、正面から入ってアデラール様の魔力の方に進みました。途中で兵士の人に止められたりしたので、少し遅くなりましたけど…」

 ……まあ、そのあたりはいいや。多分、ちゃんと身分とか目的とか申告しなかったから止められたんだろうし。

「……ん、わかった。じゃあ、またお城に戻ろう?僕、仕事途中だし」
「駄目です」
「イヴ?」
「結婚したんですから、今は夫婦の時間……『初夜』ですよ」

 いや、まだ昼間だし。なんなら昼前だし。

「イ」

 名前を呼ぼうとした口はあっさりとイヴに塞がれた。

 いつの間にかブーツは脱がされてた。
 僕の手をベッドに押さえつけながら、イヴの舌が僕の口の中を暴れまわる。
 ついさっき知ったばかりの深い深いキス。
 舌と一緒に流れ込んでくるイヴの唾液を飲み込むことも嫌じゃない。むしろ興奮する。
 イヴの舌が上顎を撫でたとき、ぞわぞわって背筋が震えた。嫌悪感じゃなくて、所謂快感の方。…そんなとこも性感帯なんだ…と、ちょっと感心した。
 片手を離したイヴは、手で僕の足を割り開いてその間に体を挟めて、僕の体に体重をかけてくる。

「んぅっ」

 ずりずりって腰を動かされて、股間同士を擦られた。
 イヴのそこはまたカチカチになっていて、それに擦られてると僕のそこも固くなっていくのがわかる。
 ……あ。
 昼前だからとか、仕事が残ってるからとか、そんなこと言えなくなった。
 そっか。初めてのことで僕がちょっと躊躇ってたんだ。たから、理由をつけてイヴから逃れて、夜までに(だってさ、初夜だよ?初なんだから夜でいいと思うじゃない?)心の準備がしたかったんだ。

「は…んっ、い、ゔ、いゔ」

 僕よりも『僕』のほうが閨の知識を持ってる。もう僕も『僕』も同じだから、区別する必要はないんだけど。でも、フランソワにされるはずだったことは、『僕』の知識なわけで、僕が実践で知ってるわけじゃない。
 まあ……僕は閨ごとに関する知識を本当に『知識』としてしか知らない。フランソワと婚約をしていたときだって、キスどころか手を繋いだ記憶もない。だから当然、同衾なんてこれっぽちもしてない。話すら出てない。
 学園を卒業したら、閨指導が入る予定だったし……。
 だから何が言いたいって。
 刺激が強すぎるんだよ!ってこと。

「あっ、いゔ、あ、あっ」
「アデラール、様…っ」

 お互いキスをする余裕がなくなった。
 イヴが激しく腰を揺する。
 こすれて熱を持った股間はもう限界。
 イヴは僕をきゅっと抱きしめる。
 僕もイヴの大きくなった背中に腕を回してしがみつく。

「ん…っ、んぅっ、いゔ、いく、いく……んんっ」
「僕も……限界です……っ、……っ、くっ」
「あんんっ」

 多分、二人ほぼ同時に絶頂に達した。
 ……多分、というのは、ビクンビクンって震える腰だとか、熱い息遣いからの予想だから。
 ……だって、僕たちまだ服を脱いでない。ブーツしか脱いでない。
 だから、盛大に下着の中に出していて、ヌルヌルしたもので微妙に不快。
 でもイヴは気にしていない様子で、まだ硬い股間を僕のそこに押し付けながら、首筋に顔を押し付けてくる。

「はぁ……アデラール様……アデラール様……っ」
「ちょ、ちょっと、まって、イヴ……っ」
「いやです」
「や、お願いだから、お風呂……シャワーだけでも使わせて……っ」

 ヤル気満々みたいでこれはこれで恥ずかしいけど、イヴに服を脱がされるのもイヴの前で服を脱ぐのも恥ずかしいし、べったり濡れた下着を見られるのも恥ずかしい。
 ならいっそ、多分あるだろうバスローブで出てくればいいし、お風呂場なら後ろの準備もできる。
 僕の首筋から顔を上げたイヴは、にこりと笑ってくれた。
 わかってくれたんだ…って少しホッとしたら、また体がのしかかってきて、耳もとにイヴの口が寄せられた。

『解除』
「!?」

 魔法を使うとき、なんで毎回僕の耳元なの……って抗議は口から出ることはなかった。
 イヴが低めの声でそれを言った途端、僕とイヴを隔てていた服が何処かに行った。……や、ほんとに、文字通り、何処かに行った。

「へ!?」
「アデラール様の素肌……想像通りです……。滑らかで気持ちいい……っ」
「あ、嘘っ、なんで」

 肌と肌が触れ合ってる。
 興奮してるイヴの体温は少し高めに感じて、それがまた気持ちいい。
 でもなんでいきなり裸になった!?『解除』って、服を脱がせる魔法なのか!?

「あぁ……乳首ちっちゃい……っ、僕のいじりすぎて少し大きくなったから……」
「い、いじった……!?」

 イヴが体を揺らす。乳首同士がこすれるように、すりすりと。……こりこりってイヴの乳首に擦られて、僕のそこも固くなったのか、僕の体も熱くなっていく。

「いじりましたよ。アデラール様に気持ちよくなってもらうために、色々勉強しましたし実践も重ねました」
「じっ……せん」

 きゅぅぅって胸が苦しくなった。



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