【完結】見守り(覗き)趣味の腐男子令息は、恋人たちの交遊を今日も楽しく考察する

ゆずは

文字の大きさ
上 下
7 / 10

★case07:初恋拗らせ令息と無自覚煽り令息の行き着くカタチ

しおりを挟む




 次に目が覚めたのは、昼頃。
 相変わらず僕は裸だった。
 イケメン君は何故か上半身だけ裸だった。筋肉が美しい。

「ん?目、覚めたのか」
「ん」
「体は?」
「……朝より、痛くない」
「そっか」

 俺の傍らに座ってたイケメン君が、はにかみながら僕の頭を撫でた。

「あのな」
「うん」
「お前の家に速達書簡送っておいたから」
「んん?」
「俺のとこにも送った。反対はされないから、来週の休みには式ができる」
「んんん??」

 なんのこと?
 わからなくて変な顔をしてたんだと思う。
 イケメン君は優しく笑って、僕の頬を撫でた。

「婚約及び結婚の打診書」

 こんやく
 および
 けっこん

「………え、だれと」
「お前と」
「だれの?」
「俺の」
「………………え」

 それはもしや、昨夜のあれこれの責任を取りますと言うやつでしょうか。

「や、責任取るとかしなくていいよ…?」
「責任とかじゃねぇよ」
「でも」
「お前、ほんと覚えてないのな」
「なにを?」
「俺とお前、学院が初顔合わせじゃねえんだよ」
「……そう、なの?」
「そう!」
「え……ごめん、おぼえて、ない」
「だろうな。この部屋で会ったとき、『はじめまして』って笑顔で言ったもんな」
「う、うん……」
「覚えてないだろうなとは思ってたけど、いざ『はじめまして』なんて言われたら無性に腹が立って、犯してやろうかと思ったくらい苛々した」
「そ、そう…だったんだ」
「そうなんだよっ」
「ひゃっ、ご、ごめんなさい…っ」
「あー……っ」

 イケメン君は気まずそうに頭をガリガリかいて、はぁって息をついた。

「いや、ごめん。怒ってるわけじゃない」
「…でも」
「それより」

 イケメン君は僕を自分の膝の上に抱きかかえた。
 ……僕、裸なんだけどね?

「八歳のときからずっと好きだった。順番色々あれだけど、俺と結婚してくれ……して、ください」
「………」

 八歳。
 初めて会ったのが、八歳のとき?
 でも、僕、こんなイケメンなイケメン君に会ったことなんて……。

「返事」
「あ」
「……返事もできないほど嫌ってこと?」
「や、ちがうから、まって…っ」
「待てない」

 顎に指を添えられた。
 あ、キス……なんて思う隙もなく、唇はイケメン君に食べられてた。

「んう」

 ……イケメンな攻めたちは、なんでこんなに素早くキスができるのか。ある種のスキルなのか。

「んふ……」

 そしてあっさり入ってくる熱い舌。
 他人の舌に口の中べろべろ舐められるの気持ち悪くない…?なんて思ったときもありましたが、全然気持ち悪くない。むしろ気持ちいい。
 これもイケメン効果?
 イケメンなら誰でもいいのかとちょっと他の今まで遭遇したイケメンさんを思い浮かべてみたけれど、……駄目だ。うまくいかない。それもそうだよな。だって絶賛口の中どろどろにされてる最中だもん。どんなイケメンさんを思い出そうとしても、イケメン君にしかならないもん。

「ん、んんっ」

 息。
 息は、鼻でっ。
 息が苦しくなって顔を離すとか、しませんよ!?知識だけは詰め込んだんだから!実践は初めてだけど!!
 初めて。
 初めてのキス。
 僕のファーストキス。

「っ」

 そう思ったらぞわわって背筋が震えた。
 多分、これ、快感が背筋を走るってやつ!
 お尻がモゾモゾする。
 お尻の下のイケメン君の男すぎるイケメン君が硬くなって僕のお尻を突き刺してくる。僕のもぷるぷるしてるのがわかる。
 体が変。
 いや、一番変なのは僕の頭の中ー!!!
 まさにピンク。
 ピンク一色!!
 キスイキする。キスだけで僕の体はどこかにイッちゃう。

「んは…っ」

 鼻で息をするのも限界。
 ぷはって口を離してもすぐに口に塞がれる。
 喉の奥に二人分の唾液が溜まる。…それを飲み込むのは礼儀だ。お互いの唾液は甘露にしかならない。興奮促進剤。簡易媚薬。……唾液にそんな効果がないなんて知ってるけど!!
 好きな人のものは特別、っていうあれだな!?これがあれなんだな!?
 じゃあ、あのドキドキも、ズキっとした胸の痛みも、成り行きなのに抱かれて嫌悪感がなかったのも、あんなに気持ちよかったのも、全部やっぱり『好き』のせいってこと!?

 口の中滅茶苦茶気持ちいい。
 とろんとするのよくわかる。
 八歳のときからずっと好きだったって。
 僕のこと、ずっと好きだったって。
 …ずっと、って。

「んむっ、ま、まって!!」
「なにっ」
「ずっと、僕のこと好きだった!?」
「そういった」
「じゃ、なんでこんなにキスが上手なの!?昨日の交遊だって手練れそのものだったんだけど!?童貞じゃありえない腰の動きしてたんだけど!?」
「おま……っ、なんでそんなこと大声で叫ぶんだよっ」
「だって、『ずっと』って言いながら誰かとそういうことしてきたんでしょ!?不誠実じゃん!!」
「んなことねぇよ!!キスだって誰かを抱くのだって正真正銘お前が初めてだよ!!言っとくが娼館にも行ってねぇし、閨指南も受けてねぇからな!!」
「嘘だぁ」
「嘘じゃねぇよ。…お前に会えない間に勉強したんだよ。独学だ。人体構造から快楽を得やすい場所、手技、体位、全部独学で勉強しまくった」

 僕の勢いのままイケメン君も勢いで発言し、その内容に僕がポカンとしてると、イケメン君は「しまった」みたいな顔をして、真っ赤になってそっぽを向いてしまった。

「………ワルド君、だって、イケメンなのに」
「関係ねぇよ」
「だって、何度も告白されてたの、僕知ってる」
「なんでそんなことしってんだよ」
「秘密です」
「秘密なのか」
「うん」
「……なら聞かない」
「うん」

 落ち着いてお互いに見つめ合って、なんとなく自然にまた唇を重ねてく。
 キス、すごい。
 優しくて気持ちいい。

「……キスのやりかたも、本?」
「そう」
「……すごく、すごい」
「ぷ。なんだよ、それ」
「ん……、だって、気持ちよくて……、だから、たくさん、したんだと……」
「お前は?」
「僕?」
「したことあんのか」
「……ないよ。僕、そんな人いなかったし。……やりかたは…、ほら、僕の愛読書で……」
「……ああ。そういや見せられたこともあったな」

 笑いながら、ちゅ、ちゅ、って、音がする。

「なぁ」
「うん」
「俺、本当にお前のこと好きなんだよ。もうずっと愛してるんだ」
「うん」
「だから、結婚、して?」

 真剣な声に、唇を離す。
 うん。
 いい。
 結婚する。

「う――――っくしゅ」

 頷こうとしたとき、思い切りくしゃみが出た。
 ……そうだった。
 僕、素っ裸だった。
 そんな格好でプロポーズ受けて答えようとしてる僕って、すごい……間抜けかもしれない。




しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

覗き穴〜厳格師匠の秘密〜

丸井まー(旧:まー)
BL
魔法使いの卵のユースは、厳格な師匠であるゴルデスに、赤ん坊の頃に拾ってもらった。魔法の修行をしながら、ゴルデスの秘密をこっそり覗く日々を送るユースであったが、ある日、もう一人の養い親のようなリーディングスが訪れた。 明るい美形魔法使い&魔法使いの弟子✕厳格陰気師匠。 ※3Pです! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

騎士は魔王に囚われお客様の酒の肴に差し出される

ミクリ21
BL
騎士が酒の肴にいやらしいことをされる話。

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

処理中です...