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元自称婚約者の現恋人は、婚約者に昇格となりました

50 大好き、嘉貴

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 肩から力が抜けるのと同時に、心のなかに不安が満ちていく。
 呆れられただろうか。
 嫌がられただろうか。
 誤解されただろうか。

「浩希」
「あ……」

 頭も心もぐちゃぐちゃになりかけたとき、頬に嘉貴の手が触れた。

「よし、たか」

 嘉貴は笑ってた。
 いつもと同じ顔だった。

「恥ずかしい?」

 俺は素直に頷く。

「俺に見られるのが恥ずかしい?」

 また、こくん、て。
 嘉貴はふ…って笑うと、体を起こした。

「俺を見て」

 ……見てる、よ。
 引き締まった体の中心に、お腹に付きそうなくらい反り上がったたくましいものがある。
 見てるだけで、心臓がバクバク鳴る。

「浩希が恥ずかしがるのはわかるよ。……俺だって、浩希に見られてると思うと恥ずかしい」

 嘘だ。
 だって、そんなに堂々と体を晒してるのに。

「嘘じゃないよ。浩希が欲しくて、抱きたくて、まだ触ってもないのにここまで硬くして、早く中に入りたいと先走りまで流してる。……浩希に欲情して余裕をなくした姿を見られるのは、情けないし恥ずかしい。……それから、興奮する」
「よしたか」
「浩希の瞳に俺が、何も隠さない俺が映ることに、酷く興奮する」

 変態みたいだね?と軽口をたたきながら、嘉貴の手がまた俺の頬を撫でる。

「恥ずかしいのはお互いが特別だから仕方ないことだよ。けど俺は、浩希を抱きたい。感じてグズグズになって、どろどろになった浩希を余すところなく目に焼き付けたいから明かりも消さない」
「よした」
「諦めて、浩希」

 キスが降ってきた。
 頬を撫でてた手が俺の手と重なって、ベッドに縫い付けてくる。
 器用に太腿で俺の足を割ってきて、高ぶり同士が擦り合う。
 ビクンって跳ねた俺の身体を気にも止めず、嘉貴は腰の位置をずらした。

「ひん……っ」

 ずり…って、熱い先端が俺の後孔に触れた。
 腰を揺らしながら、そこをとんとんとノックするように刺激される。

「ここに入りたい……浩希」
「んぅ……」
「恥ずかしいなんて考えられないくらい気持ちよくする。痛みも何一つ与えない。……浩希、いい?」

 嘉貴も恥ずかしいんだって聞いても、俺の羞恥心がなくなったわけじゃない。でも今は、そんな羞恥心よりも、嘉貴で満たされたい気持ちのほうが強くなって。

「いいよ」

 応えて、空いてる片手で自分の膝裏を抑える。

「浩希」
「…大好き、嘉貴」

 縫い留められてた手が離れたから、その手を嘉貴の頬に添えた。

「愛してる」

 嘉貴の手が俺の手に重なった。
 微笑みと、真っ直ぐ俺を捉える瞳と、思いの籠もった言葉。

「愛してる、浩希」

 嘉貴の手は俺の頬に、それから、頭の後ろに。
 俺の手は嘉貴の頬から首の後ろに。
 絡むように互いを引き寄せて、唇を重ねた。





 気持ち的にはいくらでも受け入れる準備ができてた。…はず。
 けど、気持ちだけではどうにもならないのが体の方で。
 嘉貴が取り出したのは所謂潤滑液…なるものだったらしく、先走りだけじゃなくて人肌に温められたソレで、もうドロドロにされてた。
 俺は片手で膝裏を抱えたまま、射精をそらされる快感に何度も震えてる。
 
「浩希、ゆっくり息をして体の力を抜いて」
「ん……」

 そんなん無理。
 何度も射精を寸止めされて息は荒くなってるし。身体には変な力が入ってるし。
 ……でも、意識しながら息をゆっくりしてらと、体の力も少し抜けたようになったらしい。
 それを待っていたように、後孔の縁を撫でていた指がツプリと入り込んできた。

「んん……っ」

 また体が強張ってしまいそうになったとき、嘉貴が体を屈めて、先走りに濡れる俺のものをベロリと舐め上げた。

「あ…っ!!」

 たったそれだけで腰が震えるほどの快感が走り抜ける。それから、また、こみ上げてくるのは出したい欲求。

「あ…ああっ」

 でもまた、きゅっと根本を指で戒められた。
 ソレで終わるかと思えばそんなことはなく、舐めてた舌先を鈴口を押し広げるように動かされ、あまりの快感に涙が落ちてしまう。

「あー…っ、あ…っ、あ、ん、んんっ」

 どうにもならない快感に震えていたら、指先しか入ってなかった後孔に、ぬく…っと指が入り込んできた。

「あ………っ、ぁっ、は………ぁっ」
「浩希……痛い?」
「……っ、た、くなぃ……っ」

 痛くない。
 異物感とぞわぞわした感じでどうしたらいいかわかんないくらい。
 嘉貴はまた俺のものを舐め始めると、後孔に収めた指を動かし始めた。
 内側でクネクネと指を曲げたり、指先まで引き抜いてまた押し込んできたり。
 そのたびにぐちゅぐちゅと濡れた音が耳にこびりつく。

 どろどろになったそこに、今度は指が二本。それを根本まで入れられても、やっぱり痛みは感じなかった。あるのはやっぱりの異物感と指が増えたことの圧迫感。
 ……それから、時々ビクンってなる、ゾワゾワ感。

「三本目……挿れるよ」
「ん……っ」

 まだ広がるらしい。
 ……そりゃ、嘉貴のイキリ勃ったあれは、かなり、大きかった、けど。
 俺の陰茎から手が離れた。
 後孔に入ってた指が出ていって……、そこをくっぱり広げてきた。

「んんんっ」

 なに……っ、って抗議の声は出せなかった。広げられた後孔に、冷たいものを流し込まれたから。
 すぐに潤滑液だと理解した。少し浮いてる尻の方にも流れてきたし。
 そして宣言通り、すぐにまた指が入ってくると同時に、俺のものの根本はまた指で戒められた。



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