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つながり
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体が完全に回復したのは倒れてから一ヵ月後だった。
一ヶ月がとっても長かった。スッごく長かった。
本当にしなければならない仕事以外はさせてもらえなかったけれど、これからはちゃんと仕事が出来る。
学校にも行く事が出来る。
「用意できたか?」
「うん、できたよひろ」
ようやく日本に帰れる。
日本に帰ったら支社が落ち着くまで僕もトレイスもジュベールも少し忙しいけど、落ち着いたら学業優先することが出来る。
昨日は早く日本に帰りたくてなかなか寝付けなかったけれど、ようやく帰られると思ったら、ぐっすり眠る事が出来た。
玲那さんには浩が連絡を取ってくれたみたいで、空港に着いたら迎に来てくれるという。
トレイスは一足早く日本に行って、僕を迎え入れる準備を支社でしているので、ここにはジュベールしかいない。
「浩、送ってあげられないけれど、澄の事よろしくね。あと、いつでもこっちに遊びに来なさい。お母さん浩が来るの楽しみに待っているわ。今度二人の事をいっぱい聞かせてね」
母は力いっぱい浩に抱きついた。
表情は何処か寂しそうで、いつまでも浩を離そうとはしない。
一ヶ月という期間は短かった。
せっかく親子としての時間が生まれたのに、また離れ離れになるのは寂しいのかもしれない。
祖父母も会った事がなかった孫にようやく会えてとても嬉しかったみたいだけど、今はとても寂しそうだった。
「リュセ様、そろそろ車に乗られないと飛行機の時間が・・・・」
グレイスが車を出して待ってくれている。
飛行機の時間もあるので、いつまでもグレイスを待たせるわけにはいかない。
母は離れ難い気持ちで浩から離れ、車の前まで浩と手を繋いでいった。
車に乗り込む前に母は浩の頬に軽いキスをした。
このキスは別れの挨拶ではなく、母が息子にするおまじない。
もう一度ここに帰ってきますというおまじないだった。母のおまじないはこれでもかというほど効く。効いてくれないと僕も母も困る。
「お袋、絶対また来るな。きよと一緒に。それまで待っていてくれ」
夏休みは多分僕が忙しくて来るのが無理だと思うけど、冬休みには来れたらいいと思おう。無理してでも冬休みは来たい。母のため、浩のために絶対に。
だからそれまで母には待っていて欲しい。
「ジュベール。グレイスと運転変わって!」
「分かりました。父さん、リュセ様が言っているので助手席に移ってください」
今のグレイスに車の運転はさせられない。
されられない理由は、母と浩を見ていて、あまりの感動に号泣。
声は出していないので二人は気がついていないみたいだけど、後ろからミラーを見ていれば明らかに分かる。
こんな状態でグレイスに車を運転させたら、絶対事故を起しそうなので、行きはジュベールに運転させるほうが身の安全。
ジュベールはいつまでも泣き止まないグレイスを無理やり助手席に移させ、運転席に座った。
ジュベールもこんな父親を見るのは嫌でないのかと思ったけれど、手馴れている感じがした。
「ひろ、かあさん、そろそろいい?」
僕だって出来れば浩と母の事を思ってもう少しこっちにいたいけれど、体が治った今、会社も学校もこれ以上ほっておくことが出来ないので、仕方がない。
「もうよろしいですかリュセ様?」
「じゃあね、浩、澄・・・・お兄ちゃんの言う事ちゃんと聞くのよ?」
「うん、わかったよ母さん。じゃあ、いって来ます。何かあったら、直ぐに連絡するね」
寂しそうに僕たちを見送ってくれる母に手を振りながら、車は空港に向けてゆっくり走り出した。
見送る母の姿が見えなくなるまで浩ずっと後ろを見ていた。
やっぱり浩も寂しいのだろう。せっかく会うことが出来た母と離れて。
でも、もう、僕たちの親子の絆は切れないと思う。ぜったい何があっても外れないほどがっしり繋ぐことが出来たと思う。
母も、仕事で、仕事がなくても日本に来る機会があれば、会いに来てくれると言っていた。だから、もう、親子の絆は再び繋がっている。
一ヶ月がとっても長かった。スッごく長かった。
本当にしなければならない仕事以外はさせてもらえなかったけれど、これからはちゃんと仕事が出来る。
学校にも行く事が出来る。
「用意できたか?」
「うん、できたよひろ」
ようやく日本に帰れる。
日本に帰ったら支社が落ち着くまで僕もトレイスもジュベールも少し忙しいけど、落ち着いたら学業優先することが出来る。
昨日は早く日本に帰りたくてなかなか寝付けなかったけれど、ようやく帰られると思ったら、ぐっすり眠る事が出来た。
玲那さんには浩が連絡を取ってくれたみたいで、空港に着いたら迎に来てくれるという。
トレイスは一足早く日本に行って、僕を迎え入れる準備を支社でしているので、ここにはジュベールしかいない。
「浩、送ってあげられないけれど、澄の事よろしくね。あと、いつでもこっちに遊びに来なさい。お母さん浩が来るの楽しみに待っているわ。今度二人の事をいっぱい聞かせてね」
母は力いっぱい浩に抱きついた。
表情は何処か寂しそうで、いつまでも浩を離そうとはしない。
一ヶ月という期間は短かった。
せっかく親子としての時間が生まれたのに、また離れ離れになるのは寂しいのかもしれない。
祖父母も会った事がなかった孫にようやく会えてとても嬉しかったみたいだけど、今はとても寂しそうだった。
「リュセ様、そろそろ車に乗られないと飛行機の時間が・・・・」
グレイスが車を出して待ってくれている。
飛行機の時間もあるので、いつまでもグレイスを待たせるわけにはいかない。
母は離れ難い気持ちで浩から離れ、車の前まで浩と手を繋いでいった。
車に乗り込む前に母は浩の頬に軽いキスをした。
このキスは別れの挨拶ではなく、母が息子にするおまじない。
もう一度ここに帰ってきますというおまじないだった。母のおまじないはこれでもかというほど効く。効いてくれないと僕も母も困る。
「お袋、絶対また来るな。きよと一緒に。それまで待っていてくれ」
夏休みは多分僕が忙しくて来るのが無理だと思うけど、冬休みには来れたらいいと思おう。無理してでも冬休みは来たい。母のため、浩のために絶対に。
だからそれまで母には待っていて欲しい。
「ジュベール。グレイスと運転変わって!」
「分かりました。父さん、リュセ様が言っているので助手席に移ってください」
今のグレイスに車の運転はさせられない。
されられない理由は、母と浩を見ていて、あまりの感動に号泣。
声は出していないので二人は気がついていないみたいだけど、後ろからミラーを見ていれば明らかに分かる。
こんな状態でグレイスに車を運転させたら、絶対事故を起しそうなので、行きはジュベールに運転させるほうが身の安全。
ジュベールはいつまでも泣き止まないグレイスを無理やり助手席に移させ、運転席に座った。
ジュベールもこんな父親を見るのは嫌でないのかと思ったけれど、手馴れている感じがした。
「ひろ、かあさん、そろそろいい?」
僕だって出来れば浩と母の事を思ってもう少しこっちにいたいけれど、体が治った今、会社も学校もこれ以上ほっておくことが出来ないので、仕方がない。
「もうよろしいですかリュセ様?」
「じゃあね、浩、澄・・・・お兄ちゃんの言う事ちゃんと聞くのよ?」
「うん、わかったよ母さん。じゃあ、いって来ます。何かあったら、直ぐに連絡するね」
寂しそうに僕たちを見送ってくれる母に手を振りながら、車は空港に向けてゆっくり走り出した。
見送る母の姿が見えなくなるまで浩ずっと後ろを見ていた。
やっぱり浩も寂しいのだろう。せっかく会うことが出来た母と離れて。
でも、もう、僕たちの親子の絆は切れないと思う。ぜったい何があっても外れないほどがっしり繋ぐことが出来たと思う。
母も、仕事で、仕事がなくても日本に来る機会があれば、会いに来てくれると言っていた。だから、もう、親子の絆は再び繋がっている。
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