ワンソード

九楽

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第七十一話

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「いいのか?アル?」
「まあ、あっちには思い出もないし問題ないさ。それに僕の寿命は後少しだからどっちで死んでも関係ないけどね。」
「アル?どういうことなんだ!?白銀の剣を解析したんじゃないのか?」
「解析はできたけど手遅れだったてことだよ。数日の命さ。いっただろう?少しの間だけだって。でもこうして空をみることができた。これだけで僕は幸せだよ。」   
 そういうとアルは、崩れ去った城を背景に空を見上げた。そんな中ユリスは小さな声で話し出した。
「あの一体どういうことなんですか?病気なんですか?」
 僕はユリスに僕と彼の関係とこれまでの経緯を説明した。
「...ってことなんだ。」
「わかったわ。あの...アルさん。...その...もしもっと生きれる方法があったとして例えその可能性が低くてもやりますか?」
 アルは静かに答えた。
「...そんな夢みたいなことが出来るのかい?」
「ユリス、そんなこと出来るのか?」
「...わかんない。ただ、私の中の何かが言ってるの。出来るかもしれないって。...アルさん、やりますか?」
 アルは少し間を置いて答えた。
「...もちろん。少しでも可能性があるならかけてみたい。」
「ユリス、どうやるんだ?」
「まず、貴方に入っている悪魔の魂を返してあげて。」
「ああ。アル、やるんなら取ってくれ。」
「まさか、また取り込むことになるとは思わなかったよ。」
 そういうとアルは、僕の中の悪魔の魂を取り出して飲み込んだ。
「そして次に私にあっ!アルさんちょっとだけまってもらっても大丈夫ですか?」
「ん?どうしたんだい?」
「何かあったのか?ユリス?」
「いえ...送り出すとき何も言えなかったから貴方がこの世界から帰る前に一言言っておきたくて。」
 僕は右手で頭をかいてため息をついた。
「はぁー。そんなの帰ってからでいいだろ?」
「私に入っているさっきの神の魂をあげちゃうと私この世界から消えちゃうのよ。多分だけど。」
 僕は心配しそうに言った。
「...元の世界にはいるんだろ?」
「うん。」
 僕はその返事で一安心した。
「じゃあ帰ってからでいいだろ。」
「ちょっとだけちょっとだけだから。アルさんいいですよね?」
 アルは軽く笑みをこぼしていた。
「ふふっ。いいよ。あの壊れた城でも見ながら少し後ろを向いておくよ。」
「何で後ろをむくんだ?」
 アルは、特になにも言わなかった。
「ねえ。さっきから気になってるんだけど顔のあたりにゴミがついてるわよ。」
「え?どこ?」
 僕は、両手で顔のゴミを探し出した。
「全然違う。そこじゃなくて。ほらっちょっとしゃがんで。」
「どこだよ。」
 僕は少ししゃがみ込んだ。そうするとユリスが急に顔を近づけてきて柔らかな唇が僕の唇と重なった。
 ユリスは笑いながらいった。
「わーい、だまされたー。」
「ユリス、急になにするんだよ。」
「これは、罰よ。ミリアさんとマリーさんとキスしたでしょ!?」
「なっなんで知ってるんだよ。っていうかマリーさんとはしてないぞ!」
「ふーん、じゃあミリアさんとはしたんだね。」
 これは、嵌められて言わなくていいことを言ってしまったのだろう。
「いや...冗談だよ。」
「もう、遅いわよ。帰ってきたら変なこと出来ないように馬車馬のように働かせてあげるわ。っていっても、元の世界の私はこの世界のこと覚えてないけどね。だからさっきのキスも覚えてないから。」
「はぁー。ったく変なユリスだな。」
「早く帰ってきなさいよ。」
「...ああ。」
 そういうとアルは振り返って言った。
「壊れた城に夢中で何も聞いていなかったんだけどもう終わったのかい?それとももう少し壊れた城に夢中になっておこうか?」
 そう言われ僕達二人は同時に言った。
「…もう大丈夫です。」
「…もう大丈夫です。」
 
その後、ユリスの中にある神の魂を取るとユリスは消えてしまった。ユリスが言うには後は神の魂を取り込むだけらしい。
「さあ、アル。取り込むんだ。」
「ああ。」
 アルはゆっくりと神の魂を取り込んだ。しかし、特に変わった様子はない。
「...成功したのか?」
「...ああ成功だ。ひび割れた魂が強固になっていく。魂と精神と肉体の連結も。...まさか、神と悪魔の魂を取り込むことで人間として生きることが出来るなんてね。全く皮肉なもんだよ。」
「本当に良かったな。」
「ああ。君達には感謝している。感謝しきれないくらいにね。」
「これからどうするんだ?」
「そうだな。...しばらく僕が神の代わりに人間達を導くよ。でも、あくまで自立させるのが目的だけどね。」
「そっか。じゃあ、そろそろ帰るよ。せっかく救った世界がまた変なことになったら大変だしね。」
「ああ。元気で。もし君達がピンチになったら次元を越えてでも助けに行くよ。遠慮なく言ってくれ。」
「まあ、そんなピンチがこないことを祈るよ。」
 僕達は、笑いあった。
「じゃあ。またいつか。」
「ああ。」
そうして僕はまぶしい光の中に消え元の世界に戻った。
  
 
 
 
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