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世界防衛機関イグニス
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偏光メガネをかけ、猫背で歩く吸血鬼、初瀬川ルイはある場所へ向かっていた。
この世界には様々な種族の者がいる。人間、獣人、ヒューマノイド、以下略。吸血鬼は数こそ少ないものの、その名は広く周知されている。
吸血鬼といえば恐ろしいイメージだが、それは昔の話だ。多種共存の昨今においては、吸血鬼用の血液パックなども販売されており、生き血を啜る必要もなくなっている。
かくいうルイも、昨日のうちに瞬間冷凍鮮度抜群が売りの血液パックを飲んだものだから、明日までは全く問題なく活動できる状態にあった。
そんな彼が向かっている先というのが、WDO——世界防衛機関、又の名をイグニスという。
「新人諸君、はじめまして。私は世界防衛機関WDO……イグニスの最高総司令部総司令官の神田エミだ。今日が君達にとって素晴らしい門出の日となるよう私も願っている」
この街一番の高層ビル。そのホールに集められた数百名の人員が、壇上に立つ一人の女性に注目し、極度の緊張に身を固めていた。
WDO——世界防衛機関イグニスは、その名の通り世界の平和を守るために尽力する機関のことである。
イグニスの最高総司令部総司令官、神田エミといえば、世界各国のトップから絶大な信頼を得ている人物だ。
そんな人物を目の前にすれば、誰しもが固まってしまうのも頷ける。胸の辺りまで真っ直ぐに伸びた桃色の髪、透き通る空色の瞳、白衣に身を包む凛とした立ち姿。
そのどれを取っても完璧そのもので、彼女の放つオーラは大の男でも気圧されるほどだった。
ルイもまた数百名の中に混じって、エミを硬直しながら見つめていた。話の内容が頭に入ってこない。これからイグニスに勤めることになるという実感が、彼を極度の緊張に陥れる。
「……ということだ。では、それぞれの所属する部署に移動してくれたまえ。職員が案内をするので、そこで待機するように」
エミが壇上から姿を消すと、十数名の職員が舞台袖から出てきて誘導を始める。次々に呼ばれていく他の者達を横目に、ルイは手汗を拭った。
そうして、ルイは最後の一人となった。
「キミが初瀬川ルイ君?」
ルイの前に近付いて来たのは、マリンキャップを目深に被った小さな男の子だった。職員と呼ぶには似つかないその風貌に、ルイは目を瞬かせる。
「はい、そう……です」
「そっか。ボクはイグニス日本支部防衛総隊副隊長の立花ノア。キミがこれから所属する防衛総隊のほとんどを任されてる。よろしくね」
——防衛総隊副隊長。その言葉にルイは驚きと戸惑いを隠せなかった。
ルイのそんな様子に何か言うでもなく、ノアは「ついてきて」と一言告げて歩き出す。ルイは慌ててその後を追った。
この世界には様々な種族の者がいる。人間、獣人、ヒューマノイド、以下略。吸血鬼は数こそ少ないものの、その名は広く周知されている。
吸血鬼といえば恐ろしいイメージだが、それは昔の話だ。多種共存の昨今においては、吸血鬼用の血液パックなども販売されており、生き血を啜る必要もなくなっている。
かくいうルイも、昨日のうちに瞬間冷凍鮮度抜群が売りの血液パックを飲んだものだから、明日までは全く問題なく活動できる状態にあった。
そんな彼が向かっている先というのが、WDO——世界防衛機関、又の名をイグニスという。
「新人諸君、はじめまして。私は世界防衛機関WDO……イグニスの最高総司令部総司令官の神田エミだ。今日が君達にとって素晴らしい門出の日となるよう私も願っている」
この街一番の高層ビル。そのホールに集められた数百名の人員が、壇上に立つ一人の女性に注目し、極度の緊張に身を固めていた。
WDO——世界防衛機関イグニスは、その名の通り世界の平和を守るために尽力する機関のことである。
イグニスの最高総司令部総司令官、神田エミといえば、世界各国のトップから絶大な信頼を得ている人物だ。
そんな人物を目の前にすれば、誰しもが固まってしまうのも頷ける。胸の辺りまで真っ直ぐに伸びた桃色の髪、透き通る空色の瞳、白衣に身を包む凛とした立ち姿。
そのどれを取っても完璧そのもので、彼女の放つオーラは大の男でも気圧されるほどだった。
ルイもまた数百名の中に混じって、エミを硬直しながら見つめていた。話の内容が頭に入ってこない。これからイグニスに勤めることになるという実感が、彼を極度の緊張に陥れる。
「……ということだ。では、それぞれの所属する部署に移動してくれたまえ。職員が案内をするので、そこで待機するように」
エミが壇上から姿を消すと、十数名の職員が舞台袖から出てきて誘導を始める。次々に呼ばれていく他の者達を横目に、ルイは手汗を拭った。
そうして、ルイは最後の一人となった。
「キミが初瀬川ルイ君?」
ルイの前に近付いて来たのは、マリンキャップを目深に被った小さな男の子だった。職員と呼ぶには似つかないその風貌に、ルイは目を瞬かせる。
「はい、そう……です」
「そっか。ボクはイグニス日本支部防衛総隊副隊長の立花ノア。キミがこれから所属する防衛総隊のほとんどを任されてる。よろしくね」
——防衛総隊副隊長。その言葉にルイは驚きと戸惑いを隠せなかった。
ルイのそんな様子に何か言うでもなく、ノアは「ついてきて」と一言告げて歩き出す。ルイは慌ててその後を追った。
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