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第3章 ダンジョン編

殲滅戦

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 シェロたちが宿屋で乙女トークを始めた頃に、ダンジョンでの戦いも始まっていた。

「ユーキ! デカイのいっくよ!」

 フィアの展開した魔力が、鬱屈うっくつとした空間を制圧するように広がる。
 魔力によって作られた数百にものぼる魔弾、魔槍、魔剣といった錬成武器から、雷、炎、氷といった属性魔法までありとあらゆる魔法が、詠唱も無しに一瞬で展開される。
 二百年前でさえ、エルフをして天才といわせる技量と、たった一人で数万の軍勢とすら渡り合える技量を、フィアは持っていた。
 その類いまれなる腕前が、この二百年で更に磨きがかかっている。
 フィアの前で、呪いを撒き散らしながら逃げ周る目玉を追いかけ回していたユーキは、突如背後から感じた超巨大な魔力に振り返り、展開された魔法の多さに顔を引きつらせる。

「おい! 待てフィア! 俺がいるだろ!?」
「ユーキならへーきへーき! というわけで、ゴー!」

 ケラケラと笑いながら、無邪気に魔法を撃ちだす。
 飛来してくる魔法は、壁を抉り、地面を削り、天井を破壊していく。圧倒的なまでの暴力な嵐が吹き荒れる中、勇人は魔法に背中を向けたままであるにもかかわらず、一発も掠らない。
 だが、ダメージが無いという点では目玉も同じである。
 魔力の槍が、剣が、雷が、炎が、黒い霧に触れた瞬間に溶けて消えていく。その度に、黒い霧は魔力を吸収して大きさが増していく。

「んーやっぱり飲み込まれちゃうか」

 二百年前に、魔王との戦いで見た光景と同じものを見せられたフィアは苦笑する。

「落とし子程度なら消し飛ばせるくらいの魔力を込めたんだけどね。不完全な成り損ないだから大丈夫だと思ったけど、甘かったかぁ」

 落とし子に通じて魔王に通じないその理由は、許容値にある。
 落とし子は、いずれ魔王になる子供とはいえ、分体である。一度に吸収できる許容値にも限界があり、それ以上の攻撃を叩き込めば自然に自壊していく。
 なので、落とし子はこの世界の住人でも倒すことができるのだ。
 だが、魔王は違う。
 その許容値にそこなどなく、世界を全て飲み込むまで止まらない。

「とはいえ、ここまでは予想通り」

 フィアはニヤリと笑い、二百年かけて作り上げた、まったく新しい魔法を展開させる。

「次元の虚空に揺蕩いし、忘れ去られしモノよ。我が誘う。この呼び声に、求めに、応じる心があるのなら、我と汝の力をもって敵を砕け! 召喚! 英雄の右腕ブレイブハンド!」

 フィアは、勇者召喚の術式と同じ魔法陣を展開し、ほんの一瞬だけ、多次元の英雄を召喚して攻撃させる。

「嘘だろ!?」

 勇人は、二重の意味で驚く。
 一つ目に驚いたことは、フィアの魔法が魔王にダメージを与えたこと。
 振り下ろされた巨大な腕が振るう一撃は、目玉に入り付いていた靄の半分を削り取るほどに威力だった。つまり、先ほどの魔法は聖剣の一撃にも等しい効果があることになる。
 二つ目に驚いたことは、フィアが勇者召喚と似通った魔法を使ったことだ。
 この世界で他世界への扉を開くためには、星の動きや月の満ち欠けが密接に関係している。それらの条件が揃うことで、ようやく勇者と呼ばれる存在を召喚できるのだ。
 それを、フィアは余りある魔力で、一瞬とはいえ強引にこじ開けたのだ。
 どれほどの魔力を注ぎ込めばそんな芸当ができるか分からないことをやってみせたフィアは、自分の魔法が成功をしたことを喜びながら倒れ伏す。

「ごめーん。いまので魔力切れちった。あと、よろしく」
「動けなくなるような魔法を使うなよ!?」

 そうは言うが、フィアの放った一撃のおかげで相手は死に体だ。これならば、万に一つも仕損じることはない。
 勇人は、握った聖剣を腰だめに構えると、鞘から抜くために真名を口にする。

「抜剣――聖剣アウロラ。奔れ!」

 鞘から抜き放たれた聖剣が、空間ごと切り裂く勢いで疾駆する。
 音を置き去りにしていった聖剣が、キンッと音を立てて鞘へと戻ると、目玉が真っ二つに裂けて黒い霧を血の様に吹きだしながら溶けて消えていく。
 悪意を振りまいていた存在が消えたことで、広場に満ちていた呪いが浄化されていった。
 あれほど不快感を伴っていた気配も、いまではその影がない。ただの薄暗い暗闇だけが、広がっているだけだ。

「これでこのダンジョンも終わりか」

 魔結晶や魔物を発生させていた大本を片づけた以上、遠からずこのダンジョンはただの迷宮になるだろう。
 それが人によって良いことなのか悪いことなのか、勇人にはわからない。それでも、勇者として魔王の残骸を倒したことに、後悔などなかった。

「さて、いつまでもこんな場所にいるわけにもいかないからな。おーい、フィア。帰るぞ」

 寝転がっているフィアの元へ歩み寄ると、フィアはテヘッと舌を出しておどけてみせた。

「ごめん、ユーキ。転移用の魔力も全部使っちゃった」
「なんだと? つまり、しばらく帰れないのか」
「うん。そういうこと。あの魔法って、魔力を本当の意味でスッカラカンにしちゃうから、身体が動かなくなっちゃうの。だから、いまの私は指一本動かせないや」

 勇人は、小さくため息を吐くと、大の字に寝転がっているフィアの近くに腰を下ろす。
 少し間、穏やかな空気が流れると、フィアから口を開いた。

「なんかさ、二人っきりって久しぶりだよね」
「ん? 確かにな」

 勇人がこの世界で、最初に出会ったのが勇者召喚をしたフィアだった。
 召喚されたばかりの頃は、勇人の傍にはお目付け役としていっつもフィアが居た。

「懐かしいよね。まだアリアと出会ってなかったから、ユーキも刺々しかったし」
「……仕方ないだろ。いきなり召喚されたかと思えば魔王と戦え、なんて言われたんだから」
「ふふ、そうだね。特に私に対してはそれはもう、ブリザードだったよね。まあ、召喚した張本人だから冷たくされてもしょうがなかったとは思うけどね」
「あれはな、お前がいちいちエロいことしようとしてきたからだ。そりゃ警戒だってするわ」
「いやーあの時は勇人にいらないなんて言われたら即死刑だったから、そりゃ必死になって仲良くしようとするよ」
「その結果が、紐ビキニで迫ってくることかよ。頭のネジが吹っ飛んでいたんじゃないか?」

 思い返しただけでも頭が痛くなる。あの時のフィアは、部屋の中だけでなく、王宮に居る時でさえ、紐ビキニで勇人のことを誘惑していたのだ。

「だってねぇ。男の子だしそういうことしたほうが喜ばれるかと思ったんだよ? 処女だったのに頑張ったよね、私。そのおかげで、私の処女は見事にレイプされて散らされちゃったわけだけど」
「あれは……正直すまんかった。ムラムラが抑えきれなかったんだ」

 数日間フィアに張り付かれた勇人は、ストレスのせいもあり性欲を抑えきれず暴走した。
 フィアを力づくで押さえつけ、濡れてもいない膣に何度も腰を打ちつけて欲望を叩きつけて吐き出したのだ。

「別にいいよ、アレは私のせいでもあるから。それにね、あの時に私分かったのよ。自分がユーキに対してドMだってことが。私ね、組み敷かれて、無理矢理犯されて、痛い筈なのに、嫌な筈なのにユーキ相手だと気持ちよくなっちゃうのよ」
「……言われてみれば、旅の時もお前とセックスするときはそういうプレイばかりだったな」

 防音結界も、隠蔽の魔法も、その時に開発したモノだった。

「だからね、ユーキ。いまから私のことレイプして?」
「は? なんだって?」
「だから、レイプ。動けない私のことを、ダッチワイフかオナホールみたいに道具みたいにして欲しいの」
「……理由を聞いてもいいか?」
「え? だってずっとユーキとセックスしていなかったから、久しぶりにヤリたくなったのよ。後は、ユーキの精液を膣に出してもらえばその分魔力が回復するからね」

 確かに、セックスで魔力が回復するなら脱出も早くなるため悪くはないかもしれない。

「ね? いいでしょユーキ。私の胸も、口も、オマンコも、全部ユーキの玩具にしていいから」
「いいのか? そんなこと言われたら、抑えが利かなくなるぞ?」
「平気。リリアちゃんたちにできないようなことだって、私にならしてもいいんだよ? 私が人間だって思えなくなるくらいに滅茶苦茶にしてよ」

 フィアの言葉が、媚毒のように勇人の耳に滑り込んでくる。かつて、フィアとしていた情事を思いだし、自然とチンポが立ち上がっていく。

「後悔するなよ」
「後悔なんてしないよ。だから、ユーキのオチンポ、頂戴?」

 媚びる様に見上げてくるフィアを見た勇人は、理性をかなぐり捨てて、フィアへと襲いかかった。
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