千夜と一夜の物語

きっせつ

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千夜一夜物語

ジャスミン王子とアーモンド姫の優しい物語

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とある国に7人の王子がいた。
その7人の王子の末王子のジャスミンはその中でも一際見目麗しい容姿を持っていた。

そんなジャスミン王子のもとにある時、愛の使者と名乗る修道僧が現れた。その修道僧が言うには隣国にはアーモンド姫というそれはそれは美しい姫がおり、何かに恋焦がれて悲しみに暮れていると言うのだ。

それを聞き、アーモンド姫に興味を持ったジャスミン王子はいても立っても居られず、アーモンド姫がいる隣国へと旅立った。


一方、アーモンド姫は離宮の中で悲しみに暮れていた。

アーモンド姫は夢の中であった見目麗しい若者に恋をしており、愛しているのに夢の中の住人である彼とは触れ合う事すら出来ない絶望に苛まれていたのだ。侍従達はそんなアーモンド姫を慰める為に王には内緒でアーモンド姫を外へと連れ出した。

外へ出ると美しい笛の音色が外には響いていた。その音色を辿るとそこには夢の中であった見目麗しい若者が笛で音色を奏でていた。

ポタリッとアーモンド姫の瞳から涙が伝う。
夢の中でしか逢えないと、触れられないと思っていた愛しいあの若者が現実にアーモンド姫の手が届く距離にいるのだ。

その若者はアーモンド姫に興味を持ち、隣国に訪れたジャスミン王子だった。

ジャスミン王子も一目でアーモンド姫を気に入ったが、ジャスミン王子はアーモンド姫のある秘密に戸惑った。アーモンド姫は男だったのだ。

アーモンド姫はその美しさから父王から寵愛を受け、姫として離宮に囲ってしまったのだ。


ジャスミン王子は戸惑ったが、アーモンド姫の美しさと向けられる愛に感化され、アーモンド姫を心の底から愛すようになった。

しかしアーモンド姫の父王はアーモンド姫を愛するが故にジャスミン王子の事が認められず、アーモンド姫の兄弟の王子達を使い、ジャスミン王子を亡き者にしようとした。


その頃、ジャスミン王子は国の者達がその凶暴さから恐れている豚鹿が棲む森に訪れていた。

家畜を襲いに森から姿を現した豚鹿をジャスミン王子はその美しい笛の音色で魅了し、檻に誘導して捕獲する事に成功した。その功績から国の者達から支持を得たジャスミン王子を殺す事が出来ず、父王はジャスミン王子を認めはしなかったが亡き者にする事は諦めた。

認められず会う事は許されなかったが、ジャスミン王子は密かに離宮に潜り込み、アーモンド姫との秘密の逢瀬を重ね、愛を深め合っていった。

アーモンド姫の事を可愛がり、愛していたアーモンド姫の兄弟達は尚も二人の恋路を邪魔しようとした。そしてアーモンド姫を従姉妹と結婚させようと画策した。

そしてその結婚式の宴の余興にジャスミン王子を呼び付け、二人の仲睦まじい所を見せつけアーモンド姫への恋心を砕こうした。が、アーモンド姫と事前に示し合わせていた2人は隙を見て抜け出し、駆け落ちした。

「やっと貴方にずっと触れている事が出来る。」

「やっと貴方を手に入れる事が出来た。」

2人は深く口付けを交わし、愛を確かめ合った。以後、2人の姿を見たものはいなかったが、お互いに愛し合う2人が幸せに暮らしたのは間違い無いだろう。



今日でシェヘラザードが閨で物語を紡ぎ続けて1001日目の夜。

それは何時ものように官能的な物語ではなく、純粋に愛し合う2人の物語だった。それでもシャフリヤール王は最後まで聞き続けた。

身体が熱くなるような官能的な話ではなかったが、その物語の中にはシャフリヤール王が無くしてしまったものがあった気がした。欲していたものがあった気がした。

身体ではなく心が熱い。
シャフリヤール王はシェヘラザードを熱い眼差しで見ていた。この1000と1夜にも渡る身体の付き合いのない逢瀬の中、シャフリヤールはシェヘラザードの語る物語に引き込まれ、物語を語ってくれるシェヘラザードに恋をしていた。

シェヘラザードが優しい声で語る物語をずっと聞いていたくて、生きて隣にいて欲しいと望むようになっていた。

「今日で物語は終わりです。」

しかしシェヘラザードはそう物語の幕を下ろした。

何時もともに聞いているドニアザードが今日はいなかった。だから何となくシャフリヤール王もこの1001夜にも渡る逢瀬が終わる事は予期していた。

やっとシェヘラザードを抱けるのに心に寂しさが込み上げてくる。

するりと閨の上で着ていた服をシェヘラザードは脱いだ。
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