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プロローグ
狂王との邂逅
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バクバクと心臓が飛び出そうな程、跳ね、悲鳴をあげる。
上質な絨毯の感触を素足で感じながらシェヘラザードはある男の寝室に足を踏み入れた。
そこは一度入ればもう生きて出る事は叶わないと呼ばれる魔窟。
しかし、キラキラと部屋中に散らばる宝石達と艶やかな絹で織られた天蓋で彩られたその部屋は魔窟と呼ぶにはあまりに美しい場所だった。
「今夜の相手はお前か。」
魔窟と呼ばれた部屋の美しさに目を奪われていると絹の天蓋の中にいた一人の男に話し掛けられた。
その男は水煙草を吸い、フゥッと口から白い雲をはく。雲は空に帰る前に部屋の中で霧散する。
水煙草と白檀の香りが男から漂う。
立派で勇ましい髭を蓄え、鷹のように鋭い金色の瞳の男。かの男こそ、シェヘラザードが棲む国の国王シャフリヤール。
妻の不貞から女性不振になった男。
女性を信じられなくなったこの男は暴走し、妻とその不倫相手達を処刑した。しかしそれだけではこの男の女性への憎悪は収まらず、国中の生娘を抱き、抱き終えたら処刑するという暴挙に出た狂王。
既に数十人にも及ぶ娘達がこの男の手にかかり、命を落とした。この国の大臣であるシェヘラザードの父はこの暴挙に頭を抱えて心を痛めており、それを見兼ねたシェヘラザード達は父にある話を持ち掛けた。
「今夜の閨のお供をさせて頂きます。シェヘラザードに御座います。」
絹の天蓋を開け、ベッドに上がるとベッドのシーツまでもが絹で出来ており、滑らかだった。
シャフリヤール王は挨拶も早々にシェヘラザードの服に手を掛け、脱がせようとしたが…。
「お待ち下さい。」とシェヘラザードが止めるので無理矢理ベッドへと押し倒した。
「安心せよ、シェヘラザード。怖がらずとも閨の中では優しくしてやろう。死の恐怖すら忘れてしまう程にな。」
「最期に、…最期に妹と話をさせて下さい。」
ホロホロと涙を流し、懇願するシェヘラザードに流石のシャフリヤールも心を痛め、閨にシェヘラザードの妹を呼び寄せた。妹のドニアザードはシェヘラザードに抱き付き、涙ながらに懇願する。
「姉様。私、幼い頃に、寝る前に姉様が話して聞かせてくれた物語をもう一度聞きたいわ。」
「ドニアザード。…そうね、私も最期に貴女にもう一度聞かせてあげたいわ。王様も聞いて下さいますか? 」
涙ながらにそうシャフリヤール王に懇願する美しい姉妹。早くシャフリヤール王は絹のように美しい肌を持つ、シェヘラザードにかぶりつきたかったが、美しい二人の懇願に気を良くして、物語をともに聞く事にした。
シャフリヤールはシェヘラザードを抱き寄せ、「話してみせよ。」と促す。内心シェヘラザードは男とまだバレていない事と作戦通りに進んでいる事にホッと胸を撫で下ろした。
「それではお話致しましょう。」
シェヘラザードは紡ぐ。
千夜と一夜にも渡る物語を。
上質な絨毯の感触を素足で感じながらシェヘラザードはある男の寝室に足を踏み入れた。
そこは一度入ればもう生きて出る事は叶わないと呼ばれる魔窟。
しかし、キラキラと部屋中に散らばる宝石達と艶やかな絹で織られた天蓋で彩られたその部屋は魔窟と呼ぶにはあまりに美しい場所だった。
「今夜の相手はお前か。」
魔窟と呼ばれた部屋の美しさに目を奪われていると絹の天蓋の中にいた一人の男に話し掛けられた。
その男は水煙草を吸い、フゥッと口から白い雲をはく。雲は空に帰る前に部屋の中で霧散する。
水煙草と白檀の香りが男から漂う。
立派で勇ましい髭を蓄え、鷹のように鋭い金色の瞳の男。かの男こそ、シェヘラザードが棲む国の国王シャフリヤール。
妻の不貞から女性不振になった男。
女性を信じられなくなったこの男は暴走し、妻とその不倫相手達を処刑した。しかしそれだけではこの男の女性への憎悪は収まらず、国中の生娘を抱き、抱き終えたら処刑するという暴挙に出た狂王。
既に数十人にも及ぶ娘達がこの男の手にかかり、命を落とした。この国の大臣であるシェヘラザードの父はこの暴挙に頭を抱えて心を痛めており、それを見兼ねたシェヘラザード達は父にある話を持ち掛けた。
「今夜の閨のお供をさせて頂きます。シェヘラザードに御座います。」
絹の天蓋を開け、ベッドに上がるとベッドのシーツまでもが絹で出来ており、滑らかだった。
シャフリヤール王は挨拶も早々にシェヘラザードの服に手を掛け、脱がせようとしたが…。
「お待ち下さい。」とシェヘラザードが止めるので無理矢理ベッドへと押し倒した。
「安心せよ、シェヘラザード。怖がらずとも閨の中では優しくしてやろう。死の恐怖すら忘れてしまう程にな。」
「最期に、…最期に妹と話をさせて下さい。」
ホロホロと涙を流し、懇願するシェヘラザードに流石のシャフリヤールも心を痛め、閨にシェヘラザードの妹を呼び寄せた。妹のドニアザードはシェヘラザードに抱き付き、涙ながらに懇願する。
「姉様。私、幼い頃に、寝る前に姉様が話して聞かせてくれた物語をもう一度聞きたいわ。」
「ドニアザード。…そうね、私も最期に貴女にもう一度聞かせてあげたいわ。王様も聞いて下さいますか? 」
涙ながらにそうシャフリヤール王に懇願する美しい姉妹。早くシャフリヤール王は絹のように美しい肌を持つ、シェヘラザードにかぶりつきたかったが、美しい二人の懇願に気を良くして、物語をともに聞く事にした。
シャフリヤールはシェヘラザードを抱き寄せ、「話してみせよ。」と促す。内心シェヘラザードは男とまだバレていない事と作戦通りに進んでいる事にホッと胸を撫で下ろした。
「それではお話致しましょう。」
シェヘラザードは紡ぐ。
千夜と一夜にも渡る物語を。
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