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第一章 王子とロバ耳と国際交流と

28、私を置いて行くな!?

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これは確実に何かある。
怖い。とにかく、なんとかしなければ!

そう思い立ち、休み時間を使い、僕は4年の教室に乗り込んだ。

「たのもーーっ!」

そう教室の入り口で叫ぶと教室の生徒がバッと僕を見て、死相を浮かべて机に突っ伏していたリュビオが眼鏡をずり落としながらも飛び起きた。

「何!?何です!!?」

「皇子には面と向かっては聞けない。シルビオは怖いからヤダ。そうなればリュビオしかいないんだよ」

「だから何が!?」

私は一体何に巻き込まれるんだと少し赤く充血している目を見開いて目に見えてリュビオは警戒する。


ついでに学園の休みの日の2日後のリュビオは何時もこんな感じで目を赤くして死相を浮かべている。
そして、学園は1週間のうち2日休みなのだけど、何故かリュビオだけ3日間休んでいる。


みんなと違い、3日も休んでいるのに誰よりも疲れてるリュビオ。
前に皇子達になんでリュビオは3日休みで、こんなに疲れてるのか聞いたらスッと目を逸らされ、何も答えてはくれなかった。

そうリュビオは何故か知らないけど疲れてる。
そんな相手にこれ以上の負担をかける程僕は鬼じゃない。だから…。


「皇子がここ2日、変なんだよ。何時もは早朝に僕を叩き起こすのに寝かせてくれるし。マナー講座もしないんだ」

用件だけちょっと聞いて帰ろう。
そう考えて一番気になるところだけ掻い摘んで伝えた。
そうするとリュビオは赤く腫れぼったい目で僕を見て…。

「諦めたんじゃないですか? やっても無駄だと思い至ったからやめただけでは?」

一切の容赦もなく、そう言い放った。

その言葉にぶわっと目から涙が飛び出た時は僕も驚いた。リュビオはリュビオで自分で言い放っておいて、ギョッとした顔で固まる。

「リュ、リュビオ様。そんな小さな子にそれは流石に…」

「ち、小さくなんかないですよ!?ラニ王子は14歳ですよ!」

「いや、14歳でも年下ですよ。泣かせちゃ駄目ですって!」

「…わた、私はただ可能性の一つを述べただけで」

リュビオのクラスメイト達からは非難の嵐。
リュビオは否定しつつも罪悪感があるのかオロオロしてる。

「ラ、ラニ王子。取り敢えず、お話を聞きますから場所を変えましょう」

「ぐすっ…。いいよ。分かったよ。なんとなく、そんな気もしてたよ」

「いやいやいや、あれはちょっとぽろっと出た個人的な意見で!!」

「ごめんね。体調悪いのに迷惑かけて。…大人しく教室に帰るよ」

「だから、待って!?…わ、分かりました。御免なさい。私が考え無しでしたッ。だからっ、だから、この状態のまま私を置いて帰るなっ!」

「リュビオ様。一番最後が本音ですよね…」

「最低です」

もう耐えられないとリュビオが教室から逃げるように僕に向かってくる。
腰を庇い、動く度に、「んっ…。ぁ」と変な声を出し羞恥に震えながら必死な形相で僕の手を掴んだ。

「だ、大丈夫だよ。身体辛いんでしょ?…なんか怖いし、もういいよ」

「分かりました。お菓子でも何でも奢りましょう。だから黙って着いてきなさいっ」

「…ううん。いいよ。なんか怖いからいい」

皇子は本人だから聞き辛い。
シルビオは皇子が絡むと怖いから聞けない。
消去法でリュビオを選んだのが間違いだったのかもしれない。皇子とは関係がなくても頼りになるライモンド先生に聞くべきだった。


リュビオの手を引き剥がし、待ちなさいと足を小鹿のようにプルプルと震わせて追おうとするリュビオを振り切った。




「やっぱり、お茶会が駄目だったのかな…」

まだポタポタと頬を伝い続ける雫を手で乱雑に拭う。

流石に泣き顔では教室には帰れず、人気のない校舎裏に逃げ込んだ。

校舎裏は狭く入り組んでいて薄暗い。だから、普段は絶対に立ち寄らない。
僕は人の声がいっぱいする明るい場所の方が落ち着くから、この校舎裏はちょっと苦手。

それでも流石に僕だって大勢の前で泣きじゃくって平静を保てる程、図太くない。僕だって男の子だもん。プライドくらいある。


「皇子怒ってたもんね。頭叩かれたし、頰つねられたし…」

怒ってた皇子を思い出して、次に気落ちしていた皇子の姿が頭に浮かんだ。あれはもしかしたら怒りを通り越して僕にガッカリしてたのかもしれない。

涙を止める為に校舎裏に逃げ込んだのに、更にボロボロと涙が溢れて、膝を抱えて蹲る。

ダメだ…。何度思い返してみてもマナー以外に何が悪かったのか分からない。理由が分からないんじゃ謝る事も出来ない。

スンッと鼻を鳴らしながら、もう一度何がダメだったか考えても分からない。


「どうしたんだい?」

ふと、そう声を掛けられて、涙でべちゃべちゃな顔を上げる。
すると、浅黒い肌をした少年が目の前に屈んでいて、鳶色の瞳がこちらを見ていた。
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