16 / 119
第一章 王子とロバ耳と国際交流と
16、狂気と好意は紙一重
しおりを挟む
近づいてその金色のものを手に取る。
それはシンプルだが見るからに上質そうな金色のロケット。シルビオが大切そうに見ていたロケットだ。
気を遣って相手を待たせないように手早く用意してたから落とした事にも気付かなかったんだろう。
大切そうにしてたから早く届けてあげようかとシルビオを追って足を向けようとして、はたと気づく。
あっ!
これ、エレンとくっつけるチャンス?
エレンにシルビオの落とし物だとそれとなく渡して貰えば距離は縮まるかな。
「んー?でも、ロケットって言えば中身の定番は想い人の写真だよね。中身はエレンだったりするのかな…」
もし中身がエレンでロケットを渡したエレンが中身を見てしまったとする。
BLゲームの世界観だったら「こんなに俺を思ってくれてるんだ。嬉しいっ…」って、なるのだろうか?
僕だったら自分の写真が友人に肌身離さず後生大事にされていたらその事実を受け入れられるか分からない。僕は友人とは適切な距離がいい。
人のものを勝手に覗いてはいけない。
そう良心が訴えるが、そこが心配で仕方がない。
家族やペットの写真であれ!と切に願って数センチだけ開けて…。
「………え?……は??」
混乱して、中身の写真を二度見した。
ロケットの中に入っていたのは少し古い写真。
その中では4、5歳くらいの少年が可愛いテディベアを抱っこしてる姿が映っている。
白黒で髪の色も目の色も分からない。
シルビオの弟さん?…とボケたい所だが、その少年の漂わせる雰囲気と面影を僕は知っている。
強気で眼力のある瞳。
口をへの字に結び、「俺は本当はこんな写真撮りたくないんだからな?」と言いたげな不機嫌な表情。
嫌々にしては何処かちょっと嬉しそうに少しだけ広角が上がっている。
「な、なんて分かり易い…」
小さい頃でも、写真の中でもツンデレ全開なその人を僕は知っている。
気付きたくなくても数ヶ月関わっただけで分かってしまう。
「なんで皇子の写真?」
止めとない困惑と素朴な疑問。
皇子は皇子だから騎士団長の息子であるシルビオが仕えるのが当たり前なのは王子(笑)の僕でも分かる。
シルビオ(ついでにリュビオも)がかなりの確率で皇子と一緒にいるのも未来の臣下だからだというのもなんとなく分かる。
だけど、なんで小さい頃の写真?
なんで自身の主人の写真を肌身離さず後生大事に持ってるの?
「なーにしてるのかな?ラニラニ」
そう背後から声がして、ビクリッと身体が跳ねる。
振り返るとそこにはさっき女の子たちとお茶に行った筈のシルビオが感情の一切読めない笑みをニコニコと浮かべていて、思わず顔が引き攣った。
「……ごめんなさい」
「なんで謝るの?ラニラニは謝らなければいけない事をやっちゃったのかなー?」
「落としたロケットの中身を勝手に見ました。ごめんなさい」
「そっかー。ラニラニは素直に謝ってエライねー。エライ、エライ」
にぃーっこり笑ったままシルビオが僕の頭を撫でる。
とぉーっても優しく笑顔で接しられてるのにロバ耳は緊張でピンッと張り詰め、苦笑いが止まらない。
「そっか。そっかー。見ちゃったかぁ。鍛錬の時もずっと茂みにいたよねー」
「あ、あはははっ。……ごめんなさい」
「いやー。気にしてないヨー。可愛い事してるなーって思っただけだよー」
「あはっ、あははは。……も、もうしません」
「いや、別に気にしてないから全然してもいいよー。ラニラニなら許しちゃう。ラニラニは特別だからねー」
見ていた事が最初からバレていた事で軽く頭がパニック状態。
シルビオはシルビオで言ってる事も表情も優しいのになんか怖い。理由は分からないけどなんか怖い。
引き攣った笑みのまま表情が固まる。
今すぐロケットを渡してこの場から戦略的撤退をしたいのに体がヘビに睨まれた蛙のように動かない。何故だ。口は動くのに…。
「と、特別…」
「うん。フィルっちの将来に欠かせない存在だからねー」
「はははっ…。ぼ、僕、王子だけど、将来漁師だよ?皇子の将来には役立てないと思うよ…」
「そんな事ないぢゃん。謙遜謙遜」
「ははははっ…。いやいやいやいや…。ほら、僕王族でも末端だから国をどうこうするようか発言力はないよ」
「そうだネ。直接的にはないかもね」
「ちょ、直接的にも間接的にもないから」
「あははっ!謙虚だねー、ラニラニは」
「あはっ、あはははっ……」
何故だろう。
今、恐ろしい程に重過ぎる何かを期待されている気がする。
あれ??何故、こうなった!?
エレンとシルビオをくっ付けよう作戦から何がどうなってこうなった?!!
にぃーっこり笑ったままシルビオは僕からロケットを受け取り、ロケットを持っていた僕の手を握る。
「さぁー、ラニラニはそろそろ教室に戻ろっかー。フィルっちが移動教室に行った後からラニラニが居ないって心配してたよー」
「へ、へぇー。そうなんだ。ちょっと今まで新聞部に捕まってて。…で、でも自分で帰れるよ?僕、自分で帰れるから!」
「そうだねー。でも、送るよ。俺、こんなんでも騎士の端くれだからね。要人をひとりにできないぢゃん」
「で、でも、女の子たちとの約束があるよね!!ほら、学園内なら何も危なくないから大丈夫!行ってきていいよっ」
「大丈夫っ!彼女達と俺は受講してる授業まで一時間くらい空きがあるから。それに彼女達は少し待たせたくらいでめくじら立てる子達じゃないからね。それに新聞部に捕まったんでしょ?秘密がある以上危なくは全くないよね?…さて、これで納得?」
「………うぅ。帰れるよぉ。帰れるって!」
最初から拒否権なんて存在しなかった。
全く振り解けない手と圧のあるニコニコ笑顔。
僕の意思は全く尊重されず、お子ちゃまみたいに御手手を繋いで誘導され、みんなに注目を受けながら自身の教室に戻る羽目になった。
「ラニラニは良い子だね。ラニラニはフィルっちのもう弟のようなものだからいっぱいフィルっちに甘えて良いんだよ?」
「いえ…。そんな事は…」
「ラニラニは俺にとっても可愛い弟みたいなもんぢゃん。…卒業してもずっとこの国に居てくれていいからね?帰っちゃうの寂しーしね」
「お家には帰してください。ボク、オ家大好キ」
強制送還の間も感情の読み取れない笑顔を浮かべながら側から見てると好意的な話題を振ってくるシルビオ。だが、その言葉の節節に全く好意的ではない何かを感じて僕はずっと顔が引き攣っていた。
「シルビオ様とラニ王子は仲がいいのね」
「お手を繋いで、まるで本当の兄弟みたいだ」
シルビオと僕が笑っているから雰囲気は一見和やかに周りには見えるらしい。
見守るような周囲の温かな眼差しはこの時の僕には辛かった。
「おいっ。どこに行っていた?…べ、別に心配してたんじゃないからな。心配して待ってた訳じゃわないからな?」
教室に着くと皇子がまだ居た。
シルビオに強制送還されてきた僕を見つけると、ホッとした表情を浮かべたかと思うとあからさまにツンッとした態度を取る。
そこでやっとシルビオの握っている手の力が緩み、何時もならちょっと面倒だなと思うツンデレ発言に安堵を覚えた。
「……な、なんで涙目なんだ」
「うぅ…。うわぁーんっ!」
「な、何故泣く!?ど、ど、ど、どうした?!」
「あー。ラニラニ、新聞部に捕まってたんだってサー」
「大問題じゃないか!!…余計な事言わなかったか?」
「笑顔が…。笑顔がッ!」
「え、笑顔がどうしたんだ??」
状況がいまいち飲み込めない皇子と、僕の涙をサラッと新聞部の所為にしつつ、報告もこなす抜け目のないシルビオ。
一見、面倒臭いツンデレだが、案外感情が分かり易い皇子と、笑顔なのに感情が読めず、本当は何を考えてるのか分からないシルビオ。
僕はシルビオから逃げるように皇子に飛びつき、泣きついた。
面倒臭いツンデレより感情が分からない方が厄介で怖いっ。裏がありそうな優しさより多少捻くれていても純粋なお節介の方がいい。
「な、な、な、な、な!!?ど、ど、ど、どどうしたッ!?!え?え???」
何故。シルビオが皇子の写真を肌身離さず後生大事に持ってたのかはわからない。
だけど、シルビオについて言える事は……。
「あははっ。フィルっち動揺し過ぎぢゃん。そーゆー時は泣き止むまでやさしく甘えさせてあげるのがオニーサンの役割だよー」
「こ…れは甘えてるのか?俺には怯えて目の前の藁に必死に縋っているようにしか見えないのだが…」
「それが頼られてるって事ぢゃん。ヨカッタね。オニーチャン」
「そうなのか?…ま、まぁ、やぶさかではないが」
案外、まともに状況把握をしていた皇子にシルビオが笑顔で余計な事を吹き込む。
皇子には普通のいつも通りの笑顔だったが、僕と目が合った瞬間、またあの感情の読めない笑顔で口に人差し指をつけた。
…シ、シルビオについて言える事は僕が関わっている攻略対象の中で一番怖いという事。
この怖い男の暴いてはいけない何かに僕は触れてしまったんだろう。
それだけはあの笑顔から分かりたくないけど分かる。
「なんで…。なんで、真っ当な攻略対象が居ないんだ!! 誰!?こんな狂ったキャラ設定ぶっ込んだのは?」
「な、なんの話だ??」
「うーん。さぁ?取り敢えず、お菓子でも与えとけば落ち着くんぢゃん?」
「な、成程!クッキーなら丁度、持ってるぞ!!」
絶対、この世界の作成者は狂っている。
どうやって、こんなのを攻略しろというんだ。
初っ端から出鼻をくじれて、心折れても、だけども甘いものは美味しい。
差し出されたランドグシャなるクッキーを泣きながらヤケクソに頬張った。
それはシンプルだが見るからに上質そうな金色のロケット。シルビオが大切そうに見ていたロケットだ。
気を遣って相手を待たせないように手早く用意してたから落とした事にも気付かなかったんだろう。
大切そうにしてたから早く届けてあげようかとシルビオを追って足を向けようとして、はたと気づく。
あっ!
これ、エレンとくっつけるチャンス?
エレンにシルビオの落とし物だとそれとなく渡して貰えば距離は縮まるかな。
「んー?でも、ロケットって言えば中身の定番は想い人の写真だよね。中身はエレンだったりするのかな…」
もし中身がエレンでロケットを渡したエレンが中身を見てしまったとする。
BLゲームの世界観だったら「こんなに俺を思ってくれてるんだ。嬉しいっ…」って、なるのだろうか?
僕だったら自分の写真が友人に肌身離さず後生大事にされていたらその事実を受け入れられるか分からない。僕は友人とは適切な距離がいい。
人のものを勝手に覗いてはいけない。
そう良心が訴えるが、そこが心配で仕方がない。
家族やペットの写真であれ!と切に願って数センチだけ開けて…。
「………え?……は??」
混乱して、中身の写真を二度見した。
ロケットの中に入っていたのは少し古い写真。
その中では4、5歳くらいの少年が可愛いテディベアを抱っこしてる姿が映っている。
白黒で髪の色も目の色も分からない。
シルビオの弟さん?…とボケたい所だが、その少年の漂わせる雰囲気と面影を僕は知っている。
強気で眼力のある瞳。
口をへの字に結び、「俺は本当はこんな写真撮りたくないんだからな?」と言いたげな不機嫌な表情。
嫌々にしては何処かちょっと嬉しそうに少しだけ広角が上がっている。
「な、なんて分かり易い…」
小さい頃でも、写真の中でもツンデレ全開なその人を僕は知っている。
気付きたくなくても数ヶ月関わっただけで分かってしまう。
「なんで皇子の写真?」
止めとない困惑と素朴な疑問。
皇子は皇子だから騎士団長の息子であるシルビオが仕えるのが当たり前なのは王子(笑)の僕でも分かる。
シルビオ(ついでにリュビオも)がかなりの確率で皇子と一緒にいるのも未来の臣下だからだというのもなんとなく分かる。
だけど、なんで小さい頃の写真?
なんで自身の主人の写真を肌身離さず後生大事に持ってるの?
「なーにしてるのかな?ラニラニ」
そう背後から声がして、ビクリッと身体が跳ねる。
振り返るとそこにはさっき女の子たちとお茶に行った筈のシルビオが感情の一切読めない笑みをニコニコと浮かべていて、思わず顔が引き攣った。
「……ごめんなさい」
「なんで謝るの?ラニラニは謝らなければいけない事をやっちゃったのかなー?」
「落としたロケットの中身を勝手に見ました。ごめんなさい」
「そっかー。ラニラニは素直に謝ってエライねー。エライ、エライ」
にぃーっこり笑ったままシルビオが僕の頭を撫でる。
とぉーっても優しく笑顔で接しられてるのにロバ耳は緊張でピンッと張り詰め、苦笑いが止まらない。
「そっか。そっかー。見ちゃったかぁ。鍛錬の時もずっと茂みにいたよねー」
「あ、あはははっ。……ごめんなさい」
「いやー。気にしてないヨー。可愛い事してるなーって思っただけだよー」
「あはっ、あははは。……も、もうしません」
「いや、別に気にしてないから全然してもいいよー。ラニラニなら許しちゃう。ラニラニは特別だからねー」
見ていた事が最初からバレていた事で軽く頭がパニック状態。
シルビオはシルビオで言ってる事も表情も優しいのになんか怖い。理由は分からないけどなんか怖い。
引き攣った笑みのまま表情が固まる。
今すぐロケットを渡してこの場から戦略的撤退をしたいのに体がヘビに睨まれた蛙のように動かない。何故だ。口は動くのに…。
「と、特別…」
「うん。フィルっちの将来に欠かせない存在だからねー」
「はははっ…。ぼ、僕、王子だけど、将来漁師だよ?皇子の将来には役立てないと思うよ…」
「そんな事ないぢゃん。謙遜謙遜」
「ははははっ…。いやいやいやいや…。ほら、僕王族でも末端だから国をどうこうするようか発言力はないよ」
「そうだネ。直接的にはないかもね」
「ちょ、直接的にも間接的にもないから」
「あははっ!謙虚だねー、ラニラニは」
「あはっ、あはははっ……」
何故だろう。
今、恐ろしい程に重過ぎる何かを期待されている気がする。
あれ??何故、こうなった!?
エレンとシルビオをくっ付けよう作戦から何がどうなってこうなった?!!
にぃーっこり笑ったままシルビオは僕からロケットを受け取り、ロケットを持っていた僕の手を握る。
「さぁー、ラニラニはそろそろ教室に戻ろっかー。フィルっちが移動教室に行った後からラニラニが居ないって心配してたよー」
「へ、へぇー。そうなんだ。ちょっと今まで新聞部に捕まってて。…で、でも自分で帰れるよ?僕、自分で帰れるから!」
「そうだねー。でも、送るよ。俺、こんなんでも騎士の端くれだからね。要人をひとりにできないぢゃん」
「で、でも、女の子たちとの約束があるよね!!ほら、学園内なら何も危なくないから大丈夫!行ってきていいよっ」
「大丈夫っ!彼女達と俺は受講してる授業まで一時間くらい空きがあるから。それに彼女達は少し待たせたくらいでめくじら立てる子達じゃないからね。それに新聞部に捕まったんでしょ?秘密がある以上危なくは全くないよね?…さて、これで納得?」
「………うぅ。帰れるよぉ。帰れるって!」
最初から拒否権なんて存在しなかった。
全く振り解けない手と圧のあるニコニコ笑顔。
僕の意思は全く尊重されず、お子ちゃまみたいに御手手を繋いで誘導され、みんなに注目を受けながら自身の教室に戻る羽目になった。
「ラニラニは良い子だね。ラニラニはフィルっちのもう弟のようなものだからいっぱいフィルっちに甘えて良いんだよ?」
「いえ…。そんな事は…」
「ラニラニは俺にとっても可愛い弟みたいなもんぢゃん。…卒業してもずっとこの国に居てくれていいからね?帰っちゃうの寂しーしね」
「お家には帰してください。ボク、オ家大好キ」
強制送還の間も感情の読み取れない笑顔を浮かべながら側から見てると好意的な話題を振ってくるシルビオ。だが、その言葉の節節に全く好意的ではない何かを感じて僕はずっと顔が引き攣っていた。
「シルビオ様とラニ王子は仲がいいのね」
「お手を繋いで、まるで本当の兄弟みたいだ」
シルビオと僕が笑っているから雰囲気は一見和やかに周りには見えるらしい。
見守るような周囲の温かな眼差しはこの時の僕には辛かった。
「おいっ。どこに行っていた?…べ、別に心配してたんじゃないからな。心配して待ってた訳じゃわないからな?」
教室に着くと皇子がまだ居た。
シルビオに強制送還されてきた僕を見つけると、ホッとした表情を浮かべたかと思うとあからさまにツンッとした態度を取る。
そこでやっとシルビオの握っている手の力が緩み、何時もならちょっと面倒だなと思うツンデレ発言に安堵を覚えた。
「……な、なんで涙目なんだ」
「うぅ…。うわぁーんっ!」
「な、何故泣く!?ど、ど、ど、どうした?!」
「あー。ラニラニ、新聞部に捕まってたんだってサー」
「大問題じゃないか!!…余計な事言わなかったか?」
「笑顔が…。笑顔がッ!」
「え、笑顔がどうしたんだ??」
状況がいまいち飲み込めない皇子と、僕の涙をサラッと新聞部の所為にしつつ、報告もこなす抜け目のないシルビオ。
一見、面倒臭いツンデレだが、案外感情が分かり易い皇子と、笑顔なのに感情が読めず、本当は何を考えてるのか分からないシルビオ。
僕はシルビオから逃げるように皇子に飛びつき、泣きついた。
面倒臭いツンデレより感情が分からない方が厄介で怖いっ。裏がありそうな優しさより多少捻くれていても純粋なお節介の方がいい。
「な、な、な、な、な!!?ど、ど、ど、どどうしたッ!?!え?え???」
何故。シルビオが皇子の写真を肌身離さず後生大事に持ってたのかはわからない。
だけど、シルビオについて言える事は……。
「あははっ。フィルっち動揺し過ぎぢゃん。そーゆー時は泣き止むまでやさしく甘えさせてあげるのがオニーサンの役割だよー」
「こ…れは甘えてるのか?俺には怯えて目の前の藁に必死に縋っているようにしか見えないのだが…」
「それが頼られてるって事ぢゃん。ヨカッタね。オニーチャン」
「そうなのか?…ま、まぁ、やぶさかではないが」
案外、まともに状況把握をしていた皇子にシルビオが笑顔で余計な事を吹き込む。
皇子には普通のいつも通りの笑顔だったが、僕と目が合った瞬間、またあの感情の読めない笑顔で口に人差し指をつけた。
…シ、シルビオについて言える事は僕が関わっている攻略対象の中で一番怖いという事。
この怖い男の暴いてはいけない何かに僕は触れてしまったんだろう。
それだけはあの笑顔から分かりたくないけど分かる。
「なんで…。なんで、真っ当な攻略対象が居ないんだ!! 誰!?こんな狂ったキャラ設定ぶっ込んだのは?」
「な、なんの話だ??」
「うーん。さぁ?取り敢えず、お菓子でも与えとけば落ち着くんぢゃん?」
「な、成程!クッキーなら丁度、持ってるぞ!!」
絶対、この世界の作成者は狂っている。
どうやって、こんなのを攻略しろというんだ。
初っ端から出鼻をくじれて、心折れても、だけども甘いものは美味しい。
差し出されたランドグシャなるクッキーを泣きながらヤケクソに頬張った。
11
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩
ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。
※現在、加筆修正中です。投稿当日と比較して内容に改変がありますが、ご了承ください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しい少年ジゼの、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です(笑)
本編完結しました!
『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル
『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びに来る、舞踏会編はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
舞踏会編からお読みいただけるよう、本編のあらすじをご用意しました!
おまけのお話の下、舞踏会編のうえに、登場人物一覧と一緒にあります。
ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話を連載中です。もしよかったらどうぞです!
第12回BL大賞10位で奨励賞をいただきました。選んでくださった編集部の方、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです。
心から、ありがとうございます!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる