第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ

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何故、皆嫌がるのか

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貴方は王座あげると言われたらどう反応するだろう?

俺は今まで「自身こそが王に相応しい。」と疑わない兄王子九人の背を見て生きてきた。だから俺以外の人間は王になりたいものだと思っていた。

しかし、現状は従兄弟達も王弟達も誰一人、飛びつかない。
そう言いつつも、裏で俺を王位継承権一位から引き摺り落とす暗躍でもしていないかと調べてみてもそんな動きはなし。

唯一動きがあったのはティモを引き摺り落として自身が王配になろうとしたロランのハニートラップくらいだ。

完全に行き詰まった王位押し付け計画。
それと裏腹に平民で男であるティモとの婚約は波紋を呼ぶと思っていたのに国中が歓迎ムードらしい。

平民達は平民が王配になるというシンデレラストーリーに早くもブームが起き、俺とティモの出会いを面白おかしく感動的に描いた劇や小説なんかが売れているらしい。

そして一番反発すると思われた貴族達ですら賛同者が多く、その賛同者の熱に押される形で着実に味方が増えてしまっている。

この前、国王主催のパーティーに出席した時も「頑張ってください。」「応援してます。」と言った声援は受けたが、否定の言葉は陰口ですら一切聞かなかった。

寧ろ、ヒソヒソと「同性婚が認められるとはいい時代になりましたな。」、「実は私も囲っている同性の愛人が…。」……なんて、言う小声で話し合ってるのが聞こえて頭を抱えた…。


何故か、悪い意味でいい方向に転がっている。
このままでは非常にまずい。
本当にティモすら逃がせなくなる。








ふわふわと意識が浮き沈みする。


「朝だよ、起きないの? 」

そう問いかけられ、眠い目を擦ろうとすると、その手を小さな手に拘束される。

「ダメでしょ。赤くなっちゃう。折角、綺麗な瞳なんだから勿体無いでしょ。」

その訛りのない口調と声変わりしていない高い声で、俺を起こそうとしている相手がティモでない事を眠い頭は理解した。しかし、理解しただけで、特に気に留める事はなく、意識を夢の園へと落とす。

だって、眠い。
昨日は普段通り政務もあり、学園もあった上に、国王陛下にパーティーに連れ回された。

パーティーの最中は国王陛下がべったり俺に付いてて、やたらめったら話しかけて来た。
やれ、最近の学園生活はどうだだの。やれ、実は私もカブトムシを飼い始めたんだだの。

最近、プレゼント攻撃がやっと止んだかと思えば、今度はプレゼントの代わりに本人がぐいぐい来る。しかも何故か俺の趣味をてらっとおさえて、会話を弾ませて来ようとしてくる。……誰だ。俺の情報を国王陛下に売った奴。なんて事をしてくれたんだ!!

…とにかく、精神的に疲れて眠い。
だから、今日は眠らせて欲しい。いや、眠らせろ。


そう起こそうとする誰かに抵抗すると、その誰かは不敵に笑みを溢した。

「起きないって事は襲っていいって事だよね。」

そう耳元で呟き、フッと耳に息を掛けられた。

ゾクリッと身体が震える。
嫌な予感を察知して意識が一気に覚醒した。
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