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天地がひっくり返ろうとも
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「ティモ…。そのっ、俺、疲れてるみたいで。ごめん。アホな事言って。」
グイッと真っ赤なティモの顔が近付き、恥ずかしくて逸らそうとした顔が逸らせず、余計恥ずかしくなり、必死に弁明する。
顔が真っ赤になっているのが自分でも分かるくらい熱い。
うわぁ、恥しッ!!
なーにがもっとぎゅっとしてだ!?
自身に毒を吐きながらチラリとティモを確認すると耳まで真っ赤にして何かを呟いている。
「可愛い…。とっても…。とっても。」
「かわっ!? いやいやいやいや、俺、可愛くなんてないから。」
全く何言ってんだティモはと羞恥心が消し飛び、思わずクスクスと笑ってしまったが、ティモの目は何時になく真剣で、ティモの親指が俺の唇を撫で、驚いた。
「ティモ? 」
何時もと違い、熱を孕んでるティモの眼差しにゴクリと喉を鳴らす。
何でか妙に緊張してギュッと自身の手を握った。
俺より背の低いティモが自身の顎をクイッと上げて……。
「ツェーン王子!? ま、まさか、そこにいらっしゃるのはツェーン王子ですか!! 」
醸し出される甘い空気をぶっ壊すように筋肉ダルマの大声がキーンッと鼓膜を揺らした。
そういや、奴がいたんだったと、こちらに嬉しそうに走ってくる奴を一瞥して、ティモを見ると、ティモは固まってしまってる。
「ティ、ティモ? 」
「はわっ…。はわわっ…、その、出来心でして。も、勿論、こういう行為はきちんと誓い合って、同意さ、必要なものでして。…でも、可愛くて…嬉しくて、つい、…つい…。うぅ…、ぐすっ…嫌いさ、ならんでください。」
「えっ、いや、何で泣いてるの!? そもそも今の状況を理解出来てないんだけど。」
「嫌いさ、なられたら俺は…俺は……うぅ。」
「ティモ。嫌いには絶対ならないから、一旦、逃げさしてッ!! なんか捕まったら面倒臭そうッ。」
「ツェーン王子ぃいッ!! 王子自ら出向いて頂けるとは光栄ですっ!!! ついにッ、ついに!! 私を王子専属の護衛騎士になさる決心を…。感激至極です。」
「あぁ、もうっ…。違うッ。俺がお前を護衛にする事なんて天地がひっくり返ろうがないわッ。」
「王子…。…くっ!! ……分かってます。私は分かってますよ。……王子はこの国の為を思い、私に自身よりこの国を守れと仰りたいのですよね。」
「どう思考が転がったらそんな解釈になるんだよ!? …で、ティモはもう泣かないで。大丈夫だから。ね。」
「うぅ…。ぐすんっ…。」
ちょっと様子を見にきただけなのに何でこんな面倒な事になってしまったのか。
場は大混乱。
ティモは泣きじゃくり、筋肉ダルマはひたすらうるさい。
その後、やっと笑いが落ち着いて帰ってきたレナードがこの状況を見て、微笑ましいものを見るような視線を送ってきたので、俺はそんなレナードを睨んだ。
全く、微笑ましくなんてないッ。
俺の疲れた顔が見えないのか!?
やっとレナードが仲裁に入り、なんとかその場は収まったのだが……。
「え? ツェーン。週末さ、出掛けるから居ない?? 」
「うん。ジレーネ公爵と話し合いに。……長くなるみたいでね。一泊してくるから。」
「一日……会えない。」
ジレーネ公爵との泊まり込みの会談の事を伝えるとポロッとまたティモの瞳から涙が溢れた。
寂しいとホロホロ泣くティモを前にレナードがニコニコとこちらを見てくる。その顔はわかってますよと言いたげ。
「週末のティモ様の学習予定はキャンセルしておきますね。用意はお任せください。」
「………何で言いたい事が分かった。まだ俺のとこ来て二日だよな、レナードは。」
「殿下は非常にお優しい方ですから。ティモ様には特別。」
殿下は勝てないでしょ? と、少し苦笑いを浮かべて、ティモの涙を拭うように俺にハンカチを渡してくるレナード。
俺はもうただただ苦笑いを溢すしか出来ない。
ああ、そうだよ…。俺は滅法、この涙に弱い。
その上、涙の理由が寂しいからなんて言われてしまえば、折れるしかないだろうがッ。
グイッと真っ赤なティモの顔が近付き、恥ずかしくて逸らそうとした顔が逸らせず、余計恥ずかしくなり、必死に弁明する。
顔が真っ赤になっているのが自分でも分かるくらい熱い。
うわぁ、恥しッ!!
なーにがもっとぎゅっとしてだ!?
自身に毒を吐きながらチラリとティモを確認すると耳まで真っ赤にして何かを呟いている。
「可愛い…。とっても…。とっても。」
「かわっ!? いやいやいやいや、俺、可愛くなんてないから。」
全く何言ってんだティモはと羞恥心が消し飛び、思わずクスクスと笑ってしまったが、ティモの目は何時になく真剣で、ティモの親指が俺の唇を撫で、驚いた。
「ティモ? 」
何時もと違い、熱を孕んでるティモの眼差しにゴクリと喉を鳴らす。
何でか妙に緊張してギュッと自身の手を握った。
俺より背の低いティモが自身の顎をクイッと上げて……。
「ツェーン王子!? ま、まさか、そこにいらっしゃるのはツェーン王子ですか!! 」
醸し出される甘い空気をぶっ壊すように筋肉ダルマの大声がキーンッと鼓膜を揺らした。
そういや、奴がいたんだったと、こちらに嬉しそうに走ってくる奴を一瞥して、ティモを見ると、ティモは固まってしまってる。
「ティ、ティモ? 」
「はわっ…。はわわっ…、その、出来心でして。も、勿論、こういう行為はきちんと誓い合って、同意さ、必要なものでして。…でも、可愛くて…嬉しくて、つい、…つい…。うぅ…、ぐすっ…嫌いさ、ならんでください。」
「えっ、いや、何で泣いてるの!? そもそも今の状況を理解出来てないんだけど。」
「嫌いさ、なられたら俺は…俺は……うぅ。」
「ティモ。嫌いには絶対ならないから、一旦、逃げさしてッ!! なんか捕まったら面倒臭そうッ。」
「ツェーン王子ぃいッ!! 王子自ら出向いて頂けるとは光栄ですっ!!! ついにッ、ついに!! 私を王子専属の護衛騎士になさる決心を…。感激至極です。」
「あぁ、もうっ…。違うッ。俺がお前を護衛にする事なんて天地がひっくり返ろうがないわッ。」
「王子…。…くっ!! ……分かってます。私は分かってますよ。……王子はこの国の為を思い、私に自身よりこの国を守れと仰りたいのですよね。」
「どう思考が転がったらそんな解釈になるんだよ!? …で、ティモはもう泣かないで。大丈夫だから。ね。」
「うぅ…。ぐすんっ…。」
ちょっと様子を見にきただけなのに何でこんな面倒な事になってしまったのか。
場は大混乱。
ティモは泣きじゃくり、筋肉ダルマはひたすらうるさい。
その後、やっと笑いが落ち着いて帰ってきたレナードがこの状況を見て、微笑ましいものを見るような視線を送ってきたので、俺はそんなレナードを睨んだ。
全く、微笑ましくなんてないッ。
俺の疲れた顔が見えないのか!?
やっとレナードが仲裁に入り、なんとかその場は収まったのだが……。
「え? ツェーン。週末さ、出掛けるから居ない?? 」
「うん。ジレーネ公爵と話し合いに。……長くなるみたいでね。一泊してくるから。」
「一日……会えない。」
ジレーネ公爵との泊まり込みの会談の事を伝えるとポロッとまたティモの瞳から涙が溢れた。
寂しいとホロホロ泣くティモを前にレナードがニコニコとこちらを見てくる。その顔はわかってますよと言いたげ。
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「………何で言いたい事が分かった。まだ俺のとこ来て二日だよな、レナードは。」
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俺はもうただただ苦笑いを溢すしか出来ない。
ああ、そうだよ…。俺は滅法、この涙に弱い。
その上、涙の理由が寂しいからなんて言われてしまえば、折れるしかないだろうがッ。
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