10 / 27
もらって嬉しいもの
しおりを挟む
プレゼント。
それはもらって嬉しいもの。
相手を喜ばせるのが目的であり、相手を苦しめる為にやるものではない。
そう少し前にティモからもらったカブトムシの兜を磨きながら、また執務室を埋め尽くすプレゼントの山を見て思った。
「凄さ、プレゼントの量…。」
ティモが感嘆の声を漏らし、キラキラとした目でプレゼントの山を見る。
昨日の剣術の稽古で筋肉痛になってしまった足でヒョコヒョコと山に近付き、クルクルとその周りを回り、また感嘆の声を漏らす。
「これが…王族の誕生日さ、祝い方。……すみません。私、知らなくてプレゼント用意さ、してません。」
「……言っとくけど、今日は誕生日じゃない。俺の誕生日は半年後だし、俺の誕生日は母さんのお祝いの舞と母さんの祖国の人達が俺の誕生日にかこつけて酒飲んで踊って勝手に楽しむ日だから。」
「国全体がツェーンの誕生日さ、お祝い、してくれるんですか!! 」
「や、…だから、かこつけて酒飲んで騒ぎたいだけなんだって。あの人達は毎日、騒ぐ口実を欲しいだけで。」
何時だってあの島国は騒ぐ口実を探している。
あの島国の王族一人一人の誕生日が祝日だし。子供の乳歯が抜けて大人の歯が生えただけで親戚全員集合して朝から晩まで踊り騒ぐ。そんなお国柄。祝うという目的よりも騒ぐ事が最早、目的となっている。
まぁ、それは置いといて…。
「返却で。」
「え? またですか!? 」
「まだツンツン期は続くのですか…。『固く閉ざされた心。プレゼント作戦、散る!! 』」
「二人の溝は深海のように深い…。」
とても残念そうで、何処か期待したような表情でチラチラとこちらを見ながら第三妃から寄越された例の侍従達……。長いな。もう妄想トリオでいいや…。妄想トリオがプレゼントを片付ける。
果たして彼等が俺に何を期待しているのだか…。まぁ、俺は全く興味がないし、知りたくもないが。
「…まぁ、プレゼントの内容が女性が喜びそうなものでしたからね。」
ちょっと寂しそうにプレゼントの山を見送るティモの隣で第一妃が寄越した侍従レナードが冷めた目でプレゼントを見送る。
いきなり手のひらを返した国王陛下からの贈り物っていうのも返却する理由の一つであるが、レナードの言う通り、あれは女性向けに考えた内容のプレゼント構成だ。服や宝飾品のデザインも全く俺の趣味じゃないものばかり。
何を思って国王陛下が俺にプレゼントを送ってきてるかは分からない。が、あの人が十人もいた息子の誰にも誕生日プレゼントすら贈った事がないのは知ってる。
どういう風の吹き回しかは本当に分からないし、興味がない。
寧ろ、要らないプレゼントくれるくらいなら国外追放やら王族位剥奪とかそういう事してくれた方がありがたい。
「でも、家族からツェーンがプレゼントさ、もらってるの初めて見たのに…。」
ティモが俺の手をにぎにぎしながらしゅんとする。
純粋に喜んでくれたティモにちょっと悪かったかなと思い、
「大丈夫。ティモがくれたカブ一号(カブトムシの名前)で充分俺は嬉しいから。」
と微笑み掛けると、ソワソワし始め、顔を真っ赤にして俯いた。
「……こ、これからは私がいっぱいプレゼントさ、あげるから。」
「? …プレゼントならもう結構もらってるだろ。カブ一号用の腐葉土とか。」
「ふぁ!? …うぅ。カブトムシと腐葉土だけで、こんだけさ、喜んでくれるなんて。やっぱり、俺は前世でどれだけ善行さ、積んだんだろ…。」
「………一国の王子が一番もらって喜ぶものがカブトムシと腐葉土。」
また一人称が俺に戻り、手をにぎにぎする速度が上がるティモ。
四人の侍従は苦笑いを浮かべてこちらを見ているが、カブトムシと腐葉土の何がいけない?
磨いていたカブ一号をケースに戻し、立派な角とその光沢に思わず見惚れる。
かっこいいじゃないかカブトムシ。
初めてティモが野山で捕まえてくれた時は、このかっこよさに驚いたものだ。
何よりカブトムシのオスはクワガタやカマキリと違い、ご丁寧に持ってくれと言わんばかりの取っ手がある。
取手ではなく、小さな角でこの角と大きな角で挟んで相手を投げるんだと興奮気味にティモが語っていたが、それでもやっぱり俺の中ではこれは取手だ。
かっこよくて簡単に誰でも持てるなんて素晴らしい。
俺はこのカブトムシの造形が好きだ。
誰が何と言おうとカブトムシはかっこいい。
それにティモが言ってた。
男はみんなカブトムシが好きだって。
それはもらって嬉しいもの。
相手を喜ばせるのが目的であり、相手を苦しめる為にやるものではない。
そう少し前にティモからもらったカブトムシの兜を磨きながら、また執務室を埋め尽くすプレゼントの山を見て思った。
「凄さ、プレゼントの量…。」
ティモが感嘆の声を漏らし、キラキラとした目でプレゼントの山を見る。
昨日の剣術の稽古で筋肉痛になってしまった足でヒョコヒョコと山に近付き、クルクルとその周りを回り、また感嘆の声を漏らす。
「これが…王族の誕生日さ、祝い方。……すみません。私、知らなくてプレゼント用意さ、してません。」
「……言っとくけど、今日は誕生日じゃない。俺の誕生日は半年後だし、俺の誕生日は母さんのお祝いの舞と母さんの祖国の人達が俺の誕生日にかこつけて酒飲んで踊って勝手に楽しむ日だから。」
「国全体がツェーンの誕生日さ、お祝い、してくれるんですか!! 」
「や、…だから、かこつけて酒飲んで騒ぎたいだけなんだって。あの人達は毎日、騒ぐ口実を欲しいだけで。」
何時だってあの島国は騒ぐ口実を探している。
あの島国の王族一人一人の誕生日が祝日だし。子供の乳歯が抜けて大人の歯が生えただけで親戚全員集合して朝から晩まで踊り騒ぐ。そんなお国柄。祝うという目的よりも騒ぐ事が最早、目的となっている。
まぁ、それは置いといて…。
「返却で。」
「え? またですか!? 」
「まだツンツン期は続くのですか…。『固く閉ざされた心。プレゼント作戦、散る!! 』」
「二人の溝は深海のように深い…。」
とても残念そうで、何処か期待したような表情でチラチラとこちらを見ながら第三妃から寄越された例の侍従達……。長いな。もう妄想トリオでいいや…。妄想トリオがプレゼントを片付ける。
果たして彼等が俺に何を期待しているのだか…。まぁ、俺は全く興味がないし、知りたくもないが。
「…まぁ、プレゼントの内容が女性が喜びそうなものでしたからね。」
ちょっと寂しそうにプレゼントの山を見送るティモの隣で第一妃が寄越した侍従レナードが冷めた目でプレゼントを見送る。
いきなり手のひらを返した国王陛下からの贈り物っていうのも返却する理由の一つであるが、レナードの言う通り、あれは女性向けに考えた内容のプレゼント構成だ。服や宝飾品のデザインも全く俺の趣味じゃないものばかり。
何を思って国王陛下が俺にプレゼントを送ってきてるかは分からない。が、あの人が十人もいた息子の誰にも誕生日プレゼントすら贈った事がないのは知ってる。
どういう風の吹き回しかは本当に分からないし、興味がない。
寧ろ、要らないプレゼントくれるくらいなら国外追放やら王族位剥奪とかそういう事してくれた方がありがたい。
「でも、家族からツェーンがプレゼントさ、もらってるの初めて見たのに…。」
ティモが俺の手をにぎにぎしながらしゅんとする。
純粋に喜んでくれたティモにちょっと悪かったかなと思い、
「大丈夫。ティモがくれたカブ一号(カブトムシの名前)で充分俺は嬉しいから。」
と微笑み掛けると、ソワソワし始め、顔を真っ赤にして俯いた。
「……こ、これからは私がいっぱいプレゼントさ、あげるから。」
「? …プレゼントならもう結構もらってるだろ。カブ一号用の腐葉土とか。」
「ふぁ!? …うぅ。カブトムシと腐葉土だけで、こんだけさ、喜んでくれるなんて。やっぱり、俺は前世でどれだけ善行さ、積んだんだろ…。」
「………一国の王子が一番もらって喜ぶものがカブトムシと腐葉土。」
また一人称が俺に戻り、手をにぎにぎする速度が上がるティモ。
四人の侍従は苦笑いを浮かべてこちらを見ているが、カブトムシと腐葉土の何がいけない?
磨いていたカブ一号をケースに戻し、立派な角とその光沢に思わず見惚れる。
かっこいいじゃないかカブトムシ。
初めてティモが野山で捕まえてくれた時は、このかっこよさに驚いたものだ。
何よりカブトムシのオスはクワガタやカマキリと違い、ご丁寧に持ってくれと言わんばかりの取っ手がある。
取手ではなく、小さな角でこの角と大きな角で挟んで相手を投げるんだと興奮気味にティモが語っていたが、それでもやっぱり俺の中ではこれは取手だ。
かっこよくて簡単に誰でも持てるなんて素晴らしい。
俺はこのカブトムシの造形が好きだ。
誰が何と言おうとカブトムシはかっこいい。
それにティモが言ってた。
男はみんなカブトムシが好きだって。
12
お気に入りに追加
322
あなたにおすすめの小説

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま


続・聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。
あらすじ
異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

君と秘密の部屋
325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。
「いつから知っていたの?」
今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。
対して僕はただのモブ。
この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。
それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。
筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる