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番外編
王都にて②
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やはり仕事中にイチャイチャされると腹が立つ。
あの二人に触発されてかローレン王太子のジョゼフを見る目に更に熱が帯びていく。
「少し出てきますので、シャルロッテ侯爵をどうにかしてください。」
そう声を掛けて呆れつつ謁見の間から出た。しかし、レオノールの横を通り過ぎて行く人達はレオノールの表情を見て目を丸くした。
何時もの彼なら浮かべない緩んだ表情をしていたからだ。
その脚でレオノールは騎士団の屯所に赴くと鍛錬場では未来の騎士団長が新人の稽古の相手をしていた。そんな彼が稽古の相手を終えるまでその姿を焼き付けるように見ながら待ち、終わると彼をレオノールは手招きした。
彼はそんなレオノールの元に嬉しそうに駆けてきた。
「珍しいな、レオがこの時間に鍛錬場に来るなんて。」
「ちょっとした気の迷いだ。あんだけ目の前でイチャイチャされると腹が立つ。」
胸ぐらを掴みシュヴェルトを引き寄せようとするがびくともしない。少し苛立ちつつもしゃがめと手でジェスチャーしたがこのアホは察してくれない。
「……ちょっとしゃがめ。」
「何で? 」
「それを俺に言わせるな。黙ってしゃがめ。」
シュヴェルトは頭にはてなマークをいっぱい浮かべながらもあまりにもレオノールが顔真っ赤にして必死なので、察するという事を知らないシュヴェルトも流石にしゃがんだ。
シュヴェルトの頰に手を滑らせるとしっとりと濡れていた。シュヴェルトの肌に触れていると胸がギュッと熱くなった。
一生この想いが届かないと思ってた。
傀儡の分際でこの何処までもアホで真っ直ぐで、しがらみなんか関係なく接してくれるこのアホを手に入れる事なんて出来ないと思ってた。
ずっと父のしがらみの中で生きて行くんだと諦めていた。
「愛してるんだ。この幸せが夢で何時か覚めてしまうんじゃないかって怖くなる程。愛してるんだ。」
蚊の鳴くような小さな声でそう呟くと、そっと唇を寄せた。アホの唇は少し乾いていてちょっとささくれてて痛いけど、あったかくて心が震えそうになる。
そっと唇を離そうとすると後頭部を手で押さえられて、先程よりも深くレオノールの全てを絡めとるような口付けを何度もかわした。
こんなに長く口付けされ返されると思っていなかったレオノールは息が上がり、シュヴェルトの腕の中にもたれかかった。汗ばんで少し冷えた腕が熱くなった体には心地いい。
「夢じゃない。でも夢だとしても俺は何度でもレオに会いに行くし、どんなにレオが拒否してもずっと側にいてレオの可愛い姿を見て、触ってたい。」
そう無邪気に笑うシュヴェルト。
何時までもその無邪気さとアホさと優しさは変わらない。だが、レオノールに向ける愛情はきっと以前なんか比べものにならない程確実に深まっている。
「カイルがマンネリは駄目だって言ってた。やっぱ、エリアスにまた来てもらって……。」
「それは絶対止めろッ。」
「でも俺のがマンネリだから心配に…。」
「断じて違うッ。だから気の迷いだって言ってんだろこのアホ!! 」
逃げるように仕事に戻ろうとしたが、そもそも騎士のシュヴェルトに力では敵う筈もなく、ヒョイッと俵のように持ち上げられた。
「!? 待て……。まさか、このまま……。」
「愛はきちんと行動で示すべきだってこの前泣きながらカイルが言ってたからな。」
「ふざけんなッ。今日やっとベッドから起き上がれるようになったんだ。大体仕事が…ゃんッ……何処触ってんだ!? 」
こうと決めたらシュヴェルトは止まらない。
そしてレオノールはやはり押しに弱い。本気で拒否していない事が分かってるのでシュヴェルトはこの素直じゃない嫁が愛おしくてしょうがない。
「仕事をしろッ。この次期馬鹿騎士団長ッ!! 」
「おう。一ヶ月は離さないって今決めた!! 」
「い、一ヶ月!? 」
二人は騎士団寮の中に消えていった。
その後、流石にローレン王太子に「頼むから程々にしてくれ。仕事にならない。」と懇願されたが、シュヴェルトにはあまり効果はなかったとか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんちゃってキャラ紹介
レオノール・デーゲン
ツンデレ苦労人の宰相。旦那の暴走を止められず、何時も巻き込まれる。しかし、それがレオノール自身が本気で拒絶してないからだという事に本人は気付いていない。
シュヴェルト・デーゲン
時期騎士団長。最近はあまりエリアスを頼っていない。アホだが相手の気持ちは汲み取れるので本当に嫌がる事はしない。
カイル
シュヴェルトの先輩騎士で最近は部下。嫁さんの自身への対応が最近冷たく、マンネリかもしれないと色々試したが、あまりにも回りくどく、「もっと分かりやすく行動示しなさいよッ!! 」と嫁さんに胸ぐら掴まれキレられた。
あの二人に触発されてかローレン王太子のジョゼフを見る目に更に熱が帯びていく。
「少し出てきますので、シャルロッテ侯爵をどうにかしてください。」
そう声を掛けて呆れつつ謁見の間から出た。しかし、レオノールの横を通り過ぎて行く人達はレオノールの表情を見て目を丸くした。
何時もの彼なら浮かべない緩んだ表情をしていたからだ。
その脚でレオノールは騎士団の屯所に赴くと鍛錬場では未来の騎士団長が新人の稽古の相手をしていた。そんな彼が稽古の相手を終えるまでその姿を焼き付けるように見ながら待ち、終わると彼をレオノールは手招きした。
彼はそんなレオノールの元に嬉しそうに駆けてきた。
「珍しいな、レオがこの時間に鍛錬場に来るなんて。」
「ちょっとした気の迷いだ。あんだけ目の前でイチャイチャされると腹が立つ。」
胸ぐらを掴みシュヴェルトを引き寄せようとするがびくともしない。少し苛立ちつつもしゃがめと手でジェスチャーしたがこのアホは察してくれない。
「……ちょっとしゃがめ。」
「何で? 」
「それを俺に言わせるな。黙ってしゃがめ。」
シュヴェルトは頭にはてなマークをいっぱい浮かべながらもあまりにもレオノールが顔真っ赤にして必死なので、察するという事を知らないシュヴェルトも流石にしゃがんだ。
シュヴェルトの頰に手を滑らせるとしっとりと濡れていた。シュヴェルトの肌に触れていると胸がギュッと熱くなった。
一生この想いが届かないと思ってた。
傀儡の分際でこの何処までもアホで真っ直ぐで、しがらみなんか関係なく接してくれるこのアホを手に入れる事なんて出来ないと思ってた。
ずっと父のしがらみの中で生きて行くんだと諦めていた。
「愛してるんだ。この幸せが夢で何時か覚めてしまうんじゃないかって怖くなる程。愛してるんだ。」
蚊の鳴くような小さな声でそう呟くと、そっと唇を寄せた。アホの唇は少し乾いていてちょっとささくれてて痛いけど、あったかくて心が震えそうになる。
そっと唇を離そうとすると後頭部を手で押さえられて、先程よりも深くレオノールの全てを絡めとるような口付けを何度もかわした。
こんなに長く口付けされ返されると思っていなかったレオノールは息が上がり、シュヴェルトの腕の中にもたれかかった。汗ばんで少し冷えた腕が熱くなった体には心地いい。
「夢じゃない。でも夢だとしても俺は何度でもレオに会いに行くし、どんなにレオが拒否してもずっと側にいてレオの可愛い姿を見て、触ってたい。」
そう無邪気に笑うシュヴェルト。
何時までもその無邪気さとアホさと優しさは変わらない。だが、レオノールに向ける愛情はきっと以前なんか比べものにならない程確実に深まっている。
「カイルがマンネリは駄目だって言ってた。やっぱ、エリアスにまた来てもらって……。」
「それは絶対止めろッ。」
「でも俺のがマンネリだから心配に…。」
「断じて違うッ。だから気の迷いだって言ってんだろこのアホ!! 」
逃げるように仕事に戻ろうとしたが、そもそも騎士のシュヴェルトに力では敵う筈もなく、ヒョイッと俵のように持ち上げられた。
「!? 待て……。まさか、このまま……。」
「愛はきちんと行動で示すべきだってこの前泣きながらカイルが言ってたからな。」
「ふざけんなッ。今日やっとベッドから起き上がれるようになったんだ。大体仕事が…ゃんッ……何処触ってんだ!? 」
こうと決めたらシュヴェルトは止まらない。
そしてレオノールはやはり押しに弱い。本気で拒否していない事が分かってるのでシュヴェルトはこの素直じゃない嫁が愛おしくてしょうがない。
「仕事をしろッ。この次期馬鹿騎士団長ッ!! 」
「おう。一ヶ月は離さないって今決めた!! 」
「い、一ヶ月!? 」
二人は騎士団寮の中に消えていった。
その後、流石にローレン王太子に「頼むから程々にしてくれ。仕事にならない。」と懇願されたが、シュヴェルトにはあまり効果はなかったとか。
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なんちゃってキャラ紹介
レオノール・デーゲン
ツンデレ苦労人の宰相。旦那の暴走を止められず、何時も巻き込まれる。しかし、それがレオノール自身が本気で拒絶してないからだという事に本人は気付いていない。
シュヴェルト・デーゲン
時期騎士団長。最近はあまりエリアスを頼っていない。アホだが相手の気持ちは汲み取れるので本当に嫌がる事はしない。
カイル
シュヴェルトの先輩騎士で最近は部下。嫁さんの自身への対応が最近冷たく、マンネリかもしれないと色々試したが、あまりにも回りくどく、「もっと分かりやすく行動示しなさいよッ!! 」と嫁さんに胸ぐら掴まれキレられた。
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