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ゲームなんかじゃない
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森の中を茂みを飛び越え、木を避け、走る。
少し足の遅いディーガを置いていかないよう、足の速い金の目に追いつかれないよう調整して走るのは骨が折れる。
少し拓けた所に目印の泉が見え、少し胸をなで下ろす。
そして鞘にしまっていた剣を抜き、木に絡まる一つの蔦を切り落とした。すると木に吊るされた丸太がディーガ達を襲った。
ここの辺りはネズミが魔獣用に設置した罠地帯だ。ディーガは罠に足を止められ舌打ちをしていた。金の目は罠を難なく交わして私の元へ駆けてくる。
ディーガが罠に足止めされたのを皮切りにキツネが剣を抜き、襲い掛かる。リヒトは木の上で新たな罠を作動させている。
そんな二人を一瞥し、私は北東の崖へ向けて走り抜ける。
◇
「罠に捉われた主人を助けなくていいのか、金の目? 」
「俺が欲するものを独り占めしようとする主人に尽くす必要ってある? 」
崖まで付いてきた金の目はニタリと笑う。針を挨拶がわりに放ってきたが、やはり隻眼と隻腕だと前のような実力は発揮できないらしい。動きが前より単調だ。
だが、それでも金の目は強い。
出来れば私を信じてくれるリヒトの為に早く終わらせたいのだが、隻眼と隻腕になってやっと互角の迫り合いが出来ている。
「今回の毒はこの前と違って持続力が上がってるんだよ。この前の毒の味はどうだった? 」
剣のさばき合いをやめ、距離を取った金の目がニンマリと笑う。そして毒に想いを馳せ、金の目の股間が盛り上がる。
本当にコイツは気持ち悪い。
「何度も立てないのに足掻く君の姿は良かったなぁ。本当は抵抗したいのにいいように扱われる姿も最高だった。」
針を投げならが、金の目が自身の世界にトリップする。針を弾き、踏み込むが、短剣と足の先に付いた刃で応戦してくる。
「次は神経が鋭敏になる毒作ろうかな。服が擦れるたびに痛みを伴う程感じて狂ってくのもいいな。」
「次も今もない。」
短剣を絡め取るように剣で流し、金の目の手から奪い落とす。そしてそれが地面に落ちる前に拾い上げ、針を投げようとしていた金の目、目掛けて投げた。
金の目は何とかかわした。だが、投げたと同時に私が突き出した剣には気付かなかった。
胸に突き刺さった剣から金の目の血が伝う。ポタリッポタリッと剣から赤い雫か地面に落ちた。
ー 嫌な殺し方だ。
ゲルダも胸をひと突きだった。
でも目の前の男は何処か楽しそうに笑ってる。
「もう…終わりか。ゲームオーバーか。」
「人生をゲームに例えるな。胸糞悪い。」
剣を抜くと金の目はその場に崩れるように倒れた。不気味にあははっと笑い続け、その笑い声は息絶えるまで続いた。
この世界はゲームじゃない。
ずっと、『花咲く学園で君と』というこの世界に似たBL ゲームに翻弄されて来たが、この世界はゲームではない。
ゲルダは確かに生きていた。
人を愛し、愛されて。
それはゲームのシナリオだからじゃない。ゲルダがゲームの主人公だからじゃない。
ゲルダが、ゲルダ・ファーデンが心を持った人間で、毎日を必死に生きていたから、誰かを慈しみ愛する心を持っていたからリヒトはゲルダを愛した。ゲルダはリヒトを愛した。
それはゲルダがゲームの主人公だからリヒトが攻略対象だからではない。そう私達が設定されて作られたからじゃ決してない。この想いは。
「リヒトは死なせないよ、ゲルダ。貴方が愛したリヒトは。私が愛しているリヒトは絶対に。」
ゼェゼェと息が上がる。
長距離を全力疾走したような疲労感が襲う。必死に息を整えながら私を待つ主人の元へと向かった。
少し足の遅いディーガを置いていかないよう、足の速い金の目に追いつかれないよう調整して走るのは骨が折れる。
少し拓けた所に目印の泉が見え、少し胸をなで下ろす。
そして鞘にしまっていた剣を抜き、木に絡まる一つの蔦を切り落とした。すると木に吊るされた丸太がディーガ達を襲った。
ここの辺りはネズミが魔獣用に設置した罠地帯だ。ディーガは罠に足を止められ舌打ちをしていた。金の目は罠を難なく交わして私の元へ駆けてくる。
ディーガが罠に足止めされたのを皮切りにキツネが剣を抜き、襲い掛かる。リヒトは木の上で新たな罠を作動させている。
そんな二人を一瞥し、私は北東の崖へ向けて走り抜ける。
◇
「罠に捉われた主人を助けなくていいのか、金の目? 」
「俺が欲するものを独り占めしようとする主人に尽くす必要ってある? 」
崖まで付いてきた金の目はニタリと笑う。針を挨拶がわりに放ってきたが、やはり隻眼と隻腕だと前のような実力は発揮できないらしい。動きが前より単調だ。
だが、それでも金の目は強い。
出来れば私を信じてくれるリヒトの為に早く終わらせたいのだが、隻眼と隻腕になってやっと互角の迫り合いが出来ている。
「今回の毒はこの前と違って持続力が上がってるんだよ。この前の毒の味はどうだった? 」
剣のさばき合いをやめ、距離を取った金の目がニンマリと笑う。そして毒に想いを馳せ、金の目の股間が盛り上がる。
本当にコイツは気持ち悪い。
「何度も立てないのに足掻く君の姿は良かったなぁ。本当は抵抗したいのにいいように扱われる姿も最高だった。」
針を投げならが、金の目が自身の世界にトリップする。針を弾き、踏み込むが、短剣と足の先に付いた刃で応戦してくる。
「次は神経が鋭敏になる毒作ろうかな。服が擦れるたびに痛みを伴う程感じて狂ってくのもいいな。」
「次も今もない。」
短剣を絡め取るように剣で流し、金の目の手から奪い落とす。そしてそれが地面に落ちる前に拾い上げ、針を投げようとしていた金の目、目掛けて投げた。
金の目は何とかかわした。だが、投げたと同時に私が突き出した剣には気付かなかった。
胸に突き刺さった剣から金の目の血が伝う。ポタリッポタリッと剣から赤い雫か地面に落ちた。
ー 嫌な殺し方だ。
ゲルダも胸をひと突きだった。
でも目の前の男は何処か楽しそうに笑ってる。
「もう…終わりか。ゲームオーバーか。」
「人生をゲームに例えるな。胸糞悪い。」
剣を抜くと金の目はその場に崩れるように倒れた。不気味にあははっと笑い続け、その笑い声は息絶えるまで続いた。
この世界はゲームじゃない。
ずっと、『花咲く学園で君と』というこの世界に似たBL ゲームに翻弄されて来たが、この世界はゲームではない。
ゲルダは確かに生きていた。
人を愛し、愛されて。
それはゲームのシナリオだからじゃない。ゲルダがゲームの主人公だからじゃない。
ゲルダが、ゲルダ・ファーデンが心を持った人間で、毎日を必死に生きていたから、誰かを慈しみ愛する心を持っていたからリヒトはゲルダを愛した。ゲルダはリヒトを愛した。
それはゲルダがゲームの主人公だからリヒトが攻略対象だからではない。そう私達が設定されて作られたからじゃ決してない。この想いは。
「リヒトは死なせないよ、ゲルダ。貴方が愛したリヒトは。私が愛しているリヒトは絶対に。」
ゼェゼェと息が上がる。
長距離を全力疾走したような疲労感が襲う。必死に息を整えながら私を待つ主人の元へと向かった。
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