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王都組⑭

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ひたすらジョゼフが困惑している。

ポカンッと口を開けて固まったり、パクパク驚いて口を開閉させて手を空中で彷徨わせたり、その一連の動作をずっと繰り返している。

そんなジョゼフを見ながら顔を真っ赤にしつつも未だ情熱的にジョゼフを見つめるローレン。

そしてその仄暗い話数割、甘酸っぱさ七割の話を聞きながらお茶を飲む僕。

聞いて欲しいとは言われたがかなり場違いなのは自分でも分かってる。…だが、僕は…僕はヴィルマにこういうのは鍛えられている。耐性があるのでちょくちょく「キャッ。」とそのほぼ愛の告白の話を聞きながらそう叫びそうになるのを抑えている。

ヴィルマにこの内容話したい。
一緒にお茶飲みながら語り合いたい。
今日は甘いお菓子と恋バナでオールナイトです。


ジョゼフがやっと喉から声を搾り出し、ローレンをしっかりとその目は見つめる。

「……ずっと、辛かった。俺にとってはアレは傷としてずっと残ってる。」

「分かってる。詫びても詫びきれない事をした。」

「あの誓いは…、あの呪いは…まだ俺の身体の中に巣食ってる。まだ蝕んでる。」

「ああ、俺はやってはいけない事をした。それがやっとこの前本当の意味で分かった。あのリヒトの処断で…。」

花びらの舞降る光景がふと僕の脳裏に浮かぶ。

僕もあの光景を大広場で見ていた。
皆、「美しい。」と花びらに手を伸ばし、新たに生まれた『従騎士』に想いを馳せていた。しかしその美しい光景よりも僕の目に強く残ったのはシュネーの並々ならぬ覚悟を感じさせる表情だった。

処断の場でリヒト元王子に『従騎士の誓い』を立てたシュネー。リヒト元王子の為に全てを捨てる覚悟でそこに立っていた。

だからきっとあの誓いは成立したのだと僕は思う。あの大量の花びらが降ったのもシュネーの覚悟の表れだ。

「……アレは無理矢理誓わせるものじゃない。全てを主人の為に捨てて初めて成立する誓いだ。」

ローレンが少し震える手でカップを持ち、心を落ち着かせるように紅茶を飲んだ。そしてあの光景を尊ぶかのような少し羨むかのような複雑でそれでいて少し優しい表情を浮かべた。

「親友だって恋人だって夫婦だってアレは無理だ。本当に…死なせたくなかったのだろうな。シュネー・フリューゲルは。」

ジョゼフがその名を聞いて、ヤケを起こしたように口の中にお菓子を放り込む。

「アイツはいとも簡単にそうやって飛び込めるから困るんだよ。こっちの心配をよそに走って行ってしまうから困る。…何時そんなにリヒト元王子と仲良くなったのか。知っていれば後追い紛いなんてさせなかった。」

「…仲がいいのだな。」

「当たり前だ。アイツのお陰でちょっと吹っ切れた所があるんだ。アホな弟よりよっぽど可愛がってるわッ!! それなのに相談しないわ。遠慮するわ。…で、やっとしてきたお願いが『リヒト元王子を死なせたくないから一緒に行きます。冤罪解くのは任せました。』だ。……もっとそうなる前に早く相談しろよ!! しかも解けなくても『しょうがないかな…。』とでも思ってそうだからタチが悪いッ。お前は走って行く前に人を頼るって事覚えろってんだッ!! 恩返す前に死なれてたまるかッ!! 」

ジョゼフがガッと紅茶でお菓子を胃に流し込む。ローレンがそんな姿を見て、少し嬉しそうに微笑んだ。

「俺が後ろ盾になればお前の友を救えるのだな。」

「ああ、そーだよ、。」

「…ッ。そうか…。」

ローレンの少し泣きそうな幸せそうな表情を浮かべた。ジョゼフは何故そんな表情を浮かべたかよく分かっていないようで首を傾げた。

きっとこの二人はここからまた歩き始めるのだろう。止まっていた二人の時間がここから動き始めるのだろう。それがローレンの望むものになるかは分からない。

「めでたしめでたしって言いたい訳? 」

………帰ってきた猛毒フェルゼンが勝手に僕の分のお菓子を摘む。

「……ブルーノは。」

「知りたい? 」

にっこりとフェルゼンが嗤う。
僕は全力で首を横に振る。
もげるかってくらい首を振る。


その後、一度だけ僕はブルーノにあった。会ったけど…うん…、僕は今無償にヴィルマに会いたい。ブルーノがどうなったかはご想像にお任せします。

ーーーーーーーーーーーーーーー

なんちゃってキャラ紹介

カール・アーバイン
女装癖と乙女心を持つ伯爵子息。甘酸っぱい恋バナは大好物。

ジョゼフ・デーゲン
騎士団長の息子で騎士団長補佐。シュネーの良き友。デーゲン家は基本鈍感。

ローレン王太子
フォルメルン王国の王太子。実はリヒトの事は自分の欲しいものを持っていってしまう点以外は嫌いではない。別に破滅して欲しいとも思っていない。

フェルゼン・ハースト
シュネーの事になると容赦のないシュネーの元兄。ある意味エリアスより容赦がない。

ブルーノ・ベルンハルト
ローレンに気のある我儘な公爵子爵。実はローレンのルートでの悪役。彼がどうなったかはご想像にお任せします。

ヴィルマ・イーリス
なんちゃって男爵令嬢。カールの婚約者。こんなんでもカールにとっては心の支えです。こんなんでも。
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