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心の中で膨らむもの

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ぼうっと熱に浮かされた頭がリヒトを求める。

リヒトを求めて顔を上げるとリヒトの柔らかい唇が私の唇を奪う。あまりの気持ち良さに口を開けると口の中に暖かな舌が入り込み、私の中を撫でる。それがまた心地よくて満たされて思わず頰から涙が伝う。

「シュネー。そろそろココの奥も触るね。」

伝う涙をチュッと吸いながらリヒトが最近ヤケに触ってくる排泄する目的にある穴を縁を撫でる。

「ひゃッ…あ。あッ……イッ!? 」

また深く唇を重ねて、首筋を撫でながら出すだけの筈の部分に指を差し込む。少し指の先端を差し込まれただけだが、違和感と痛みに腰が逃げる。しかし、リヒトの指が抜ける事はなく、ほぐすように中を撫でる。

優しくまるで壊れ物を触るかのように撫でるその手付きに次第に痛みと違和感が解れていく。

「シュネーはいい子だね。大丈夫。何も考えなくていいから。ただ、僕を感じて。」

そう言ってゆっくりと日が増すごとにリヒトの優しくて暖かな指が私の中を掻き回す為に増えていく。

『何も考えなくていい。』っと言うが、それは流石に無理というもの。

次の朝にはまだ指の感触の残る中が疼いて怖くなる。

ー 何をやっているのだろう。

リヒトの指を求め始めているソコを。
もっと触れてほしいと叫ぶ心を。
怖くて怖くてたまらない。

「だって…私は…、それが怖くて逃げて……。」

私の身体はあの日のエリアスのようになってしまったのではないか。
そう思うとそれが怖くてしょうがない。

でも、暖かくて、満たされていて、心地よくて。
それがもっと欲しいと思ってしまって。

心がぐちゃぐちゃになる。
訳が分からなくてそれが怖くて。
でも、でもリヒトから離れたくなくて、

それで…それで……。


「リヒト。起きて。」

そして恋人みたいな口付けをリヒトにして、一日が始まる。


ずっと寝ぐらの中にいる時間はまるで時が止まったようで、私はずっとリヒトとの関係を考える。

私はリヒトの『従騎士』だ。
関係は護衛と主人。
だから今の状況が分からない。

リヒトには恋人がいた。
ゲルダ・ファーデン。
リヒトの恋人で、私の友人。

ゲルダはとても優しくて人の幸せを願える人で、リヒトと幸せを掴む筈だった。しかし、宰相達の企みの所為で幸せを掴む前に凶刃の前に命を落とした。

リヒトはその死に絶望して、冤罪すらも受け入れて死のうとした。ゲルダを追う為に。

今は何故だか前を向いてくれているがきっとゲルダの死は今もリヒトの中で重く残り、死んだ事でその存在は更に大きくなったのではないだろうか。 

だって『あの子』は死んでも生まれ変わっても尚、『妹』の死が忘れられなかったのだから。


なら今のこの状況は何なのだろうか。
私はリヒトの何なのだろうか。
リヒトは私に何を求めているのだろうか。
私はリヒトに何を求めているのだろうか。


「シュネー。」

リヒトが私の名を呼ぶ。
私の最近好きな甘い卵焼きと味噌汁と米を用意してにこやかに笑う。

最近覚えた『箸』という『妹』も使っていたもので器用にリヒトが米を掬い食べる。

「今日はネズミに会いに行くんだよね。」

「そう…ですね。もう二ヶ月だ。」

やっと二ヶ月。
外に出られる嬉しさと意味の分からぬ寂しさが込み上げる。

この二ヶ月はそれ程濃厚だった。



ネズミのお見舞いに行くとケラケラと笑っている。

私達を見た瞬間、さも愉快そうに「ざまぁ、ヤマネコ!! してやったりッ。」と腹を抱えて笑う。

どうした!?

「あー、腹イッテェ。さっすがぁシュネッち。流石、ネズミ様。オイラ達の勝利でい!! このまま勝ち進んで行こー。」

「何が勝ちだ。貴方の家燃えたぞ。」

「気にしてんのぉ? 大丈夫大丈夫ッ!! オイラの家、後、五つあるから。ヤマネコがねちっこいから念の為に三ヶ月に一回、六つの寝ぐらをローテーションしてんのオイラ。いやぁ、ストーカって怖いねぇ。」

「ストーカ……。」

「リヒッちゃん、オイラもモテんのよ。モテる男って辛いよね、シュネッち。」

「…私に振るな。」

怪我人なのにどこまでも元気なネズミ。まだ後一ヶ月は家に帰らないらしい。

オマエ、十分元気だよ。

そんな姿に溜息をつくとネズミがまた手を出せと催促してくる。

まさかまた二ヶ月違う寝ぐらで!? 
そろそろ辛い!!

分かってるよ。
これは大切な事だし、ネズミは態々私を助けてくれる為に動いてくれている。

でもね。
もうこれ以上二人きりだと、どうなるか分からなくて怖いんだって。


複雑な表情を浮かべる私を見て、耳にコソッとネズミが楽しそうに話しかける。

「随分と色っぽくなったね、シュネッち。憂う表情が儚げで、色香があって、逆に心配になるんでい。困ってんならお兄さん相談してみない? 」

「うるさい。絶対面白がってるだろう。」

「あーらぁ。分かっちゃう? でも、話して心が軽くなる事もあるっしょ。」

スルスルと手に次の潜伏先を書きながら人を弄る。

人を弄ってくる相手に相談なぞしたくない。そもそも自身の心に整理が付いてないのに人に話せる訳がない。
後、お兄さんぶるな。

ひらひらと「今度は一ヶ月後」っと手を振り、私達を追い返す。

いや、頼むからもうちょっと居させろよ。
きっとリヒトも積もる話があるよ。多分。
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