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星空と王子
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星が降ってきそうな雲ひとつない夜空。
思わず外で星が見たくなって騎士団の鍛錬場で日課の素振りをしながら夜空を眺めた。
キラキラと瞬く星々は赤や黄など白以外の光にも輝いていて、その美しさについ素振りする手を止めていた。
前世を思い出してからそう言えばまともに星も眺めた事も無かった。
勿体ない事をしてたなと草むらに寝っ転がり、星空を眺めた。すると横からスイッとクッキーが差し出される。
「暇なら僕を匿って? これは賄賂。」
ニッコリと人畜無害そうな笑みを浮かべて、幸せそうなオーラを纏った王子は私の横に腰を落とした。
「また、逃走ですか? 」
「ちょっとね。息抜き。」
何年前かにやったやり取り。
クッキを一口齧るとあの時のように口の中でふわっと解け、優しい甘さだけ残した。
「シュヴェルトなら自室ですよ。」
「君に会いに来たんだよ。」
このやり取りが面白かったのか楽しそうにリヒト王子が笑う。そしてあの時のように私の髪を一房、持ち上げた。
「汗かいてて臭いですよ。」
「そんな事ないよ。前にも言ったけどシュネーの髪の色は雪みたいに真っ白だから見ていて落ち着くんだよ。」
「そうですか。」
「うん、これも前にも言ったけど僕は雪の日が好きでね。何でか雪見るとホッと心が軽くなるんだよ。何故か心が温かくなるんだ。」
フワッと優しい笑みがリヒト王子の顔に浮かぶ。
「今年は雪降らないかな。」
「雪降ると雪かきが面倒なのでお断りします。」
少し夜闇の色に染まった黄金色の髪が夜風になびく。空のように青い瞳が今は夜空の星を映し取っていた。
やはりその姿には王子らしい華もオーラもないが、やはり何処までも穏やかで優しい雰囲気を纏っている。
ー ホント、王子が似合わないなこの人。
星空を映し取った目がこちらを見つめる。やはり私は物欲しそうな目をしていたのかリヒト王子が自身の分を差し出す。
「シュネーはハースト家を出たから今はただのシュネー? 」
「そうですね。ハーストはもう名乗れませんね。」
「なら僕が君に姓をあげていい? 」
「は? 」
ニコッと悪戯な笑みを浮かべる。この人は本当にゲルダと会って色んな表情を浮かべるようになったんだなぁと思ったのも束の間…姓をあげるってどういう事!?
「僕が君の姓を考えて良い? 僕が申請出して通すから。」
「…それの対価はいったい何ですか。それ、きっとタダじゃないですよね。王子が平民に姓を与えるって…。」
更に笑みを深める。
この人、性格悪くなったか?
愛は人を変えるのか!?
警戒して一歩距離を取ると「冗談だよ。」と笑われた。
やっぱり、人が悪くなった。
「シュネー・フリューゲルってどう? フリューゲルは翼って意味で、これからシュネーが自由に何処までも飛んでいけるようにって想いを込めて…。」
「冗談って言ったじゃないですか!? 雪に例えられて白百合になって次は翼ですか。…お断りします。」
「対価を払うっていうのが冗談だからもらってよ。……対価じゃなくてお願いならあるけどね。」
「対価じゃなくてもお願いがあるのですか…。」
王族のお願い程怖いものはない。
一体何に巻き込まれるんだと身構えているとリヒト王子は私の手を持つ剣を触った。突然過ぎで同性に触られているという事実もトラウマも吹っ飛んだ。
「何時かで良いんだ。何時か僕の剣になってくれない? シュネー・フリューゲル。」
「翼付けたのにすぐに籠の中ですか?翼の次は剣になるのですか…。」
「無理強いはしない。断っても良い。『従騎士』になれとは言わないし、他の仕事の掛け持ち程度でも良い。」
「掛け持ちって、部活じゃないんだから。」
話を逸らす為に茶化すと余計真剣な目が私を貫くように見る。
こんな目が出来る人だったっけ。
「僕には君が必要だ。君は僕に足りないものをいっぱい持っているから。……僕は変わるよ、シュネー・フリューゲル。君や周りが付いていきたいと思える王子になるように。」
星空の下、誰よりも王子に向いていないその人はそう力強く宣言した。本当に愛や恋ってどれだけ人を変えるのか。
「フリューゲル…ね。」
そして三週間後一通の手紙が届く。
姓、フリューゲルの承認証が届き、本当に私は正式に『シュネー・フリューゲル』になってしまったのだ。
愛は人を変えるというけれど
ホント、愛の力って怖い。
思わず外で星が見たくなって騎士団の鍛錬場で日課の素振りをしながら夜空を眺めた。
キラキラと瞬く星々は赤や黄など白以外の光にも輝いていて、その美しさについ素振りする手を止めていた。
前世を思い出してからそう言えばまともに星も眺めた事も無かった。
勿体ない事をしてたなと草むらに寝っ転がり、星空を眺めた。すると横からスイッとクッキーが差し出される。
「暇なら僕を匿って? これは賄賂。」
ニッコリと人畜無害そうな笑みを浮かべて、幸せそうなオーラを纏った王子は私の横に腰を落とした。
「また、逃走ですか? 」
「ちょっとね。息抜き。」
何年前かにやったやり取り。
クッキを一口齧るとあの時のように口の中でふわっと解け、優しい甘さだけ残した。
「シュヴェルトなら自室ですよ。」
「君に会いに来たんだよ。」
このやり取りが面白かったのか楽しそうにリヒト王子が笑う。そしてあの時のように私の髪を一房、持ち上げた。
「汗かいてて臭いですよ。」
「そんな事ないよ。前にも言ったけどシュネーの髪の色は雪みたいに真っ白だから見ていて落ち着くんだよ。」
「そうですか。」
「うん、これも前にも言ったけど僕は雪の日が好きでね。何でか雪見るとホッと心が軽くなるんだよ。何故か心が温かくなるんだ。」
フワッと優しい笑みがリヒト王子の顔に浮かぶ。
「今年は雪降らないかな。」
「雪降ると雪かきが面倒なのでお断りします。」
少し夜闇の色に染まった黄金色の髪が夜風になびく。空のように青い瞳が今は夜空の星を映し取っていた。
やはりその姿には王子らしい華もオーラもないが、やはり何処までも穏やかで優しい雰囲気を纏っている。
ー ホント、王子が似合わないなこの人。
星空を映し取った目がこちらを見つめる。やはり私は物欲しそうな目をしていたのかリヒト王子が自身の分を差し出す。
「シュネーはハースト家を出たから今はただのシュネー? 」
「そうですね。ハーストはもう名乗れませんね。」
「なら僕が君に姓をあげていい? 」
「は? 」
ニコッと悪戯な笑みを浮かべる。この人は本当にゲルダと会って色んな表情を浮かべるようになったんだなぁと思ったのも束の間…姓をあげるってどういう事!?
「僕が君の姓を考えて良い? 僕が申請出して通すから。」
「…それの対価はいったい何ですか。それ、きっとタダじゃないですよね。王子が平民に姓を与えるって…。」
更に笑みを深める。
この人、性格悪くなったか?
愛は人を変えるのか!?
警戒して一歩距離を取ると「冗談だよ。」と笑われた。
やっぱり、人が悪くなった。
「シュネー・フリューゲルってどう? フリューゲルは翼って意味で、これからシュネーが自由に何処までも飛んでいけるようにって想いを込めて…。」
「冗談って言ったじゃないですか!? 雪に例えられて白百合になって次は翼ですか。…お断りします。」
「対価を払うっていうのが冗談だからもらってよ。……対価じゃなくてお願いならあるけどね。」
「対価じゃなくてもお願いがあるのですか…。」
王族のお願い程怖いものはない。
一体何に巻き込まれるんだと身構えているとリヒト王子は私の手を持つ剣を触った。突然過ぎで同性に触られているという事実もトラウマも吹っ飛んだ。
「何時かで良いんだ。何時か僕の剣になってくれない? シュネー・フリューゲル。」
「翼付けたのにすぐに籠の中ですか?翼の次は剣になるのですか…。」
「無理強いはしない。断っても良い。『従騎士』になれとは言わないし、他の仕事の掛け持ち程度でも良い。」
「掛け持ちって、部活じゃないんだから。」
話を逸らす為に茶化すと余計真剣な目が私を貫くように見る。
こんな目が出来る人だったっけ。
「僕には君が必要だ。君は僕に足りないものをいっぱい持っているから。……僕は変わるよ、シュネー・フリューゲル。君や周りが付いていきたいと思える王子になるように。」
星空の下、誰よりも王子に向いていないその人はそう力強く宣言した。本当に愛や恋ってどれだけ人を変えるのか。
「フリューゲル…ね。」
そして三週間後一通の手紙が届く。
姓、フリューゲルの承認証が届き、本当に私は正式に『シュネー・フリューゲル』になってしまったのだ。
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ホント、愛の力って怖い。
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