寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ

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フェルゼン視点

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僕には僕よりも白くて病弱な弟がいる。

その子は何時もベッドで寝ていて、外で遊びまわる事はなかった。

本当は弟と一緒に外で遊びたかったが、僕はそれを我慢して弟に本を読み聞かせたり、病気の時は率先して看病した。

手の掛かる弟だけどその分可愛かった。

「僕、何時か元気になって兄上を支えます。」

と必死に勉強している姿も、心配掛けまいと好物を我慢してでも出された料理を食べる姿も、全てが健気で愛おしい。

身体が弱くてそれを引け目に感じていたけど、十分僕にとって自慢の弟だった。


弟が死に掛けるまでは。

最初は何時もの夏風邪だった。
弟はよく風邪を引く。だからまた、風邪で寝込んだくらいにしか最初は思わなかった。

高熱にうなされ。
生死を彷徨い。
ついには意識が混濁し始めた。

食事をしなければ、薬を飲まなければ治らないのに弟は弱っていて飲み食いも出来なくなった。

途方にくれた両親は良い医師を探して仕事を放って国を飛び回った。

『死』という文字が頭に浮かぶ。
このままでは弟が死んでしまう。

必死だった。

弟を失いたくなくて、なんとか食事を薬を摂らせようと僕は口の中にそれを含んだ。意識が混濁して何も分からなくなっている弟の口に僕の口からそれを流し込む。

「う…ぁ、ングッ。」

弟の喉がゴクリと動いた。

意識が混濁していても生きる気力はあるようで生きようと必死に飲み込む。

それを何度も毎日繰り返すと弟の容態は段々と良くなり、やっと良い医師と薬を見つけてきた両親によって弟は命の危機を脱した。

弟が元気になった頃には口移しした僕もその病に罹ったが、それでも悔いはない。大好きな弟を救えたのだから。


それから時折、あの出来事がクセになり、寝込む弟の口内を貪るようになった。

青白い顔をして、寝込む弟がその時だけは口内を貪られる息苦しさに桜色に頰を染め、色香が漂う。

どうやって子供が生まれてくるか知らない無垢な弟の口内でいやらしい音が響く。

それをしていると自分の中の何かが満たされていくのを感じた。


「シュネーは僕のだ。他の奴なんかに嫁がせない。」

それと同時に埋まらない独占欲が心の中で蠢きだす。本当はこのまま最後までしたいが、それにはシュネーの身体は脆すぎる。

身体が良くなって、身体が大人として作り変え終わったらだ。きっと十四歳には大人としての身体が出来上がって抱き潰しても壊れない筈。

それまでの辛抱。
それまではシュネーのいい兄でいなければ。それと外堀はきちんと固めよう。僕等の幸せの為に。


淫乱クズエリアスに出会ってしまったのは誤算だった。それにまさか、シュネーに目を付けるなんて。

十四歳になるまでシュネーの見えない所で牽制のしあいが続き、中々シュネーとの時間も取れなくなった。学園でもシュネーと一緒に居るつもりだったのにあの淫乱クズは…。

それに騎士団の連中も気に入らない。

僕のシュネーにベタベタベタベタ。でも一番気に食わないのはゲルダとかいうあの糞だ。

シュネーに助けられた事をいい事に、シュネーが拒絶すると分かってて恋心を隠して近付く。

さっさと振られればいいのに三回も命を懸けて守られて、傷負わせて、自分は悲劇のヒロインのフリして泣きながら看病? 

太々しいにも程がある。

あんな糞がいる学園なんて通わせられない。騎士団にだって居させたくない。

シュネーは僕の隣に居ればいいんだ。

伯爵の座を父からもぎ取り、邪魔になりそうな父と母には遠く穏やかな土地で余生を送ってもらう事にした。侍従達はしばらく休暇を出して、全て落ち着いたら呼び戻そう。

ああ、僕のシュネー。
やっと君が手に入る。
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