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学園寮と不審な動き
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ゴルド・ローゼ学園では四学年から平民でも貴族でも王族でも全寮制になる。しかし例外もあり、騎士として既に働いているものは仕事の両立の為に騎士団寮に入る為、免除になっている。
「…の筈ですよね。」
苦笑いを浮かべると、今年、騎士団長補佐に就任したジョゼフが目を逸らす。学園長は固まる私にあははと誤魔化し笑いを浮かべてお茶を勧める。
「いやぁね。最近、不審者が多いのよ、学園にも寮にも。要人が集まる学園だから独自の警備隊も持っているのだけどねぇーん。」
「政治が介在しない事を理念としているこの学園では警備隊も民間から集めていて基本は巡回が仕事。戦闘出来るものは一握りだそうだ。」
朝一番に学園長室に呼び出され、きな臭い話を聞かされる。嫌だなとは思いつつも今年から不本意ながら無事に騎士に就任したので何があろうと上からの命令なら拒否権はない。
そしてここが一番重要な所。
「っで、私は何故学園寮に入寮するのですか? 騎士団寮もそこまで学園から遠くない。もし警備の手伝いをしろと言うのならそれで十分事足りる筈です。」
ー 何故、免除になったのにエリアスが居る寮なんかに……。
本音では学園寮はエリアスやヴィルマ、この世界の主人公が居るので避けたい。
だからそれらしい意見を出して出来るだけ学園寮回避を目指す。
ジョゼフと学園長が顔を見合わせる。そして二人してポンッと肩に手を置く、諦めろと言わんばかりに。
「戦闘の点もそうなんだけどねぇ。騎士が学園寮に居るっていう事実が必要なのぉ。学園に通っている、学園寮に居ても政治的とは無関係な生徒として学園寮に居るのが当たり前な騎士が。ちょっと夜、散歩がてらに寮を散策する。それが牽制になるのよぉ。」
「私でなくともシュヴェルトやアルヴィンが……。」
「出来るだけ不審者が出ても寮に居る生徒にバレずに穏便に捕らえたいんだ。戦闘狂の二人じゃ、激しく立ち回って騒ぎを大きくしたり、物を壊しかねない。」
私しかいない。
学園寮にも行かなくてはいけない。
二人は私の退路を完全に塞ぐ。
何より学園長がジョゼフの隣で立派な長い髭を乙女が髪をくるくる弄ぶように触りながらジョゼフに色目使っているのが腹立つ。
この学園長からの依頼だけだったら絶対に断っている。だが、先輩で友人で上司であるジョゼフからの仕事だから断れない。くそッ。
結局、学園寮入寮は回避出来ず、私が授業中に警備隊の面々が騎士団寮から私の私物を引っ越しさせる事になった。そういえば、学園入学の時も騎士団に押し切られて騎士団寮に入寮したな…。
最後までジョゼフは申し訳無さそうだった。
「何かあったら必ず言ってくれ。俺が責任を持つ。」
キリリとした目には自信に溢れていて、最近更に頼れる兄貴っていう雰囲気が増してきている。
突き出した拳は信頼の証。
私は一つ息をはいて雑念を掃き捨てると諦めて拳を合わせた。
「……ジョゼさんはシュネーに一番信頼を置いてるからな。」
昼食を食べながら今朝の話をするとアルヴィンがチキンソテー定食をガツガツ食べながらそう言った。
サンドイッチをゆっくり食べていると「…それじゃ少ない。」と勝手に自身のオカズを私の皿にのせてくる。シュヴェルトもジョゼフもそうだが、何かに付けて私の食べる量をサラッと増やしてくる。騎士団寮の食事は矢鱈と量が多いから昼はセーブしたいのだが…。
「……何かあれば言えよ。」
「まあ、個人的に嫌なだけで、仕事は何ら問題ないよ。夜一回見回ればいいだけで、後は警備隊が何時も通りやってくれるし。呼ばれたら加勢すればいいだけだしね。」
アルヴィンがのせてきたチキンをパクリと食べる。するとまたチキンが足される。…何かあってアルヴィンに言いたい事って言えばこれかな。
ー やっと食べ終わったのにまたのせるなよ。
やっとの事で食べ終わり、腹ごなしに中庭を二人で歩いているとカフェテラスから「シュネー!! おーい、こっち、こっち。」という声がした。
カフェテラスを見ると何時ものリヒト王子と『友人』の面々とあまりにも場違いな人が一人混ざっている。
「ゲルダ!? 」
リヒト王子の隣で楽しそうにこちらに手を振るゲルダ。レオノールが大声を上げるゲルダを見て「何だこいつ。」っていう目で呆れている。シュヴェルトは何時も通りで、エリアスは一瞬ゲルダに殺気を飛ばしてた。リヒト王子は少し呆れつつも何時もよりも楽しそうな笑みを浮かべていた。
あのテーブルは危ない。
きっと今、ゲームのシナリオが進行している。カフェテラスの近くの茂みになんちゃって男爵令嬢がいるのも視認した。
ああ、男爵令嬢とは思えない程じゅるりと涎を出して喜んでる。
無視して、この場を離れたい。
手を軽く振り、笑みを返してアルヴィンと立ち去ろうとしたが、ゲルダが走ってきて私をあの危ない空間に連れて行く。
助けを求めてアルヴィンを見たが、アルヴィンはサッと目を逸らして見送った。
アイツ絶対、あの面子に関わるの嫌で私を見捨てたな。くそうッ。
「…の筈ですよね。」
苦笑いを浮かべると、今年、騎士団長補佐に就任したジョゼフが目を逸らす。学園長は固まる私にあははと誤魔化し笑いを浮かべてお茶を勧める。
「いやぁね。最近、不審者が多いのよ、学園にも寮にも。要人が集まる学園だから独自の警備隊も持っているのだけどねぇーん。」
「政治が介在しない事を理念としているこの学園では警備隊も民間から集めていて基本は巡回が仕事。戦闘出来るものは一握りだそうだ。」
朝一番に学園長室に呼び出され、きな臭い話を聞かされる。嫌だなとは思いつつも今年から不本意ながら無事に騎士に就任したので何があろうと上からの命令なら拒否権はない。
そしてここが一番重要な所。
「っで、私は何故学園寮に入寮するのですか? 騎士団寮もそこまで学園から遠くない。もし警備の手伝いをしろと言うのならそれで十分事足りる筈です。」
ー 何故、免除になったのにエリアスが居る寮なんかに……。
本音では学園寮はエリアスやヴィルマ、この世界の主人公が居るので避けたい。
だからそれらしい意見を出して出来るだけ学園寮回避を目指す。
ジョゼフと学園長が顔を見合わせる。そして二人してポンッと肩に手を置く、諦めろと言わんばかりに。
「戦闘の点もそうなんだけどねぇ。騎士が学園寮に居るっていう事実が必要なのぉ。学園に通っている、学園寮に居ても政治的とは無関係な生徒として学園寮に居るのが当たり前な騎士が。ちょっと夜、散歩がてらに寮を散策する。それが牽制になるのよぉ。」
「私でなくともシュヴェルトやアルヴィンが……。」
「出来るだけ不審者が出ても寮に居る生徒にバレずに穏便に捕らえたいんだ。戦闘狂の二人じゃ、激しく立ち回って騒ぎを大きくしたり、物を壊しかねない。」
私しかいない。
学園寮にも行かなくてはいけない。
二人は私の退路を完全に塞ぐ。
何より学園長がジョゼフの隣で立派な長い髭を乙女が髪をくるくる弄ぶように触りながらジョゼフに色目使っているのが腹立つ。
この学園長からの依頼だけだったら絶対に断っている。だが、先輩で友人で上司であるジョゼフからの仕事だから断れない。くそッ。
結局、学園寮入寮は回避出来ず、私が授業中に警備隊の面々が騎士団寮から私の私物を引っ越しさせる事になった。そういえば、学園入学の時も騎士団に押し切られて騎士団寮に入寮したな…。
最後までジョゼフは申し訳無さそうだった。
「何かあったら必ず言ってくれ。俺が責任を持つ。」
キリリとした目には自信に溢れていて、最近更に頼れる兄貴っていう雰囲気が増してきている。
突き出した拳は信頼の証。
私は一つ息をはいて雑念を掃き捨てると諦めて拳を合わせた。
「……ジョゼさんはシュネーに一番信頼を置いてるからな。」
昼食を食べながら今朝の話をするとアルヴィンがチキンソテー定食をガツガツ食べながらそう言った。
サンドイッチをゆっくり食べていると「…それじゃ少ない。」と勝手に自身のオカズを私の皿にのせてくる。シュヴェルトもジョゼフもそうだが、何かに付けて私の食べる量をサラッと増やしてくる。騎士団寮の食事は矢鱈と量が多いから昼はセーブしたいのだが…。
「……何かあれば言えよ。」
「まあ、個人的に嫌なだけで、仕事は何ら問題ないよ。夜一回見回ればいいだけで、後は警備隊が何時も通りやってくれるし。呼ばれたら加勢すればいいだけだしね。」
アルヴィンがのせてきたチキンをパクリと食べる。するとまたチキンが足される。…何かあってアルヴィンに言いたい事って言えばこれかな。
ー やっと食べ終わったのにまたのせるなよ。
やっとの事で食べ終わり、腹ごなしに中庭を二人で歩いているとカフェテラスから「シュネー!! おーい、こっち、こっち。」という声がした。
カフェテラスを見ると何時ものリヒト王子と『友人』の面々とあまりにも場違いな人が一人混ざっている。
「ゲルダ!? 」
リヒト王子の隣で楽しそうにこちらに手を振るゲルダ。レオノールが大声を上げるゲルダを見て「何だこいつ。」っていう目で呆れている。シュヴェルトは何時も通りで、エリアスは一瞬ゲルダに殺気を飛ばしてた。リヒト王子は少し呆れつつも何時もよりも楽しそうな笑みを浮かべていた。
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無視して、この場を離れたい。
手を軽く振り、笑みを返してアルヴィンと立ち去ろうとしたが、ゲルダが走ってきて私をあの危ない空間に連れて行く。
助けを求めてアルヴィンを見たが、アルヴィンはサッと目を逸らして見送った。
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