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カール視点
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初めて会った僕の婚約者はピンクのフリルでフワフワしたドレスに真っ白なリボンを付けた可愛いを体現したような装いをしていた。
僕は婚約者よりもその可愛いドレスに夢中で、来てみたいという衝動を抑えるので精一杯。彼女が綺麗なカテーシで挨拶をしたけれど全く頭に入ってこなかった。
僕は可愛いものが好き。
僕はこんなフリルもリボンも付いていない地味な可愛くない男性の服より華やかで可愛い女性の服が大好きだった。
だけど父は僕に言う。
男子たるもの女々しくてはならない。
軟弱者は我が息子ではない。
僕はずっと隠してた。
ずっとずっと着たくてしょうがなかったけど、それはおかしい事。
だって僕は男だから。
それは赦されない事だから。
伯爵家の嫡男である僕が女の格好なんて示しがつかない。アーバインの名に傷なんか付けたくない。
でも、それでもドレスを着たいという欲は年々増していった。何時か着れる背になったら母のドレスを内緒で試着しようと思う程。
「カール様は本当に私のドレスばっか見てますわね。」
「えっ? 」
何度目かにイーリス家に招待された時、ヴィルマに溜息混じりでそう言われた。ドレスに興味がある事がバレてドキリッと心臓が跳ね上がる。あまりに羨ましい過ぎてずっとドレスしか見ていなかったから今思えばバレない筈がない。
思わず何も言えず、俯くとバレた事の恥ずかしさと、もしかしたら着てみたいのがバレたのかもしれないという恐怖が込み上げる。
ジワッと目元が熱くなる。
「うーん、シナリオ壊したくないけどなぁ。でもなぁ…。まあ、なるようになるか!! 」
ふと、ブツブツ何かを言いながらヴィルマが僕の手を取った。
「私の推しはシュネー様だし。主人公はシュネー様とくっつけばオーケーか。」
訳の分からない事を呟き、男爵令嬢とは思えない、力の強さで僕を引っ張り連れて行く。何が何だかんか分からない僕は涙目で彼女に引きずられ、ひとつの部屋に連れ込まれた。
そこはフリルやビーズなど可愛い装飾が施されたドレス達が所狭しと掛けられた夢のような部屋。恐怖を忘れ、その光景に息を飲むとヴィルマが横で無邪気に笑った。
「私に無理矢理着せられたって事にしたらどうかしら? 」
「えっ!? 」
「婚約者の私が貴方の女装姿をみたいとワガママ言って着せたって事にするの。そうしたら貴方だってこれは不可抗力って事で心置きなく着れるでしょ? 」
「やっぱり、バレて……。」
絶望でめまいがした。
バレてはいけないのによりにもよって婚約者に。僕の所為でアーバイン家の名に傷を付けた。
僕はなんて駄目な奴なんだろう。
地面にヘタリ込むとヴィルマが頭をガシガシと掻き、「うーん、闇が深い。」と溜息をついた。きっとこんな僕に呆れているのだろう。
「……私は男と男がまぐわうのを見るのが好きですの。所謂、婦女子ですの。」
「……ハイ!? えっ??? 」
ヘタリ込む僕にいきなり、ヴィルマがとんでもない性癖をブッ込んできた。何故、このタイミングでいきなり、自身の性癖を暴露してきたのか。先程までの絶望感が衝撃で一気に飛び去り、驚き、ただヴィルマを見た。
「私は動き難いドレスが苦手で、普段パンツスタイルで、男装していますわ。ついでに身体もこの世界初の冒険者になる為鍛えてて、家の近くの『メールフォルスト』で修行してますの。『目指せ、俺ツエー』を目標に生きており、父にはじゃじゃ馬だと呆れられております。」
「……はぁ。」
今まで来ているドレスしか気にした事のなかった婚約者。いきなりぶっ込まれる彼女のぶっ飛んだ彼女の姿の数々にただ開いた口が塞がらない。
彼女はどう考えても男爵令嬢あるまじき言動の数々であるそれを堂々と誇らしげに語っている。何だか女装したい気持ちを抑えて、隠しているこちらが馬鹿馬鹿しく思える程に。
「まぁ兎に角、やりたい事を無理に抑えるのは身体に毒よ。ほら。」
ヴィルマがフリルたっぷりの翡翠のドレスを僕にあてがう。翡翠のドレスはとても綺麗で可愛くて僕は思わず、受け取った。
「蜂蜜色のカール様の瞳によくお似合いですわ。こんなに似合うのに着ないなんて勿体ない。」
フフッと彼女が僕にドレスを着せ、微笑んだ。初めて着たドレスはとても肌触りがよく、心地良かった。何より僕を見て、そう言ってくれた彼女の言葉が僕に染み入り、また着たいと喜びが心を占めた。
父は案の定「女々しい。」と抵抗したが、ヴィルマが弾丸トークで僕の女装の良さを語るので最終的には強引に流されて折れた。今では誰よりも僕の格好を褒めるようになり、家には沢山の可愛いドレスが増えていった。
ヴィルマには感謝しても仕切れない。まあ、彼女と長く付き合った所為で腐の沼には落ちてしまったが。それでも僕は僕の趣向を最初に認め、背中を押してくれた彼女が大好きだ。
だから僕は今日も自信を持って、僕が着たいものを着る。君が似合うと言ってくれた格好を君みたいに堂々と。
「そう言えば何で猪系魔獣狩りに来たの? 」
「だって豚汁飲みたいのに、この世界、豚居ないんですもの。何時も家では羊肉ばっかで。」
「とんじる? それが何だか分からないけど豚は居るよ。ヴィルマの住んでいる地域が主食が羊なだけで。」
「えっ!? 」
「えっ? 」
かなりぶっ飛んでて、頭のネジが何処かいってても僕はヴィルマが好きだ。
僕は婚約者よりもその可愛いドレスに夢中で、来てみたいという衝動を抑えるので精一杯。彼女が綺麗なカテーシで挨拶をしたけれど全く頭に入ってこなかった。
僕は可愛いものが好き。
僕はこんなフリルもリボンも付いていない地味な可愛くない男性の服より華やかで可愛い女性の服が大好きだった。
だけど父は僕に言う。
男子たるもの女々しくてはならない。
軟弱者は我が息子ではない。
僕はずっと隠してた。
ずっとずっと着たくてしょうがなかったけど、それはおかしい事。
だって僕は男だから。
それは赦されない事だから。
伯爵家の嫡男である僕が女の格好なんて示しがつかない。アーバインの名に傷なんか付けたくない。
でも、それでもドレスを着たいという欲は年々増していった。何時か着れる背になったら母のドレスを内緒で試着しようと思う程。
「カール様は本当に私のドレスばっか見てますわね。」
「えっ? 」
何度目かにイーリス家に招待された時、ヴィルマに溜息混じりでそう言われた。ドレスに興味がある事がバレてドキリッと心臓が跳ね上がる。あまりに羨ましい過ぎてずっとドレスしか見ていなかったから今思えばバレない筈がない。
思わず何も言えず、俯くとバレた事の恥ずかしさと、もしかしたら着てみたいのがバレたのかもしれないという恐怖が込み上げる。
ジワッと目元が熱くなる。
「うーん、シナリオ壊したくないけどなぁ。でもなぁ…。まあ、なるようになるか!! 」
ふと、ブツブツ何かを言いながらヴィルマが僕の手を取った。
「私の推しはシュネー様だし。主人公はシュネー様とくっつけばオーケーか。」
訳の分からない事を呟き、男爵令嬢とは思えない、力の強さで僕を引っ張り連れて行く。何が何だかんか分からない僕は涙目で彼女に引きずられ、ひとつの部屋に連れ込まれた。
そこはフリルやビーズなど可愛い装飾が施されたドレス達が所狭しと掛けられた夢のような部屋。恐怖を忘れ、その光景に息を飲むとヴィルマが横で無邪気に笑った。
「私に無理矢理着せられたって事にしたらどうかしら? 」
「えっ!? 」
「婚約者の私が貴方の女装姿をみたいとワガママ言って着せたって事にするの。そうしたら貴方だってこれは不可抗力って事で心置きなく着れるでしょ? 」
「やっぱり、バレて……。」
絶望でめまいがした。
バレてはいけないのによりにもよって婚約者に。僕の所為でアーバイン家の名に傷を付けた。
僕はなんて駄目な奴なんだろう。
地面にヘタリ込むとヴィルマが頭をガシガシと掻き、「うーん、闇が深い。」と溜息をついた。きっとこんな僕に呆れているのだろう。
「……私は男と男がまぐわうのを見るのが好きですの。所謂、婦女子ですの。」
「……ハイ!? えっ??? 」
ヘタリ込む僕にいきなり、ヴィルマがとんでもない性癖をブッ込んできた。何故、このタイミングでいきなり、自身の性癖を暴露してきたのか。先程までの絶望感が衝撃で一気に飛び去り、驚き、ただヴィルマを見た。
「私は動き難いドレスが苦手で、普段パンツスタイルで、男装していますわ。ついでに身体もこの世界初の冒険者になる為鍛えてて、家の近くの『メールフォルスト』で修行してますの。『目指せ、俺ツエー』を目標に生きており、父にはじゃじゃ馬だと呆れられております。」
「……はぁ。」
今まで来ているドレスしか気にした事のなかった婚約者。いきなりぶっ込まれる彼女のぶっ飛んだ彼女の姿の数々にただ開いた口が塞がらない。
彼女はどう考えても男爵令嬢あるまじき言動の数々であるそれを堂々と誇らしげに語っている。何だか女装したい気持ちを抑えて、隠しているこちらが馬鹿馬鹿しく思える程に。
「まぁ兎に角、やりたい事を無理に抑えるのは身体に毒よ。ほら。」
ヴィルマがフリルたっぷりの翡翠のドレスを僕にあてがう。翡翠のドレスはとても綺麗で可愛くて僕は思わず、受け取った。
「蜂蜜色のカール様の瞳によくお似合いですわ。こんなに似合うのに着ないなんて勿体ない。」
フフッと彼女が僕にドレスを着せ、微笑んだ。初めて着たドレスはとても肌触りがよく、心地良かった。何より僕を見て、そう言ってくれた彼女の言葉が僕に染み入り、また着たいと喜びが心を占めた。
父は案の定「女々しい。」と抵抗したが、ヴィルマが弾丸トークで僕の女装の良さを語るので最終的には強引に流されて折れた。今では誰よりも僕の格好を褒めるようになり、家には沢山の可愛いドレスが増えていった。
ヴィルマには感謝しても仕切れない。まあ、彼女と長く付き合った所為で腐の沼には落ちてしまったが。それでも僕は僕の趣向を最初に認め、背中を押してくれた彼女が大好きだ。
だから僕は今日も自信を持って、僕が着たいものを着る。君が似合うと言ってくれた格好を君みたいに堂々と。
「そう言えば何で猪系魔獣狩りに来たの? 」
「だって豚汁飲みたいのに、この世界、豚居ないんですもの。何時も家では羊肉ばっかで。」
「とんじる? それが何だか分からないけど豚は居るよ。ヴィルマの住んでいる地域が主食が羊なだけで。」
「えっ!? 」
「えっ? 」
かなりぶっ飛んでて、頭のネジが何処かいってても僕はヴィルマが好きだ。
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