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ジョゼフ視点②

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その子は雪のように真っ白な子だった。

剣なんて似合わない程、華奢で、少しでも触れてしまったら壊れてしまいそうな儚さのある子。

弟のシュヴェルトが連れてきたその子とはあの黒い噂が絶えないくクランクハイト侯爵令息エリアス経由で知り合ったと言っていた。

父も俺も最初、警戒した。
何かの思惑があってシュヴェルトにその子を紹介したのではないかと。

だがこの子自体が悪い子でないのは知っていた。茶会でハースト伯爵家の嫡男、フェルゼンが会う度に弟の話を断る毎していたから。

彼曰く、「真面目で健気で世界で一番可愛くて目に入れても痛くない。病弱なのを気にしてて、迷惑掛けてると思ってる分、必死に勉強に力を入れてて天使。ああ、シュネーの成分が足りない。もう帰るね、僕。」っだそうだ。

かなり気持ち悪いブラコンぶりであるが、取り敢えずフェルゼンの弟が良い子なのは分かった。
フェルゼンは気持ち悪いが。


でもまあその疑いも結構直ぐに晴れた。

どうやら、エリアスはシュヴェルトとシュネーが一緒に鍛錬しているのを快く思っていないとの噂が入ってきた。それにあの子はフェルゼンが言っていた通り真面目で頑張り屋だった。

走るのは元々、驚く程早い。
こちらが距離を指定しないと何処までも走り続ける。何かに取り憑かれたように走ってた。

剣の腕も悪くない。
何より努力の天才だった。

鍛錬にも手は抜かないし、家で予習も復習もしてくる。ただ、自身の限界を超えてまで常にやろうとするのでそれが先輩としてとても心配だった。何かに取り憑かれたような、怯えているように必死にやるもんだから。

きっとこの子も腹に一物抱えているのだろう。

そもそもエリアスやフェルゼンと関わって心労がない訳がない。

というかアイツ等に『従騎士の誓い』をさせられそうで怖い。アイツ等ならやりかねないから本当に笑えない。まあ、教えたら昔の小さな頃俺と違って嫌悪感丸出しで聞いていたから大丈夫だろう。



学園も最終学年になり、やっと肩の荷が降りる気がした。

学園では嫌でも一学年下のローレン達の姿が目に入った。ローレンとは『友達』を辞めて以来まともに顔を合わしていない。俺も姿を見ると『呪』が振り返しそうで怖かったので避けていたが。

時折、ローレンの『友達』で幼馴染のブルーノが睨んでくる。

彼は何時もローレンにべったりでローレンに尽くしていた。それこそローレンの無茶振りを通したり。何時もそれで困っているのはカールとドミニクだった。

ブルーノは相当ローレンに御執心の様子。

一度、茶会で「何故俺を睨んでくるのか。」っと聞いた事があるが、「オマエが邪魔だからだ。」と言われた。

何処がどう邪魔なのか全くこの時は分からなかった。俺に第一王子と第二王子『友人』合同茶会の誘いが来るまでは。


ー しかもあの庭か。

あの日のように咲き乱れるハナミズキとベロニカ。寮で一緒だからともに来たシュネーにシュヴェルトが初代『従騎士』の話をしている。

今すぐ帰りたい気持ちがあった。
だが、いずれ騎士団長になるというのにいつまでもローレンと顔を合わせない訳にもいかない。

それにあの頃は『友人』も俺一人だったから執着していたが、今やローレンには四人の『友人』がいる。


「ジョゼフ、ここに来い。」

サファイアの瞳が真っ直ぐに俺を捉える。愛称では呼ばなくなったが、未だにその目は俺を求めている。

ー ッ、何でだよ。もうお前には俺は…。

ローレンの横に促されまま座るとブルーノから射殺すような視線を感じた。

ああ、そうかお前は俺に嫉妬をしているのか。俺達は終わっているというのに。

「ーーで、ーーなんだ。」

「ーーだからーーーで。」

ローレンが何かを楽しそうに嬉しそうに話してくる。でも頭に何も入ってこない。心の奥がチリチリして焼ききれそう。

頭が痛い。
隣から殺意を感じるがそれすらも遠くに感じる。

『オマエは誰のものだ。』

頭の中でまたあの『呪』が回る。
頭が真っ白に焼け切る。



「学園に行くまではこうやってあーんしてたのに。」

「だから、私はもう…。」

「はい、あーん。」

「…ムガッ!? 」

ハッとその声に途切れ掛けた意識を持っていくとシュネーがフェルゼンとエリアスに絡まれている。

涙目になって顔を真っ赤にして、とても可愛いし見ていて何故かドキドキするが、状況はとても可哀想。

その歳で、「あーん。」はやめてやれよ。こんな大勢の前で。

シュネーは拒否しようとしてるが極度のブラコンは止まらない。

この中じゃ、俺が年長者だし、そろそろ助けてやらなきゃ。

「大丈夫か、シュネー。」

シュネーにそう声を掛けると顔に「逃げたい。」っと書いてあった。あの鈍感なシュヴェルトもシュネーを心配している。

ダンッ

突然、ローレンが立ち、テーブルを割らんばかりに強く殴打する。その瞳は俺を睨むブルーノと同じ感情の色に染まっている。

「キサマ!! 王族主催の茶会でかどわかすとは何事だ。」

「かッ…かど…ッわ、かどわかす!? 」

「この淫乱め。剣を取れッ。俺がその腐った性根を叩き直してやる!! 」

「い…淫乱!? 」

シュネーが言い掛かりも甚だしい暴言を言われて、怒るでもなくただその言葉に衝撃を受けていた。

こういう時に第一王子の『友人』であり、この中で王子達の次に位の高い公爵令息であるブルーノに止めてもらいたいのだが、彼は俺から目を逸らす気はない。
どれだけ俺が目障りなんだ!!

こうなったら年長者の俺が止めるしかない。

「待ってください。シュネーはそんな奴じゃありません。」

「お前は黙って見ていろジョゼフッ。」

ー いや、止まれよ!!

何とかしてシュヴェルト達と止めようとするが止まる気配がない。怒りで我を忘れてる。シュネーも衝撃過ぎて普段なら逃げてるエリアスの腕の中。止める隣でフェルゼンが舌打ちをした。

「てっ…手合わせ!! そうだローレン殿下、相棒と手合わせするって事で取り敢えず落ち着こうぜ。それなら王族相手でも手を出しても大丈夫だった筈。なぁ、そうしよう相棒!! 」

「そうだ。よく思い付いた。それが良い。」

このままだと王族相手だと抵抗も避ける事も出来ず、嬲られる。ならば正式な手合わせにすれば良い。

こちらを見るローレンに必死でそれが良いと頷いた。

「お前がそこまで言うなら。」

やっと止まってくれた。
もう勘弁して。
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