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エリアス視点②
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シュネーは意外と賢く、鋭い。
彼は動物のように一定の距離を保って、出来るだけ俺に関わらない様に立ち回っている。
それが面白くなくて追い掛けるのだが、危機を感じてすぐに逃げるのだ。
捕またら甘く鳴くまでグズグズに可愛がってやろうと思っているので、もしかしたらその感情を察知して必死に逃げているのかもしれない。まるで野生の動物だ。
まあ、毎回逃げるシュネーを追いかけるのもなかなか悪くない。苦しそうに息を上げて必死に逃げる姿は見ていてゾクゾクする。
最初の頃は吐いた上で盛大に倒れて、回収されてしまっていたが、一年もやっていればシュネーも体力が付いた。
病人のような青白い肌も血色のいい肌に代わり、筋肉もついてきた。しかし、それでもまだ華奢で抱いたら折れそうな身体は健在。少し色気も出てきた気がする。
嬉しい誤算だ。
しかし体力が付いた所為でシュネーが息も切らさず、俺から逃げおおせる様になってしまった。
ー これではつまらない。
どうすればシュネーを俺の前に留まらせる事が出来るか。思案を巡らせると一ついい案が浮かんだ。
ー リヒトを使うか。
第二王子のリヒト・フォー・フォルメルン。我が強くなくて将来傀儡として上手く使えそうだから、『友人』になった男。アイツの特権を存分に使ってやればいい。
王族には逆らえない。
それに王族への足かがりはハースト家だって多い方がいいと判断する。シュネーは絶対応じるだろう。
人の良いリヒトはシュネーの事を話したら二つ返事で了承した。シュヴェルトもレオノールも参加すると言い出したのは誤算だが、しょうがない。
シュヴェルトは人懐っこい上に末っ子の為、自身より二つも下のシュネーを構いたいみたいだ。レオノールは俺が『友人』の中に新たな人物を連れて来るので警戒している。
下準備もあった為、先にお茶会を始めているときちんと時間通りにシュネーが温室に現れた。
もう既に顔が真っ青だが初めてあった時と比べれば体調は良さそうだ。呼ぶととても嫌そうにこちらを見たが、そのアメジストの様な瞳に俺が映っているのがとても良い気分だった。
シュネーは終始黙ってお茶会の成り行きを見ていた。おそらく賢い彼の事だから大体この『友人』関係が決して良いものではないのは分かったのだろう。だから関わってこようとしない。
大人達の思惑が交錯した『友人』関係。俺達はそれぞれ何時か国を手に入れる為にここにいる。まあ、正直シュヴェルトはアホなので思惑を理解していないが。
レオノールは会話に参加しつつも終始シュネーを見定めている。俺が連れてきたから何かあると勘繰っているのだろう。シュネーを利用したいのではなく、シュネーを手に入れたくてお前達を利用していると知ったら無駄に勘繰ってるコイツはどんな顔をするだろう。見ものだ。
シュネーが桃色に染まった薄い唇でゆっくりと紅茶を飲んでいる。その唇を舐めたい衝動に駆られるが我慢。
折角、用意したのに焦りは禁物。
やがてシュネーのカップが空になった。無駄な会話を続けてやっと待ってた瞬間がきた。
この日の為に用意した媚薬入りの茶葉。シュネーが来るギリギリまで媚薬の量を調整して、この茶葉が上手く身体に巡る様にシュネーの身体を温めた。先にお茶会を初めていようと提案して温めておいた温室。血行が良くなる様にブレンドした暖かな紅茶。
全てが計画通りの筈だった。
空気を読まない、息のかかっていない従者がシュヴェルトのついでにシュネーにもお茶を注ごうとするまでは。
「ああ、シュネーには別の紅茶を用意しているんだ。そっちを淹れてもらえるかな。」
慌てて出したその言葉にシュネーの眉間にシワが寄った。
久々に功を急いでしまった。
せめて、言い回しに気をつければ何とかなったかもしれないが、今の言葉で完全に警戒されてしまった。…どう出る。
「いや、これ以上お茶を飲むとちょっと胃が…。申し訳無いのですが、体調を崩してしまうので白湯でお願いします。」
「…白湯。」
かなり無理のある回避だった。
お茶で体調崩すとか聞いた事ない。
だが、幾ら自身より下の爵位の相手でも流石に体調の悪いものに無理矢理飲ますのは世間体的に不味い。そもそも無理に飲ませようとしたら無駄に人の良いリヒトとシュヴェルトが俺を止めるだろう。
ー もう少しバカで鈍ければ…。
折角の計画が頓挫した。
だが、何時もは見せない幸せそうに笑みをこぼして甘いものを食べる可愛い姿が見れたので良しとしよう。まぁ、隣で矢鱈とシュネーを構う上に個別で次会う約束を付けたシュヴェルトはムカつくが…。
しかし、折角取り付けた楽しい時間も続かない。シュネーにはアイツが居るから。
「シュネー、帰ろうか。」
折角、王族の特権を使い、連れ出したというのにアイツはいとも簡単にここに現れた。
優しい兄という仮面を被り、シュネーを抱き寄せ、頰に口づけをする。
「クリームが付いていた。」
と言っていたが、綺麗な所作で丁寧に食べていたシュネーが頰にクリームを付ける訳がない。俺への牽制だ。
優しい兄の仮面を取り、アイツが見下すように鼻で俺を嗤う。そして流れる様な綺麗な礼をして何事もなかった様にシュネーを抱いたまま出て行く。その横顔には優しい兄の仮面が戻っていた。
あれは兄なんてものではない。
あれはひとりの男だ。
ー あの狸め!
思わず、爪を噛む。
賢く鋭いシュネーと長く居て、それを悟らせないだけの狡猾さ。
フェルゼン・ハースト。
ハースト伯爵家の嫡男にして、血の繋がった弟シュネーを恋愛対象として愛してるトチ狂ったブラコンだ。
彼は動物のように一定の距離を保って、出来るだけ俺に関わらない様に立ち回っている。
それが面白くなくて追い掛けるのだが、危機を感じてすぐに逃げるのだ。
捕またら甘く鳴くまでグズグズに可愛がってやろうと思っているので、もしかしたらその感情を察知して必死に逃げているのかもしれない。まるで野生の動物だ。
まあ、毎回逃げるシュネーを追いかけるのもなかなか悪くない。苦しそうに息を上げて必死に逃げる姿は見ていてゾクゾクする。
最初の頃は吐いた上で盛大に倒れて、回収されてしまっていたが、一年もやっていればシュネーも体力が付いた。
病人のような青白い肌も血色のいい肌に代わり、筋肉もついてきた。しかし、それでもまだ華奢で抱いたら折れそうな身体は健在。少し色気も出てきた気がする。
嬉しい誤算だ。
しかし体力が付いた所為でシュネーが息も切らさず、俺から逃げおおせる様になってしまった。
ー これではつまらない。
どうすればシュネーを俺の前に留まらせる事が出来るか。思案を巡らせると一ついい案が浮かんだ。
ー リヒトを使うか。
第二王子のリヒト・フォー・フォルメルン。我が強くなくて将来傀儡として上手く使えそうだから、『友人』になった男。アイツの特権を存分に使ってやればいい。
王族には逆らえない。
それに王族への足かがりはハースト家だって多い方がいいと判断する。シュネーは絶対応じるだろう。
人の良いリヒトはシュネーの事を話したら二つ返事で了承した。シュヴェルトもレオノールも参加すると言い出したのは誤算だが、しょうがない。
シュヴェルトは人懐っこい上に末っ子の為、自身より二つも下のシュネーを構いたいみたいだ。レオノールは俺が『友人』の中に新たな人物を連れて来るので警戒している。
下準備もあった為、先にお茶会を始めているときちんと時間通りにシュネーが温室に現れた。
もう既に顔が真っ青だが初めてあった時と比べれば体調は良さそうだ。呼ぶととても嫌そうにこちらを見たが、そのアメジストの様な瞳に俺が映っているのがとても良い気分だった。
シュネーは終始黙ってお茶会の成り行きを見ていた。おそらく賢い彼の事だから大体この『友人』関係が決して良いものではないのは分かったのだろう。だから関わってこようとしない。
大人達の思惑が交錯した『友人』関係。俺達はそれぞれ何時か国を手に入れる為にここにいる。まあ、正直シュヴェルトはアホなので思惑を理解していないが。
レオノールは会話に参加しつつも終始シュネーを見定めている。俺が連れてきたから何かあると勘繰っているのだろう。シュネーを利用したいのではなく、シュネーを手に入れたくてお前達を利用していると知ったら無駄に勘繰ってるコイツはどんな顔をするだろう。見ものだ。
シュネーが桃色に染まった薄い唇でゆっくりと紅茶を飲んでいる。その唇を舐めたい衝動に駆られるが我慢。
折角、用意したのに焦りは禁物。
やがてシュネーのカップが空になった。無駄な会話を続けてやっと待ってた瞬間がきた。
この日の為に用意した媚薬入りの茶葉。シュネーが来るギリギリまで媚薬の量を調整して、この茶葉が上手く身体に巡る様にシュネーの身体を温めた。先にお茶会を初めていようと提案して温めておいた温室。血行が良くなる様にブレンドした暖かな紅茶。
全てが計画通りの筈だった。
空気を読まない、息のかかっていない従者がシュヴェルトのついでにシュネーにもお茶を注ごうとするまでは。
「ああ、シュネーには別の紅茶を用意しているんだ。そっちを淹れてもらえるかな。」
慌てて出したその言葉にシュネーの眉間にシワが寄った。
久々に功を急いでしまった。
せめて、言い回しに気をつければ何とかなったかもしれないが、今の言葉で完全に警戒されてしまった。…どう出る。
「いや、これ以上お茶を飲むとちょっと胃が…。申し訳無いのですが、体調を崩してしまうので白湯でお願いします。」
「…白湯。」
かなり無理のある回避だった。
お茶で体調崩すとか聞いた事ない。
だが、幾ら自身より下の爵位の相手でも流石に体調の悪いものに無理矢理飲ますのは世間体的に不味い。そもそも無理に飲ませようとしたら無駄に人の良いリヒトとシュヴェルトが俺を止めるだろう。
ー もう少しバカで鈍ければ…。
折角の計画が頓挫した。
だが、何時もは見せない幸せそうに笑みをこぼして甘いものを食べる可愛い姿が見れたので良しとしよう。まぁ、隣で矢鱈とシュネーを構う上に個別で次会う約束を付けたシュヴェルトはムカつくが…。
しかし、折角取り付けた楽しい時間も続かない。シュネーにはアイツが居るから。
「シュネー、帰ろうか。」
折角、王族の特権を使い、連れ出したというのにアイツはいとも簡単にここに現れた。
優しい兄という仮面を被り、シュネーを抱き寄せ、頰に口づけをする。
「クリームが付いていた。」
と言っていたが、綺麗な所作で丁寧に食べていたシュネーが頰にクリームを付ける訳がない。俺への牽制だ。
優しい兄の仮面を取り、アイツが見下すように鼻で俺を嗤う。そして流れる様な綺麗な礼をして何事もなかった様にシュネーを抱いたまま出て行く。その横顔には優しい兄の仮面が戻っていた。
あれは兄なんてものではない。
あれはひとりの男だ。
ー あの狸め!
思わず、爪を噛む。
賢く鋭いシュネーと長く居て、それを悟らせないだけの狡猾さ。
フェルゼン・ハースト。
ハースト伯爵家の嫡男にして、血の繋がった弟シュネーを恋愛対象として愛してるトチ狂ったブラコンだ。
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