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持っていかれた!!
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霧散した赫い霧は大きな人の顔の形となり、まだ恨みがましくこちらを見た。
ミドリは今にも息途絶えそうな苦しげな息遣いをするソレーユに治癒魔法を掛けながらその赫い霧を睨んだ。
ー・ー 憎い。 ー・ー
しかしそんなミドリを無視してただひたすらに俺だけに憎悪を向ける赫い獣。
正直、コイツが何をしたかったのか分からない。でも、確実に何か良からぬ事をしようとしていたのは何となく分かる。
このまま逃す訳にもいかないなと霧を掴んでみるが、やはり掴む事は出来ない。
それを見てニンマリ嘲る奴の顔を見て、血管が切れそうになった。良からぬ事をどうのこうのを差し置いてもムカつくな、コイツ!!
また何かやろうと奴が動き始めた時。
急に周囲の温度が下がり、空気が凍りついた。
ミドリが慌てて俺を抱き締めて冷気から守る。
ミドリの身体の隙間から奴が凍っていくのが見えた。
凍る身体を捨てて何度も逃げようともがき、最終的には赫い氷となり、地面に落ちた。
「いやぁー、危機一髪ッ。これ、おじさん、ヒーローみたいじゃないかな!?」
「ヒーロー?どちらかと言えば貴殿は最後に出てきて手柄を掻っ攫っていくハイエナに等しいと思うが…。」
「……君は俺に何か恨みがあるのかい?」
「…感じた事を感じたままに言ったまでだが?」
酒を呑んでいないのに酔っ払っている声と物足りなさそうに鎌のような剣を振るう音とともにつまらなそうな声が聞こえる。
気付けば何時の間にかに周囲をラ・モールとオッサンが引き連れた兵達が囲み、赫い獣に乗っ取られていた兵達を拘束していく。
ラ・モールは「戦いたかった…。」と愚痴を溢しながらオッサンが凍らせた赫い獣の氷を全て瓶に詰め、封じた。
オッサンは逃げようとしていたザビエル風の爺さんの足を凍らせて、何時もとは違う冷え冷えとした目で老人を見下し、踏みつけた。
「は、離せッ。パレスッ!!」
「何で?貴方は罪人でしょ?陛下への反逆の罪で今すぐここで惨殺されても文句言えない立場ですよ?」
「お前はッ、お前はワシに復讐したいだけだろうッ!!たかが、一匹の女の命一つでまだワシを恨むのかッ。」
「さーてぇ。何のことか?俺はただ陛下の忠臣として責務を果たしているだけですよー。」
「パレス。裁くのは陛下の務めだ。」
「分かってるってラ・モール。…では、陛下。正当な裁きを期待してますよ。」
突如現れたオッサンはラ・モールと睨み合い、陛下に一礼するとザビエル風の爺さんを引き摺ってそのまま帰っていった。
去り際に「よかったね、コタちゃん。」と頭をポンッと撫でて去っていくその姿は俺の知らないオッサンの顔だった。それがとても気になったが…。
「戦争が終わっても問題は山積みですか…。」
そのミドリの一言と疲れ切って挫けそうなその顔にオッサンへの関心を忘れて同情した。
その顔がこれからミドリを待ち受ける苦行を物語っていた。
ー 王様って大変だな…。
ミドリは数分俺を抱き締めると、この場を治める為にせかせかと動き出す。
部下達に指示を飛ばし、指揮官を失くし完全に統率を失っていた人族の兵達も保護していた。
ソレーユを含めて人族の兵は捕虜として暫し預かり、和睦協定が結ばれた後に返すつもりらしい。
ソレーユがこのまま見せしめに処刑に…という事がなく、心底安心したが、その俺の表情にミドリは面白くなさそうな顔をしていた。…嫉妬って本当に面倒臭いな。
やっとひと段落着いて魔族の国に帰れそうになったのは火が落ちる頃。
暇であまりにもやる事がなく、丘でぼんやりと空を眺めていると仕事を終えたミドリが覚悟を決めた顔でこちらに向かってくる。
その一世一代の勝負…と、言わんばかりの男の顔でこちらに向かってくるのでこちらもゴクリと唾を飲んだが…。
「コタッ!!良かった。無事でっ。」
何処からともなく現れたラヨネがミドリと俺の間に割って入った。
林の方からラヨネを追ってきた狼野郎は頭を抱え、すっかり元気そうなモモは苦い笑みでこちらを見ている。
しかし、ラヨネは何処まで行ってもラヨネだ。
そんな場の空気を全てすっ飛ばすような穢れのないウルウルとした山吹色の瞳でこちらを見て、身体全部を使って文字通り全身全霊で大好きなんだと訴えてくる。
「ごめんね。モモの介抱で遅れちゃって…。」
「いや、ありがとな。俺を助けてくれたあの矢はラヨネだろ?」
「うん。コタが居なくなるかもって思ったら怖かった。だから僕…、無我夢中で…。」
「ラヨネの矢のおかげで死なずに済んだ。本当に助かった。」
「うん。良かった…。本当にっ…よかった…。」
ぐすんっと涙を流し、ぎゅっと小さな身体で抱きつく。
そして、チュッと唇に口付けを落とし、チラリとミドリを見て、誇らしげに鼻で笑った。
それを呆然と見て、ミドリは何か言おうとしたが、余程の衝撃だったようでパクパクと鯉のように口を動かすだけだった。
ピシリッと固まるミドリの肩をポンッとラ・モールが叩き、ミドリは固まった顔のままラ・モールに視線を向けた。
「貴殿が足りないのはまさにアレだ。あの狡猾さと強引さが足りない。」
それは完膚なきまでの追い討ちだった。
受け入れられない現実を目にしたものに対して、まさかのダメ出し。
その言葉にミドリはついにワッと泣き出した。
ギリギリの戦いで精神を磨耗し、その上で戦場の終結の為に部下への指示。しかも、この戦いが終わってからも厄介ごとは星の数程ミドリを待っている。
「持ってッ。持っていかれたーーーッ!!」
しかも想い人のキスの相手が突如現れた謎のリスっ子っというのが特に納得いかなかったのだろう。ミドリの心は綺麗にポッキリと折れた。
そしてワッと泣く魔王を目の前にしたラヨネはというと…。
「何?いい歳した大人がギャン泣き?」
ドン引きの上に俺に抱っこされたまま絶対零度の瞳で泣きながら膝から崩れ落ちた魔王を見下していた。
ミドリは今にも息途絶えそうな苦しげな息遣いをするソレーユに治癒魔法を掛けながらその赫い霧を睨んだ。
ー・ー 憎い。 ー・ー
しかしそんなミドリを無視してただひたすらに俺だけに憎悪を向ける赫い獣。
正直、コイツが何をしたかったのか分からない。でも、確実に何か良からぬ事をしようとしていたのは何となく分かる。
このまま逃す訳にもいかないなと霧を掴んでみるが、やはり掴む事は出来ない。
それを見てニンマリ嘲る奴の顔を見て、血管が切れそうになった。良からぬ事をどうのこうのを差し置いてもムカつくな、コイツ!!
また何かやろうと奴が動き始めた時。
急に周囲の温度が下がり、空気が凍りついた。
ミドリが慌てて俺を抱き締めて冷気から守る。
ミドリの身体の隙間から奴が凍っていくのが見えた。
凍る身体を捨てて何度も逃げようともがき、最終的には赫い氷となり、地面に落ちた。
「いやぁー、危機一髪ッ。これ、おじさん、ヒーローみたいじゃないかな!?」
「ヒーロー?どちらかと言えば貴殿は最後に出てきて手柄を掻っ攫っていくハイエナに等しいと思うが…。」
「……君は俺に何か恨みがあるのかい?」
「…感じた事を感じたままに言ったまでだが?」
酒を呑んでいないのに酔っ払っている声と物足りなさそうに鎌のような剣を振るう音とともにつまらなそうな声が聞こえる。
気付けば何時の間にかに周囲をラ・モールとオッサンが引き連れた兵達が囲み、赫い獣に乗っ取られていた兵達を拘束していく。
ラ・モールは「戦いたかった…。」と愚痴を溢しながらオッサンが凍らせた赫い獣の氷を全て瓶に詰め、封じた。
オッサンは逃げようとしていたザビエル風の爺さんの足を凍らせて、何時もとは違う冷え冷えとした目で老人を見下し、踏みつけた。
「は、離せッ。パレスッ!!」
「何で?貴方は罪人でしょ?陛下への反逆の罪で今すぐここで惨殺されても文句言えない立場ですよ?」
「お前はッ、お前はワシに復讐したいだけだろうッ!!たかが、一匹の女の命一つでまだワシを恨むのかッ。」
「さーてぇ。何のことか?俺はただ陛下の忠臣として責務を果たしているだけですよー。」
「パレス。裁くのは陛下の務めだ。」
「分かってるってラ・モール。…では、陛下。正当な裁きを期待してますよ。」
突如現れたオッサンはラ・モールと睨み合い、陛下に一礼するとザビエル風の爺さんを引き摺ってそのまま帰っていった。
去り際に「よかったね、コタちゃん。」と頭をポンッと撫でて去っていくその姿は俺の知らないオッサンの顔だった。それがとても気になったが…。
「戦争が終わっても問題は山積みですか…。」
そのミドリの一言と疲れ切って挫けそうなその顔にオッサンへの関心を忘れて同情した。
その顔がこれからミドリを待ち受ける苦行を物語っていた。
ー 王様って大変だな…。
ミドリは数分俺を抱き締めると、この場を治める為にせかせかと動き出す。
部下達に指示を飛ばし、指揮官を失くし完全に統率を失っていた人族の兵達も保護していた。
ソレーユを含めて人族の兵は捕虜として暫し預かり、和睦協定が結ばれた後に返すつもりらしい。
ソレーユがこのまま見せしめに処刑に…という事がなく、心底安心したが、その俺の表情にミドリは面白くなさそうな顔をしていた。…嫉妬って本当に面倒臭いな。
やっとひと段落着いて魔族の国に帰れそうになったのは火が落ちる頃。
暇であまりにもやる事がなく、丘でぼんやりと空を眺めていると仕事を終えたミドリが覚悟を決めた顔でこちらに向かってくる。
その一世一代の勝負…と、言わんばかりの男の顔でこちらに向かってくるのでこちらもゴクリと唾を飲んだが…。
「コタッ!!良かった。無事でっ。」
何処からともなく現れたラヨネがミドリと俺の間に割って入った。
林の方からラヨネを追ってきた狼野郎は頭を抱え、すっかり元気そうなモモは苦い笑みでこちらを見ている。
しかし、ラヨネは何処まで行ってもラヨネだ。
そんな場の空気を全てすっ飛ばすような穢れのないウルウルとした山吹色の瞳でこちらを見て、身体全部を使って文字通り全身全霊で大好きなんだと訴えてくる。
「ごめんね。モモの介抱で遅れちゃって…。」
「いや、ありがとな。俺を助けてくれたあの矢はラヨネだろ?」
「うん。コタが居なくなるかもって思ったら怖かった。だから僕…、無我夢中で…。」
「ラヨネの矢のおかげで死なずに済んだ。本当に助かった。」
「うん。良かった…。本当にっ…よかった…。」
ぐすんっと涙を流し、ぎゅっと小さな身体で抱きつく。
そして、チュッと唇に口付けを落とし、チラリとミドリを見て、誇らしげに鼻で笑った。
それを呆然と見て、ミドリは何か言おうとしたが、余程の衝撃だったようでパクパクと鯉のように口を動かすだけだった。
ピシリッと固まるミドリの肩をポンッとラ・モールが叩き、ミドリは固まった顔のままラ・モールに視線を向けた。
「貴殿が足りないのはまさにアレだ。あの狡猾さと強引さが足りない。」
それは完膚なきまでの追い討ちだった。
受け入れられない現実を目にしたものに対して、まさかのダメ出し。
その言葉にミドリはついにワッと泣き出した。
ギリギリの戦いで精神を磨耗し、その上で戦場の終結の為に部下への指示。しかも、この戦いが終わってからも厄介ごとは星の数程ミドリを待っている。
「持ってッ。持っていかれたーーーッ!!」
しかも想い人のキスの相手が突如現れた謎のリスっ子っというのが特に納得いかなかったのだろう。ミドリの心は綺麗にポッキリと折れた。
そしてワッと泣く魔王を目の前にしたラヨネはというと…。
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