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《恋》の定義①

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ー 救いようのねぇ馬鹿だな。コイツ。

そう自身を睨む王を見て思わず、ため息を溢すし、チラリとあのソレーユ忌々しい男を見やる。すると奴は「行くよ。」と俺の指に自身の指を逃げないように絡め合わせて、手を引く。


《俺を求めろ。》

あの命令の所為で何故だかちょくちょくミドリの姿が奴と重なる。

だからだろうか?
こんな気狂いの事なんかどうでもいい筈なのに先程のやり取りで心がざわざわとしているのは。

「なんであんな事聞いたんだ?」

この気狂いが何を考えているのか分からない。
だが、一番デリケートな部分を淡々と質問していたのが気がかりだった。

ああいうのは怒ったり、泣いたりして聞くような事柄だと俺は思う。
その上、あれは無言の肯定だ。愛されていると思ってたなら落胆するだろ、普通。

そう聞けば「何のこと?」と首を傾げて、少し考え込んだ。そして「ああ。あれか。」と先程出た執務室の方に顔を向けた。

「いや、前に君が叱らないのは僕に興味がないからって言っていたからどう思ってるのか気になってね。」

「…お前。」

「君の言う通りみたいだね。僕は二人の《証》でしかないみたいだ。俺自身その証の内容には興味がない。」

淡々としている所か、「ノワールは凄いな。」と笑みを溢した。

それをただ狂ってると切り捨てられたならまだ楽なのかもしれない。
だが…、イラつくものはイラつく。
俺は黙っているつもりはない。

「そこは怒る所だ。」

「ノワールはとことん俺を否定するね。」

「それが嫌ならさっさとモモを解放しろ。そしたらとっとと出てってやるよ。」

「嫌なんて一言も言ってないよ、ノワール。俺は君を手放す気なんてこれっぽっちもない。」

ツゥーッと男ソレーユ忌々しい男の指が首筋を撫で、耳に触れる。
それが心底嫌だと顔で盛大に表現するがまた奴とミドリと重なり、耳に噛み付くのを許してしまった。

「イッ!?おいっ。ふざけんじゃねぇぞ。」

「君は俺のものだ。少し目を話した隙に浮気してたのを俺は許してないよ?…君を獄塔にひとりにしたのは間違いだった。片時も離してはダメみたいだね、君は。」

気を抜くとこの男は犬のように噛み付いてくる。
この前は油断して首筋を噛まれて、思いっきり殴ってやったのに全く懲りていない。

くっきり残った首筋の歯形は鏡で何度見ても痛々しい。容赦なく噛むからまだズキズキ痛い。…クソッ。絶対、やり返す。

噛んだ耳を撫で、首筋に残った歯形を撫でると満足気にこの男は笑う。

その顔を見ていると時折、夢現で見たミドリの顔が浮かぶ。
自身の残した痕に触れ、少し申し訳なさそうに頰を染めて微笑む姿が。

ー 俺はアイツをどうしたいんだろう?

前みたいには無理だとしても笑い合えるような関係がいい。その為に自身でどうにかしようと動いた。だけど…。

『僕は愛してるの。そこに性別は関係ないし、歳だって関係ない。』

『コタはどう?男の僕とキスするのは嫌?気持ち悪い?』

きっとそれだけではダメなんだろうなと、ラヨネのやり取りを思い出して最近思ったりする。

ラヨネの事もミドリの事も。
俺が俺の中で答えを出さなければ進まない。


ー 違うな。もう答えは出てる。

溜息を吐き、新しく出来た噛み跡に触れる。

初めて身体を開かされた時に抵抗しなかったのも。その後身体を許したのも。この噛み跡がお前の顔がチラつくだけで許せてしまうのもそれは…。

それが嫌じゃないから。
それを気持ち悪いと思っていないからだ。
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