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ソレーユ視点④

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「黙って聞いてりゃあ、人の舎弟を好き勝手言いやがって。」

その姿に「ああ。もう、出てきたのか。」と彼の無鉄砲さにおかしくて、思わずフッと笑ってしまった。

態と逃げ易い環境を作って、もうどうやってもソレーユから逃げられない事をあげようと思ったのに態々逃げ出して自身の所に来るとは…。

ー 面白いな。

完全に獣人の王から意識が離れたソレーユは抜いた剣を鞘にしまう。剣に一部を宿していたクエスティはその主人ソレーユの姿に呆気に取られた。

ー・ー 主人? ー・ー

ソレーユの手は剣の柄から離れて、心底嫌そうな顔をこちらに向ける琥太郎の頰に触れた。

「そんなに俺に会うのが待ち遠しかった?」

「寝言は寝てから言えよ。テメェには散々痛ぶってもらった借りがあるんだ。きっちり、精算させてもらう。」

パシンッと触れた頰を手を琥太郎は躊躇なく、叩き落とした。主人であるソレーユに危害を加えた瞬間、ペナルティとして身体に耐え難い程の苦痛が走るというのにそれでも眉一つ動かず耐え切って見せる。

その並々ならぬ根性と意地がソレーユには興味深くて仕方がない。

動物は痛みを恐れる生き物で追い詰められれば追い詰められる程、その醜い本性が露わになるもの。その前では意地も偽善もその物を覆っているもの全てが簡単に剥がれていく。人も動物も何もかも。

ー それが君の本性?

ここまで裏表のない人間は初めてだと目の前の不思議な存在を凝視する。
じんじんとした手の痛みが身体に伝わる度に心の中で今までにない感情が湧き出てくる。それは危害を加えられた怒りなどの暗い感情じゃなく、何処か高揚感を纏った感情。

ずっと産まれてから求めていた《何か》を今、やっと手に入れられたような満足感。
自分でも何が欲しいのか分かっていないのに与えられた《何か》をもっと欲しくて手を伸ばす。もっと欲しいから独占したい。

やはり、獄塔で囲うより常に自身の隣に置いておくべきかと思案していると、お付きの騎士達に介抱されていた獣人の王がスンスンッ鼻を鳴らして何かの匂いを感じ取り、目を丸くして琥太郎を見た。

「この花の匂い…。まさか…。」

猫特有の縦長の瞳孔をぐにゃりと歪ませて、欲に塗れた目が琥太郎を見た。それが何故だかとても気に入らず、琥太郎に『来い。』と命令を下した。

「誰がテメェの指図なんか受けるか。」

「俺は『来い。』と言ったんだ。…陛下。十分楽しんだでしょう?テキトーにほっぽって置けば勝手に野垂れ死ますよ。」

更に強く命令して無理矢理琥太郎の足をソレーユの進む方向に誘導する。抵抗しても勝手に足が進むのが気に入らなかったのか、チッと舌打ちをして王を睨む。

「大体な。やってる事が小せぇんだよッ!!…何やってんだかは知らねぇが、どうせ、この獣人達相手に集団リンチみてぇな事してんだろ。その性根でよくそんな偉そうな所で踏ん反り返ってられるなッ。恥ずかしい。」

何時から琥太郎は見ていたのか。
そんなに何が気に食わなかったのかは、ソレーユには理解出来なかった。

ただ王相手に不遜にも変わらず食って掛かるその姿と他人に否定された事がなく、何を言われてるか理解出来ず、ただポカンとしている王の姿に込み上げてくる笑いが止まらず、吹き出した。
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