その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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ダメな大人達

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「ふぃーっ。やぁっと、出て行ったよ。」

三人が出ていくと待ってましたと言わんばかりに牢番がうきうきと地べたに座り、飲む態勢に入った。

本当にダメだ、こいつと呆れつつも腕を組み、首を傾げる。

だが、本当にこんなダメな奴をあのモモを人質にして俺に要求を飲ませた姑息なアイツが信頼して任せてるとは思えない。考え過ぎかもしれないが、態と逃げやすい状況を作って何か企んでいる可能性もなくはない。


「おい…。」

「ち、近付かないからな!?また俺を昏倒させる気だろうっ。もうあんな…、あんな失態まっぴらだ!!」

…取り敢えず、何か情報でも引き出せないかと牢番を呼んだだけなのに、牢番は壁にめり込むんじゃないかって程逃げ、怯える。
だが、怯えても決して酒瓶は手から離れる事はない。

…アレが失態だと分かっていて、尚って所がコイツの残念さを物語ってる。本当にダメ奴だな、こいつ。


「くそうっ。囚人を逃しちゃったからって、なんで一番辛い獄塔に配属されなきゃなんないんだっ…。一日二十時間労働で住み込みって……。これじゃあ、俺まで収監されてるみたいじゃないかッ!!」

ついにはひとりで追い詰められてワッと泣き出す牢番。そこは自業自得な気がするし、クビにならないだけマシだと俺は思う。

面倒だなとわしわしと頭を掻き、もう一度牢の中を見回す。本当に壁には窓の一つも隙間のひとつもなく、今が朝かも夜かも分からない。

ー ガラじゃねぇな…。

ジャラリと揺れる鎖に億劫に思いながらあぐらを掻いて肘を突き、この部屋は他に何も見るもんがないからじっと牢番を見やる。その間も牢番は俺に怯えながらも酒に口付けようとしている。

「《初恋の雫》。」

ボソリッとそう小さく呟くと牢番がピタリと一瞬固まり、そして驚愕の表情でこちらを見た。

「え?…今、《初恋の雫》って言わなかった?!ちょっと待って。え?えぇ!?」

あんなにも怯えていた牢番が期待に満ちた顔でふらふらと鉄柵に近付く。そんな姿に内心苦笑しつつも、おもむろに手を懐に入れる。

「え?まさか…。まさか持ってるの!?あの幻のお酒《初恋の雫》をッ。無茶苦茶美味いって酒好きの中でも有名なのにガウェイン製品ってだけで販売、所持禁止のアレを…。」

ついにはガチャリと自ら鍵を開け、期待に満ちた表情でこちらに近付いてきた。そんな牢番を見てフッと思わず笑い、懐から手を出し、そして……。

全力で顎にアッパーを喰らわせた。


「ガッ!?」

綺麗に決まったアッパーで牢番は一瞬宙を舞った。バタンッと床に落ち、気を失って、持ってた鍵を落としたがそれでも牢番は握っていた酒瓶だけは離さなかった。

ある意味すごい執念だと一周回って感心しながら落ちた鍵をサッと懐にしまう。

「悪いな。…だが、別に俺がここで大人しく捕まってやる義理はねぇんだよ。とは約束してねぇしな。」

悪いとは口にしつつもコイツに対して一切罪悪感はない。
仕事中にも関わらず酒を断てないコイツに掛ける情がねぇんだよ。これっぽっちも。

「それにしても本当にあの変態はしょうもねぇな…。アイツの商品のファンにマトモなのはいないのか!?…いや、そもそも商品がマトモじゃねぇのか…。」

溜息を吐きながら、二年とちょっとでそのマトモじゃない商品の名を暗記してしまった自身にも落胆する。

《初恋の雫》
それはガウェイン製品唯一媚薬やらやばい効能が一切ないただの酒。ほんのり甘みの効いた女性でも飲みやすい口当たりでグイグイいけるが度数は高めらしい。

何故、普通の酒が売られているのかと普通過ぎるが故に違和感を抱いて奴に聞いた事があった。すると奴はニッコリといい笑顔で…。

「コタくん。一番手っ取り早く相手と関係を発展させるにはねぇ。お酒が一番ッ。そしてこれなら相手がこちらを勘繰ってても美味しくて警戒も忘れてグイグイ飲んじゃうから知らず知らずのうちに酔ってベッドへGO!!って訳。」

「……なんて最低な商品なんだ。」

「まぁまぁ、コタくん。味は酒好きが喉から手が出る程美味しいらしいから一杯どう?」

「…俺は未成年だ。断る。」

「じゃあ、成人した後でぼ…。」

「断る…。その酒じゃなくてもテメェの前では絶対飲まねぇよ。」

それでもめげずに酒を進めてくる奴をぶん殴った。俺の中ではあの酒も充分忌々しい商品として記憶された。


まさか、その無駄で忌々しい記憶が役に立つ時が来ようとは…。なんとも複雑な気持ちでじゃらじゃらと鎖を揺らしながら獄塔を後にしたのだった。
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