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嘘
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「俺の負けだ。」
黒い甲冑に身を包んだ騎士が剣を地に置き、敗北宣言をする。はたと集中が切れ、拳を解くと歓声が四方八方から聞こえ、何故か私はコロシアムの中にいた。
まだダンジョンの中にいる心地が抜けず、空から差す太陽がとても眩しい。
門番のミノタウロスの喧嘩から始まり、確かそのまま魔王を決める大会にエントリーして五日間くらい寝ずにぶっ続けて戦い続けたんだっけ?
そう理解するとドッと身体が重くなり、痛みだし、休めと主張し始める。
これは何試合目だろう?
後何回勝てば魔王になるのだろう。
ぼやっとする頭で気が遠くなりそうになりながらも考え、拳を構えると目の前の騎士が苦笑する。
「貴殿の鬼気迫るような気迫は素晴らしかった。まさか、拙すら目に入らない程の集中ぶり…か。これでも俺はこの国一の強さだと自負していたのだが、世界とは広いものだ。」
地に置いた剣を手に取り、騎士は重い鎧をガシャガシャと音を立てながら私の前で膝をついた。
「覚えていないようなのでもう一度名乗ろう。我が名はラ・モール。先代の魔王から将軍の位をもらい、国防を担うもの。」
「は、はぁ。えーと、私はミドリと申します。…将軍様なんですね。そんなお強い方が相手なんて光栄です。」
「光栄…か。」
ペコリと頭を下げると困ったように眉を下げて笑う。
…あれ、もう試合終わったんだっけ?
今の言葉は取り方によれば失礼に当たってしまうだろうか??
そうだったら申し訳ない。
申し訳なさでわたわたとしているとラ・モールが吹き出し、剣をしまった。
「本当は新たな主人として剣を捧げようと思っていたのだが、貴殿の場合はこちらの方がいいだろうか? 」
立ち上がり、スッと差し出された手に首を傾げる。おずおずと手を重ねると力強く握られた。
「貴殿を友と認め、友の為にこの剣を振おう。新たな我等が王よ。魔を統べる者よ。」
ワッと歓声が上がり、拍手が注がれる。
『新魔王様。万歳。』。『魔王様。』と認められた瞬間、ブワリと湯水のように体の内側から魔力が湧き上がる。
その瞬間。
ホロリと感情が瞳から零れ落ち、地面に落ちた。
それは嬉しさと寂しさが混ざりあい、一粒の雫になり、地面で弾けた。
随分遠くまで来た気がする。
ゴブリンだった自分はコタに会い《ミドリ》となった。そして今、《魔王ミドリ》となったのだ。
ー やっと…、貴方に会える。コタ…。コタ。
もう何十年も会ってないような気分で何度もその名を何度も噛み締める。早く会いたい。でも、会うのが怖い。
それでも早く会わなければと魔王としての正式に称号を得るための儀式を終わらせるのに急いだがそれでもかなり時間が掛かってしまった。
ぽうっと手の甲の太陽の紋様が点滅する。
それはまるで今にも消えそうで弱々しい光だった。
急いで転移魔法を使い、ガウェインさんの所に飛んだ。しかし、そこに姿はなく、あの灰色の瞳が脳裏に浮かび、サッと血の気が引いた。
ー ダメだ。ダメだッ!!
貴方は必死に展開した探索魔法にも引っ掛からなかった。あまりにその命の炎が弱過ぎて今にも消えそうだったから。
血に濡れ、泥に汚れ、今にも手の届かない場所に連れて行かれそうな貴方をかき集めるように抱きしめた。
夜空色の瞳は虚ろで何処か違う場所を映している。
花の匂いが濃くなる。
命が赤い泉となって零れ落ちる度にコタの匂いを消し去るように強く。
遠くで誰かが泣き叫んでいる声が聞こえた。
最初は誰だろうと思っていたが、その泣き叫ぶ声は私の喉を揺らし出ていた。
ー 死なないで。
寒くなっていく体温。
揺らしても動かなかった仲間達。
嫌だ。嫌だ。
「本当は…、本当は貴方をっ…。」
こうなる前に助けたかった。こうなる前に貴方に想いを伝えたかった。
そう叫ぶ心に本当に馬鹿だと自分で自分が嫌になる。
『嫌われても良イ。もう二度と笑い掛けてもらえなくてモ、憎まれてモ、生きててくれるなラ。』
嫌われてもいいなんて嘘だ。もう二度と笑い掛けてもらえなくてもいいなんて嘘。憎まれてもいいなんてただの強がりだ。
本当はまだ夢を見ていたかった貴方と結ばれて幸せになれる夢を。愛しい貴方に口付けをして、そして貴方から私に口付けを返してもらえる。貴方に愛してもらえる幸せな夢。
止まない雨が瞳から振り続けて冷たくなる貴方を濡らす。冷たくなり、紫になった唇にそっと唇を重ねて貴方の為手に入れた魔力を注ぎ込む。
「愛してます。…愛して…いるんです。」
例え届かない想いだとしてもそれは消える事はなく、その身を焦がし続ける。いっそ、その炎でその身を燃やし尽くしてしまえば楽になれるんだろうか。
いや、きっと燃やし尽くされようともこの想いは消えないのだろう。治癒魔法を展開しながら今度は深く唇を重ねた。
黒い甲冑に身を包んだ騎士が剣を地に置き、敗北宣言をする。はたと集中が切れ、拳を解くと歓声が四方八方から聞こえ、何故か私はコロシアムの中にいた。
まだダンジョンの中にいる心地が抜けず、空から差す太陽がとても眩しい。
門番のミノタウロスの喧嘩から始まり、確かそのまま魔王を決める大会にエントリーして五日間くらい寝ずにぶっ続けて戦い続けたんだっけ?
そう理解するとドッと身体が重くなり、痛みだし、休めと主張し始める。
これは何試合目だろう?
後何回勝てば魔王になるのだろう。
ぼやっとする頭で気が遠くなりそうになりながらも考え、拳を構えると目の前の騎士が苦笑する。
「貴殿の鬼気迫るような気迫は素晴らしかった。まさか、拙すら目に入らない程の集中ぶり…か。これでも俺はこの国一の強さだと自負していたのだが、世界とは広いものだ。」
地に置いた剣を手に取り、騎士は重い鎧をガシャガシャと音を立てながら私の前で膝をついた。
「覚えていないようなのでもう一度名乗ろう。我が名はラ・モール。先代の魔王から将軍の位をもらい、国防を担うもの。」
「は、はぁ。えーと、私はミドリと申します。…将軍様なんですね。そんなお強い方が相手なんて光栄です。」
「光栄…か。」
ペコリと頭を下げると困ったように眉を下げて笑う。
…あれ、もう試合終わったんだっけ?
今の言葉は取り方によれば失礼に当たってしまうだろうか??
そうだったら申し訳ない。
申し訳なさでわたわたとしているとラ・モールが吹き出し、剣をしまった。
「本当は新たな主人として剣を捧げようと思っていたのだが、貴殿の場合はこちらの方がいいだろうか? 」
立ち上がり、スッと差し出された手に首を傾げる。おずおずと手を重ねると力強く握られた。
「貴殿を友と認め、友の為にこの剣を振おう。新たな我等が王よ。魔を統べる者よ。」
ワッと歓声が上がり、拍手が注がれる。
『新魔王様。万歳。』。『魔王様。』と認められた瞬間、ブワリと湯水のように体の内側から魔力が湧き上がる。
その瞬間。
ホロリと感情が瞳から零れ落ち、地面に落ちた。
それは嬉しさと寂しさが混ざりあい、一粒の雫になり、地面で弾けた。
随分遠くまで来た気がする。
ゴブリンだった自分はコタに会い《ミドリ》となった。そして今、《魔王ミドリ》となったのだ。
ー やっと…、貴方に会える。コタ…。コタ。
もう何十年も会ってないような気分で何度もその名を何度も噛み締める。早く会いたい。でも、会うのが怖い。
それでも早く会わなければと魔王としての正式に称号を得るための儀式を終わらせるのに急いだがそれでもかなり時間が掛かってしまった。
ぽうっと手の甲の太陽の紋様が点滅する。
それはまるで今にも消えそうで弱々しい光だった。
急いで転移魔法を使い、ガウェインさんの所に飛んだ。しかし、そこに姿はなく、あの灰色の瞳が脳裏に浮かび、サッと血の気が引いた。
ー ダメだ。ダメだッ!!
貴方は必死に展開した探索魔法にも引っ掛からなかった。あまりにその命の炎が弱過ぎて今にも消えそうだったから。
血に濡れ、泥に汚れ、今にも手の届かない場所に連れて行かれそうな貴方をかき集めるように抱きしめた。
夜空色の瞳は虚ろで何処か違う場所を映している。
花の匂いが濃くなる。
命が赤い泉となって零れ落ちる度にコタの匂いを消し去るように強く。
遠くで誰かが泣き叫んでいる声が聞こえた。
最初は誰だろうと思っていたが、その泣き叫ぶ声は私の喉を揺らし出ていた。
ー 死なないで。
寒くなっていく体温。
揺らしても動かなかった仲間達。
嫌だ。嫌だ。
「本当は…、本当は貴方をっ…。」
こうなる前に助けたかった。こうなる前に貴方に想いを伝えたかった。
そう叫ぶ心に本当に馬鹿だと自分で自分が嫌になる。
『嫌われても良イ。もう二度と笑い掛けてもらえなくてモ、憎まれてモ、生きててくれるなラ。』
嫌われてもいいなんて嘘だ。もう二度と笑い掛けてもらえなくてもいいなんて嘘。憎まれてもいいなんてただの強がりだ。
本当はまだ夢を見ていたかった貴方と結ばれて幸せになれる夢を。愛しい貴方に口付けをして、そして貴方から私に口付けを返してもらえる。貴方に愛してもらえる幸せな夢。
止まない雨が瞳から振り続けて冷たくなる貴方を濡らす。冷たくなり、紫になった唇にそっと唇を重ねて貴方の為手に入れた魔力を注ぎ込む。
「愛してます。…愛して…いるんです。」
例え届かない想いだとしてもそれは消える事はなく、その身を焦がし続ける。いっそ、その炎でその身を燃やし尽くしてしまえば楽になれるんだろうか。
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