その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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光はいらない②

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(ラヨネ視点)


ねぇ? 何で僕がアンタ達の為に奮い立たなきゃいけないの?
何で僕が虐げられている半獣人の為に国にクーデターを起こしてあげなきゃいけないの?
やりたきゃ自分でやりなよ。馬鹿なの?

盛大に心の中で毒を吐き、腕を組み見下すように冷え冷えとした目で彼等を見る。
その途端、半獣人は全員ビクビクして、山賊達は想いもよらなかった展開にオロオロしている。

「僕はこの先、未来永劫、誰かの光にはならない。僕は僕がしたいように生きるし、僕は国になんて興味ない。あんな国、さっさと隣国に滅ぼされればいいとさえ思っている。」

彼等にそう言い放ちながら自身の身勝手さに思わず苦笑する。

要は僕は僕の為に全て捨てるのだ。
先人達の想いも、父様達の願いも、半獣人達の想いも、僕を守って死んだ者達の想いも全て。全て捨てて歩き出す。

この旅路は国を救う事もなければ、誰かを救う事もない。ただ僕がコタと平穏に生きたいから邪魔な全てを破壊するだけ、奪うだけ。

僕はこの世界の人達は基本どうでもいい。コタ以外この世界にいらないとさえ本気で思ってる。


「僕は僕の尊厳を取り戻しに行くだけ。僕にもう二度と喧嘩を売りたいなんて思えなくなる程徹底的にね。」

「尊厳…。」

一切の期待も希望も持たせない程徹底的に言葉に棘を混ぜる。半獣人達は勿論ビクビクしていたが、一人の半獣人の少女が僕の言葉の一部をぽそりっと繰り返した。

何かに頭をぶん殴られたような衝撃を受けたように目をこれでもかと見開いて、その言葉を繰り返す声には羨望がのっていた。

「私もっ、私も取り返したいっ。私は生まれて来てよかったんだって。自分の思うままに生きていいんだってっ。」

フルフルと震える手を祈るように握り、半獣人の少女は叫ぶ。その言葉に呼応するようにまた一人、また一人とその諦めの色を浮かべていた瞳に火を灯らせる。

そしてそれは伝染する。

「俺も俺として生まれて来て良かったんだと心から思いたい。お袋に俺を狼犬の獣人として産んで良かったんだと思ってもらえる世の中が良い。別に俺達の為に戦えなんて言わねぇ。…ただ、俺達も王子さんの旅に同行させて欲しい。」

冷たい色の筈のアイスブルーの瞳にもその火は灯る。

雨の中でも消える事なく、次々と予期せず灯っていく希望の光。きっとこれを見たら死んだ父様は喜んだだろう。…僕は迷惑だけど。

腹立たしくてタシタシと尻尾が濡れた地面を叩く。溜息を盛大に吐くと彼等に背を向け、アシェルへと歩き出す。

「……勝手にすれば。僕は邪魔になったら捨て置くからね。面倒見てやる義理もないし。」

まぁ、使えるものはとことん利用してやれば良い。

半獣人が三十四人、山賊が二十八人。
意図せずして大所帯になってしまったアシェルへの旅路。このとてもどうでも良い繋がりが死ぬまで続く事を今の僕はまだ知らない。


森を抜けると丘になっており、眼下にはアシェルの街並みが広がっていた。
意外にも久々に見た祖国に感じるものは何もなかった。

森まで来ていたというアシェルの騎士達と出会う事も不思議な事になく、街に向けて足を踏み出した。

しかし、森を出るまでに解決出来なかった気掛かりな事が心に引っかかり、もう一度森の方を振り向いた。


ー 全く。あんなに煩わしい程煩かった癖に。

思わず漏れる溜息と苛立ち。
森を抜ける間も態々、気配を探りながらここまで来たというのに見つけられなかった手の掛かる男に向けて盛大に舌打ちした。

僕達を庇い、腕に傷を負い、未だに行方不明のはた迷惑なあの男に。






晴れているというのに雨は降り続ける。

一人の半獣人の少年が新たな未来へ突き進もうと踏み出した最中も。森の奥で巨体を抱え、身の内に渦巻く恐怖と違和感と戦っている最中でも。

それは時に半獣人の少年の匂いを消し、少年を狙う追っ手から守り。
それは時に苦しむ一人のオークの体力を削り、窮地へと追いやる。

ー 寒…かと。

ブルリと巨体を震わせて、キラキラと降り注ぐ雨粒が地面で弾けるのを虚な瞳が映す。

弾けた雨粒の残骸は地面に吸収される事なく、自分の動かぬ身体の隣で水溜りとなった。

それは透明なただの水溜りの筈だ。
それなのに目の前の水溜りは赫く、もしかしたら弾けたのは雨粒ではなく、自身なのではないかとふと思った。

全てがその赫で染まっていくような気がした。身も心も世界も大事だったものも全て。

それは駄目だと天を仰ぎ、手を伸ばす。
しかし、その手もやがて力尽き、雨粒達のように地面へと叩きつけられた。
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