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大好き
しおりを挟む次に目を覚ましたのは空が赤々と夕暮れ色にしまった頃。
今日も人族領付近のカチコミに行こうと思っていたのにもう今日が終わっていく。
嘘だろと身を起こすと何時の間にやら俺の横にラヨネが気持ちよさそうにくっついて寝ていた。
その顔や腕には朝になかったガーゼが張り付けてあり、何時の間にやら怪我をしたよう。時折寝言で「くそっ。全然当たらない…。」と悔しそうな顔を浮かべる。また俺の寝ている間に何かあったみたいだ。
「まぁ、傷は男の勲章だからな。」
夢でも悔しがっている所を見ると一方的にやられているというよりは果敢に向かって行ったんだと思われる。相手は確実にあの変態だろうし、ガーゼで手当てをしたのもあの変態だろうから返り討ちにした程度だと予測出来る。
あまりに悔しそうに唇を噛むので、恐る恐る撫でてあやしてやるとふにゃりと幸せな笑顔を浮かべて、ぱたぱたと満足げに尻尾を振っていた。
その幸せそうな顔に少しミドリを重ねながら先程のやり取りを思い起こす。
ー アイツは結局何が言いたかったんだろうな…。
あの変態は何か意味深な事を時折言うが、それをきちんと相手に伝える気がない。そこがまたハッキリしなくて癪に触るが、それを何度問いただしても結局の所、口を割った試しがない。
ただ分かるのはあの変態が「ごめん。」と素直に謝るって事は相当な事をやらかした。…いや、今もやらかし続けている。俺絡みで。
ー なら、きちんと伝えろや。
謝るくらいなら伝えて欲しい。
しかし、奴は殴ろうがしつこく聞こうが口を割らない。変態ってだけで十分面倒なのになんて面倒臭い奴なんだ。
苛立ちに任せてわしわしと頭を掻く。
そもそもなんで俺が大事な舎弟であるミドリの話を切り捨てるような真似をすると断言されたのも腹が立つ。
ー 俺がなんでミドリを否定しなきゃいけねぇんだよッ。
ミドリが何かを腹ん中に抱えている事は知っている。何を言われるのかは知らないが、あの努力家で謙虚な奴の言葉を一刀両断なんて出来る訳ない。
ふうっと怒りを息とともに吐き出して、今度こそベッドから起き上がる。時間的に変態の店の店番をする時間。腹は立つがそれでも自分の仕事はきちんとこなすべきだ。
ベッドから降りるとラヨネの小さな手がぎゅっと俺の服の裾を掴んでいた。
「コタ…。大…好き。」
むにゃむにゃと呂律の回らない口から紡がれる好意の言葉。
ふわふわと心が弾み、自然と頬が綻ぶ。
「そういうのは好きな女が出来たら言ってやれよ。」
布団を首までしっかりと被せて、ポンポンッと背を軽く叩く。
怒りは完全に何処かに消え、足取り軽く扉をくぐった。
「僕はコタしか好きにならないよ。」
ふと、後ろから声が聞こえて振り返ったが、ラヨネは依然、布団を被って寝たままだった。
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