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山賊の根城

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大木をメキメキと引っこ抜いたモモ。
その姿に一抹の不安を覚え、声を掛ける。

「おい…。それは流石に豪快過ぎっ…。」

「たのもーッ!! 」

大木を担ぐと身体のバネを最大限に活かして、槍投げの選手顔負けのホームで大木を門めがけて投擲した。

門は大木の衝突で倒壊し、それでも勢いが殺せなかった大木は古城に突き刺さった。


「ぎゃあぁぁあああッ!!? 」

「木ッ!? え!!? なんでいきなり木が飛んできて……え??? 」

古城の中はたちまち阿鼻叫喚。
何が起こったか理解出来ず、バタバタと混乱しているのが、まだ門を通ってなくてもヒシヒシと伝わってくる。

「ふぃー。肝ば、据わっとらん男ばダメとね。」

「肝が据わってる奴でもいきなり木が住居に刺さりゃあ、ああなるとは思うけどな…。」

「コタの旦那ば、驚かんとよ。」

「期待に満ちた目で無茶振りすんな。」

盛大にやらかした後だというのにその目は産まれたての赤ん坊並みに綺麗な目をしてやがる。山賊達に少しばかり同情の念を寄せながら、崩壊した門を潜り抜けた。







「敵襲ーーーッ。敵襲ぅーーー!!! 」

そう犬の獣人が遠吠えのように何処までも通る声で叫ぶ。
するとうじゃうじゃと人相が悪いがモフモフな獣人達が襲いかかってきた。

犬に羊に兎等、結構可愛いどころの面子な筈なのに顔はヤのつく家業の人並みに凶悪な顔をしているから躊躇なく拳を振るえる。…が、倒れる背中をみるとモフモフでまんまる尻尾が可愛いかったりして弱い者いじめしている気分になる。

「なんか複雑だな…。」

伸した兎の獣人がうつ伏せで倒れている姿を見て、複雑な気分を抱きながらも地味に鋭い爪やら牙やら短剣ヤッパやら振りかざしてくるので取り敢えず伸す。

ー 物足りねぇ…。

俺が期待していたのはライオンやら虎やら強そうな獣人。しかし実際は草食獣が多め。山賊なら狼くらい居てもいいと思うんだけどなと溜息をつく。

チラリと隣で喧嘩しているモモを見るとどうやらモモも物足りないと思っているようで獣人を伸しながらもその顔は微妙な表情。

ついには我慢出来なかったのか声を上げた。

「熊の獣人ば居なかと? 自分やコタの旦那より強い熊の獣人でユニコーンに乗って、巨根を兼ね備えたのば居ないとよ? 」

口を尖らせムウッとした顔で獣人達を見るモモ。
そのモモの発した言葉に俺も含めてその場の全員が顔が引き攣る。
お前…、ブレねぇな。


「ふざけんなよッ。熊の獣人は貴族階級しかいねんだからこんなトコ居るわけねぇだろッ!!! 」

「ユ、ユニコーンに乗った…?? 熊の獣人じゃなくてもいねぇよ。ユニコーンに乗れる獣人なんてッ!! 」

「きょ、巨根って今関係ある?? 」

呆気に取られていた獣人達はハッと我に帰ると怒涛の如く反論する。
しかし、それでも納得がいかなかったのか。その矛先はモモだけでなく、俺にも向く。

「大体。なんで猿の獣人の劣化版たる人族がオーク従えてんだよ!! 」

「そうだ。そうだ。…ん?? そもそもソイツ、オークなの?? 獣人とオークの間くらいの風貌じゃね? 」

「うーん、どうだろ?? …いや、そんな事どうでもいい!! ソイツの保護者ならきちんと管理しろよっ。失礼にも程があるだろッ。」

犬以外の獣人も何か堰がきれたようにキャンキャンと喚く。

保護者? 管理?? 
俺はモモの保護者じゃねぇし、思想に関しちゃ管轄外だろ。何を思おうが本人の自由だしな。
大体な……。

「文句があんなら拳で解らせろ。」

自分の意思を通したいなら行動で示せ…だ。

ニッと口角を上げ、来いよとクイクイッと手で挑発する。すると獣人達は怒りに毛を逆立たせ、一斉に襲いかかって来た。だが…。

「やっぱ、物足りねぇ。」

たった一撃蹴りを入れただけで次々と伸びるもんだから骨がない。
終いには俺達に勝てないと判断したのかビビり、一人逃げた。

「お、お頭ぁ!! 助けて、お頭!!! 」

犬の獣人の癖にピーピーと鳥のように泣きながら何もない壁を一心不乱に叩いた。
最初は気でも触れたかと思っていたが、カコンッと音が響いた瞬間、何もなかった筈の壁が横にスライドして隠し通路が出来た。

何だそれ。カッコイイじゃねぇか、と感心していると犬の獣人はその通路を泣きながら駆けていく。

「追うと? 」

「追う…っていうよりは隠し通路が気になるな。」

「隠し通路…。確かに魅惑的な響きとよ。」

「分かるじゃねぇか。」

「こんでも男の子と。」

完全に当初の目的を見失い。
冒険心に駆り立てられて隠し通路を進んでいく。もうこれで隠された財宝なんてあったら完璧だな、と隠し通路の奥の扉を開けた。…が、待ち受けていたのは財宝なんて生易しいものじゃなかった。


こちらを見る怯え切った瞳。
重厚な首輪に。身体に見合わない小さな檻。彼等は人間の身体に生えた動物の耳と尻尾をブルブルと震わしながらそこにいた。
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