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エルフという名の変態②

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「ガッ!? @#a_/&!!? 」

蹴りは見事に奴の股間に入り、奴は股間を押さえて言葉にならない悲鳴を上げながらのたうちまわった。その隣ではこの変態を必死に止めようとしていたミドリが真っ青な顔で同じように股間を押さえている。…言っとくが、謝んねぇからな!?

「ぐうぅ…。元気になって良かったね…。うぅ…。でも、言っとくけど、君、本調子じゃないからねぇ。…後、僕、君の命の恩人だよ。酷くない!? …うぅ。」

「知るかッ。て、テメェがっ、そうさせたんだろうがッ。人の寝てる間にな、何をしようとした!? 」

動揺で情けなく声が上擦る。
布団をかき集めて露わになったソコを必死に隠す。

こんな堂々としたわいせつ行為、初めてだった。いや、そもそも男相手に何しようとしてんだ、コイツ!!

「うぅ…。エルフは探究する生き物でね。これはエルフの性なんだよ。」

「何を探究しようとしてんだ、ド変態…。」

「生命はどう生まれてくるかを突き詰めた結果、セックスの研究に行きつき、ここ三百年は趣味と実益を兼ねて、より気持ちよくなれる方法を探究してる。」

「別に聞いちゃいねぇよ。それを俺で試すなっ。」

今度は殴ってやろうかとシーツを巻いて下半身を隠しながら拳を振り上げるとミドリが立ち塞がって変態を庇う。…退け!! ソイツをぶん殴んなきゃ俺の気が収まらねぇ。


「どうしようもない変態だけド、この人は今のコタが生きるには必要な人だからダメ。」

ポロポロと変態を庇うミドリの瞳から大粒の涙が溢れる。その涙にギュッと良心が痛み、怒りと羞恥心がスッと引いていく。

「ひとりに…しないでっ…。」

わんわんと泣くその姿は仲間を人間に奪われた時と同じだった。

白龍の所で倒れたのは覚えている。
あの先程見た夢は、身体から熱や感覚が消えていくあの感覚は死んでいく感覚だったんだろうか。


「……ソイツが生きるのに必要ってどういう事だよ。」

一つ溜息をつき、その場に腰を下ろす。
すると堰きが切れたかのようにミドリが震える身体でしがみつくように抱きついた。
その姿に心が揺れ、一瞬、抱き返そうかなんて血迷った事を思ったが、グッとその考えを抑え込み、頭を撫でるだけに留めた。…男同士であんまベタベタすんのもな。

その光景を見て、先程まで股間蹴られてのたうち回っていた筈の変態が「へぇ…。」とニマニマと笑いながら声を漏らした。

「……なんだよ。ニマニマと気持ち悪い。」

「ふふっ。いや、なんでもないよ。…言ったら今度は殴られそうな気がするしねぇ。」

「……殴られるような事考えてんのか。」

「ちょっ。拳を振り上げないでよ!? ちょっと微笑ましくて可愛らしいと思っただけだよ!! 」

あはは、と誤魔化し笑いを浮かべながら変態はまだ痛いのか股間を庇いながらベッドの近くにあったテーブルの上に置いてあったティーポットを手に持った。

腰に佩いている剣の鞘でティーポットをトントンッと叩くと青い光と赤い光がティーポットを包み、注ぎ口から湯気が立ち込める。
何処からか取り出したか分からない三つのティーカップにふんわりと花のような香りとともに黄色みがかったお茶が注がれる。

「手品…。」

「て、手品…。もしかして魔法の説明から始めなきゃいけない感じかな。本当に君は全くこの世界を知らないのかな!? 」

「おそらく俺がいた日本でも地球でもない何処か。」

「成程。この世界に数ヶ月居たのにその程度の認識なんだね。本当に喧嘩ばっかだったもんね、君!! 」

お茶を渡しながら「全く、もう。」溜息を溢す。
コイツといい、あの白龍といい、まるでずっと俺を見ていたみたいな言い方をする。まさか、ストーカーかと眉間に皺を寄せると鼻をスンスンと啜るミドリにお茶を渡していた変態がスッと俺から距離を取った。

「……先に言っておくけど、僕もランスロットも別にストーカーではないからねぇ。この世界に召喚された君をずっと見守ってただけだから。」

「………。」

「ねぇ、無言はやめてよ!! 本当だってッ!! …僕達は千年以上長い時間をこの世界で生きているから世界の変化に気づき易いんだよ。君が来た時、この世界の次元が揺らいだからすぐ分かったんだよ。君を見守ってたのは善意だよ、善意!! 」

慌てて否定する所が更に怪しいがそこをいちいち突っ込んでいると話が長くなりそうだ。

やっと見つけた自身のズボンと下着をはきながらしょうがないので変態の話を聞いてやる。

「ねぇ…、聞く態度がとってもガラ悪いよ。膝立てながら肘ついて聞くって聞く態度としてどうなのかな!? ちょっ、その疑わしいものを見る目をやめてッ。」

聞く態度がなってないと変態がギャンギャンうるさいが、知ったこっちゃない。俺だってコイツがまともな奴だったら背筋正して聞いてやっただろうよ。

ぐすんっと地味に癪に障る泣き真似をしたが、俺が一切態度を崩さないので飽きたのかやめ、大人しく席に座った。
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