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白龍
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喧嘩はやはり相手が強ければ強い程面白い。
圧倒的な強者を前にして心躍るような高揚感が全身から湧き上がる。
身体は辛いが、その高揚感の前では不調など些細な事。
ミドリも最初は突如現れた森の中最強の白龍の出現にビビっていたが、フッとひとつ息を吐くと覚悟を決めた表情へと変わった。
まさかこんなにも早く念願が叶うとは思わなかった。
状況はよく分からないが、おそらく、俺達はこの白龍に呼び出しをくらってここにいる。
きっと俺達の魔物達へのカチコミが功を奏して、この白龍の目に止まったのだろう。
「俺は西高の番長、辻琥太郎だ。こっちは舎弟のミドリ。呼んだって事は果たし合いの意思があるって事だな、白龍。」
何時でも来いと拳を構えるが、白龍は「果たし合い? 」と長い首を傾げて呟いた。…違うのかよ。
「本当に今世の《選帝の獣》は異色なのだな。召喚されてからというもの人や魔物と喧嘩ばかりしていたと思えば、我輩にも牙を剥くとは……。」
白龍がこちらを見て、態とらしく溜息をつく。
さっきからコイツの言ってる事が何言ってんだか分からない。しかし、その態度と声色からして明らかに俺に対して呆れているのが分かる。……なんだろうな。トリなんちゃらよりかは、かなりマシだが鼻につく。
「野蛮だ。実に野蛮。召喚する人材を間違えたとしか我輩は思えんのだ。」
「ああ"!? さっきから黙って聞いてりゃあ、いけしゃあしゃあと人を罵倒しやがって!! 訳の分かんねぇ事グダグダ言ってんじゃねぇ。」
「その上、知能は鳥並み。自身の置かれている状況を理解する頭を持っていないと見える。…全く、嘆かわしいッ。」
「よーし。テメェ、少しその口閉じろ…。でねぇと二度と開けねぇようにしてやる。」
「お、落ち着こうヨ…。二人とモ。」
ワタワタと慌てるミドリを挟んでバチバチと火花が散る。やっぱり、コイツもトリなんちゃらと同じくらい鼻につく。
バキバキと指を鳴らして臨戦態勢を取る。
しかし、拳に力を入れた一瞬、ぐにゃりと視界が歪んだ。
ー こんな時に…。
身体が重い。痛い。怠い。苦しい。寒い…。
「本当に鳥並みの知能だ。自身が死に掛けている事にすら気付かないとは。」
地面に吸い寄せられる身体を誰かが抱きとめた気がした。
ガチガチと震えるような寒さとともに遠ざかっていく視界に緑色が揺れた。
「ミ…ドリ。」
大丈夫だから余計な心配はすんなよ、そう声を掛けようとしたが、言葉になる前に意識は深く沈んでいった。
◇
白い鱗がハラハラと空から降ってくる。
大きな白龍の身体は舞い散る鱗とともに姿を消し、白龍が立っていた場所には一人の青年が姿を現した。
白い長い髪を風に靡かせ、宝石のような青い瞳は呆れの色が浮かび、ふらりと倒れる琥太郎の姿を映した。
「本当に鳥並みの知能だ。自身が死に掛けている事にすら気付かないとは。」
地面に倒れ込む琥太郎のその身体を受け止めると、今にも泣き出しそうなゴブリン……というには人に近い姿をした生き物がパタパタと駆け寄り、ペタペタと琥太郎の顔を心配そうに触れていた。
「ミドリと言ったか。名を与えられてゴブリンから逸脱したのだな。」
名は体を表す。
そんな言葉がある程、名とは生き物にとって特別なもので、名を得る事でその存在は個として確立する。
本来、名を持たぬ魔物が名を得た事でミドリという個体として確立されたのだろうと青年は考察する。
「コタっ。コタッ!! 起きてヨ、コタ。」
緑色の顔を真っ青にして琥太郎を揺するミドリに、本当に何もかもも異色だと苦笑すると目に見えて体調が悪化していく琥太郎を雑に肩に担いだ。
「うわぁ!? コタが死んじゃうっテ!! 白龍様。」
担がれた琥太郎を心配して、ぴょんぴょんっと跳ね、なんとか琥太郎を降ろそうとするミドリを前に青年は目を丸くした。いや、正しくは自身の正体を素早く理解したミドリのその頭の良さに。
「…成程。貴様が…か。なんだ、この阿呆も一応はきちんと使命を果たしているのだな。」
一人で白龍は何かを納得して、琥太郎の持ち方を改め…ようとしたが、途中で面倒臭くなり、ポイッと投げた。
「白龍さまぁ!!? 」
「後の事は奴に聞け。……我輩に男を介抱する趣味はないのだ。」
慌ててミドリは琥太郎が地面にぶつからないように下敷きになってでも抱き止めようと飛び込んだ。すると待っていたのは硬い地面ではなく、ふわりと雲のように柔らかい感触だった。
気付けばミドリと琥太郎は柔らかなベッドの上に倒れていた。
遺跡のような景色も白龍の姿も消え去り、眼下に広がるのは誰かの部屋。
目を瞬かせて、ひたすら突然の瞬間移動に困惑していると、ガシャンッと背後から何かが割れるような音がして後ろを振り向いた。
圧倒的な強者を前にして心躍るような高揚感が全身から湧き上がる。
身体は辛いが、その高揚感の前では不調など些細な事。
ミドリも最初は突如現れた森の中最強の白龍の出現にビビっていたが、フッとひとつ息を吐くと覚悟を決めた表情へと変わった。
まさかこんなにも早く念願が叶うとは思わなかった。
状況はよく分からないが、おそらく、俺達はこの白龍に呼び出しをくらってここにいる。
きっと俺達の魔物達へのカチコミが功を奏して、この白龍の目に止まったのだろう。
「俺は西高の番長、辻琥太郎だ。こっちは舎弟のミドリ。呼んだって事は果たし合いの意思があるって事だな、白龍。」
何時でも来いと拳を構えるが、白龍は「果たし合い? 」と長い首を傾げて呟いた。…違うのかよ。
「本当に今世の《選帝の獣》は異色なのだな。召喚されてからというもの人や魔物と喧嘩ばかりしていたと思えば、我輩にも牙を剥くとは……。」
白龍がこちらを見て、態とらしく溜息をつく。
さっきからコイツの言ってる事が何言ってんだか分からない。しかし、その態度と声色からして明らかに俺に対して呆れているのが分かる。……なんだろうな。トリなんちゃらよりかは、かなりマシだが鼻につく。
「野蛮だ。実に野蛮。召喚する人材を間違えたとしか我輩は思えんのだ。」
「ああ"!? さっきから黙って聞いてりゃあ、いけしゃあしゃあと人を罵倒しやがって!! 訳の分かんねぇ事グダグダ言ってんじゃねぇ。」
「その上、知能は鳥並み。自身の置かれている状況を理解する頭を持っていないと見える。…全く、嘆かわしいッ。」
「よーし。テメェ、少しその口閉じろ…。でねぇと二度と開けねぇようにしてやる。」
「お、落ち着こうヨ…。二人とモ。」
ワタワタと慌てるミドリを挟んでバチバチと火花が散る。やっぱり、コイツもトリなんちゃらと同じくらい鼻につく。
バキバキと指を鳴らして臨戦態勢を取る。
しかし、拳に力を入れた一瞬、ぐにゃりと視界が歪んだ。
ー こんな時に…。
身体が重い。痛い。怠い。苦しい。寒い…。
「本当に鳥並みの知能だ。自身が死に掛けている事にすら気付かないとは。」
地面に吸い寄せられる身体を誰かが抱きとめた気がした。
ガチガチと震えるような寒さとともに遠ざかっていく視界に緑色が揺れた。
「ミ…ドリ。」
大丈夫だから余計な心配はすんなよ、そう声を掛けようとしたが、言葉になる前に意識は深く沈んでいった。
◇
白い鱗がハラハラと空から降ってくる。
大きな白龍の身体は舞い散る鱗とともに姿を消し、白龍が立っていた場所には一人の青年が姿を現した。
白い長い髪を風に靡かせ、宝石のような青い瞳は呆れの色が浮かび、ふらりと倒れる琥太郎の姿を映した。
「本当に鳥並みの知能だ。自身が死に掛けている事にすら気付かないとは。」
地面に倒れ込む琥太郎のその身体を受け止めると、今にも泣き出しそうなゴブリン……というには人に近い姿をした生き物がパタパタと駆け寄り、ペタペタと琥太郎の顔を心配そうに触れていた。
「ミドリと言ったか。名を与えられてゴブリンから逸脱したのだな。」
名は体を表す。
そんな言葉がある程、名とは生き物にとって特別なもので、名を得る事でその存在は個として確立する。
本来、名を持たぬ魔物が名を得た事でミドリという個体として確立されたのだろうと青年は考察する。
「コタっ。コタッ!! 起きてヨ、コタ。」
緑色の顔を真っ青にして琥太郎を揺するミドリに、本当に何もかもも異色だと苦笑すると目に見えて体調が悪化していく琥太郎を雑に肩に担いだ。
「うわぁ!? コタが死んじゃうっテ!! 白龍様。」
担がれた琥太郎を心配して、ぴょんぴょんっと跳ね、なんとか琥太郎を降ろそうとするミドリを前に青年は目を丸くした。いや、正しくは自身の正体を素早く理解したミドリのその頭の良さに。
「…成程。貴様が…か。なんだ、この阿呆も一応はきちんと使命を果たしているのだな。」
一人で白龍は何かを納得して、琥太郎の持ち方を改め…ようとしたが、途中で面倒臭くなり、ポイッと投げた。
「白龍さまぁ!!? 」
「後の事は奴に聞け。……我輩に男を介抱する趣味はないのだ。」
慌ててミドリは琥太郎が地面にぶつからないように下敷きになってでも抱き止めようと飛び込んだ。すると待っていたのは硬い地面ではなく、ふわりと雲のように柔らかい感触だった。
気付けばミドリと琥太郎は柔らかなベッドの上に倒れていた。
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