その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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舎弟と名付け

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そよそよとマイナスイオン満載の空気が漂う森の中。そんな空気を木の枝が燃えた二酸化炭素で汚しながら脂の焼ける良い匂いがする焼き魚に齧り付く。

「…塩が欲しい。」

先程、釣った川魚をそのまま焚き火で焼いただけの焼き魚。そんなもんにそもそも塩味もある筈がなく、ひたすら自然のままの魚の味に味気ねぇなと少し残念に思いながら胃に落とした。

もう一度、焼き魚を齧りながら、やっぱ一度、人の居る町にでも行くべきかと思案し、チラリと隣でご馳走でも食べているように至福そうな顔をしているゴブ…なんとかをみる。

ゴブ…なんとかはこちらの視線に気付くと、もう一本食べると言いたげに焼き魚を俺に渡してくる。

「いや、オマエが食えよ。小させぇんだから遠慮せずに食え。」

そう譲ってやるとゴブ…なんとかは感謝の表情を浮かべて、嬉しそうに両手に焼き魚を持ち、ガツガツ食べている。その姿に味気のない魚を食べながら苦笑した。




勇者一行風の人間達と喧嘩してからあれから三日経った。

今、俺は一人になっちまったこのゴブ…なんたらを放って置くのも無責任に感じて、ゴブ…なんたらの集落だった場所で二人で暮らしてる。


ー 別に行く当てもねぇしな。

正直、あのトリ…なんとかはもう一発殴りたい気持ちはある。だが、情けない話。今は生きていくのに精一杯だ。

ー この魚もゴブ…なんたらが取ったしな。

喧嘩喧嘩の毎日で今までサバイバルなんてやった事がなかった人生。だから、魚も満足に獲れねぇ。今の状態はこのゴブ…なんたらに養ってもらっているようなもんだ。…これ、味気がねぇとか文句を言う資格もねぇな。

ー はぁ…、情けねぇ…。

クルクルと焼き魚の串代わりの枝を回しながら溜息をつく。

ヒモなんてごめんだ。
養ってもらわないと生きていけない情けない男に成り下がるなんざごめんだ。


「やっぱ、塩どうこうは置いといても一回街に降りるべきだな。」

働かざるもの食うべからず。
そう決心をして、骨まで全て食べると木の枝を折り、拳を握る。

街に出れば仕事の一つ二つくらいはある筈。


そう思い立ち。
ゴブ…なんたらに「ちょっくら、街に行ってくる。」と声を掛けた瞬間、全力で泣かれた。

足にしがみ付き、これでもかと言うくらい泣きじゃくり、まるで「捨てないで。」と言わんばかりに首を横に振り続け、拒否する。

「直ぐ戻ってくるって。」

「グギャギャッ!! グギャ。」

「……これじゃあ、俺が泣かしてるみてぇじゃねぇか。」

諦めてその場に座るとゴブ…なんちゃらは泣き止み、嬉しそうに隣に座る。…ついでにこのやりとりはもう二十回目。

ゴブ…なんちゃらはとにかく俺が離れる事を泣いて嫌がる。少し水浴びに離れた時も、トイレ行こうとした時すらも嫌がり、少し視界から消えれば絶望の表情で泣きながら俺を探す。

どうやら俺を死んだ仲間と重ねているみてぇ。
だから余計、男がメソメソするんじゃねぇ、どんと構えていやがれ…なんて一喝も出来ねぇ。


ギュッと小さな緑色の手がすがるように俺の服を掴み、安堵の表情を浮かべている。その姿に言い掛けていた言葉を飲み込み、ギュッと口をつぐむ。

男があんまりベタベタすんなと言いたかったが、ガキが誰かに甘えるのは当たり前。きっと、このゴブ…なんちゃらはこんなに小せえんだからなんかの魔物の子供だろう。

しかし、子供なら余計にこのゴブ…なんちゃらを一人にして泣かせる訳にはいかねぇ。

ー 腹括るか。

ワシワシと髪を掻き、バシッと両頬を両手で挟むように叩いた。

いきなりの出来事にゴブ…なんちゃらがビクッと身体を震わせた。しかし、赤くなった俺の頬を見ると慌て始めた。

「グゲ!? ゲゲゲ!!?? 」

「落ち着けよ。ちっと、気合入れただけだろ。」

「グゲゲゲ。」

何を言っているかは全く分からねぇが、とにかく心配してくれているらしい。小さな緑色の手が痛々しげに優しく頬を撫でるのを見て、苦笑を浮かべた。

仲間の為に立ち向かった事といい。
コイツは相当出来た奴らしい。

「お前。俺の舎弟にならねぇか? 」

「グゲ? 」

「俺が喧嘩の稽古をつけてお前を立派な男にしてやる。…その代わりにお前は俺にサバイバルの仕方を教えろ。魚一匹取れねぇなんざ、情けねぇからな。」

「グゲ!! 」

分かったと言わんばかりにゴブ…なんちゃらが頷く。泣かれて離れなれないなら腹括ってサバイバルの仕方を覚えちまった方が早い。


子供との約束といやぁ、アレだよなと思い立ち、ゴブ…なんちゃらの前に小指を差し出した。

「グゲケ? 」

「ゆびきりげんまんだ。俺はお前を孤独にするような真似はしねぇ。約束破ったら容赦なく腹に三発。手加減すんなよ。」

ゴブ…なんちゃらの小指を絡め、こうやるんだと見せる。ゴブ…なんちゃらが俺の話を分かっているかは謎だが、ニコニコと嬉しそうに俺の動きに合わせて腕を振った。

「これでお前は舎弟な。……そういや、お前、名前なんて言うんだ? 」

舎弟の名前くらい知らなきゃダメだなと聞いてみたが、ゴブ…なんちゃらは首を横に振った。どうやら、名前はないらしい。

「じゃあ、俺が付けてやるよ。肌が緑色だから今日からお前の名前はミドリな。」

「み……ど、り? 」

「そうミドリ。…なんだよ、お前。グゲ以外も喋れんのかよ。」

「ボク……、ミドリ。」

嬉しそうに自身の名前を呟くミドリは、心なしか先程より何処か頼もしい顔に変わった気がする。……まぁ、気の所為だな。


名前をもらって、はしゃいでいたミドリがふと、ピッと俺を指さす。

「ナマエ。」

「あん? ……ああ。そういや、俺、名乗ってなかったな。西高の番長辻琥太郎。」

「こたるぉ?? …こたる…。コタ? コタ!!! 」

ギュッと抱きついて嬉しい気持ちを身体全体で表現するミドリ。正直、ガキには怯えられた事しかねぇから反応に困る。舐められたくねぇから、何時もメンチ切ってたしな…。

ー ま、悪い気はしねぇけど。

何度も自身の名と俺の名を繰り返してはしゃぐミドリを見て、そう少し照れていたが……。


「コタ、ダイスキ。ボク、ガンバル。」

「ああ。精進しろよ。」

「イッパイ、ガンバッテ、コタのヤクニ立つ。」

「………なぁ。なんかスゲェ速さで言葉が流暢になってないか? 」

気の所為か?
言葉もそうだが、背が地味に高くなってる気がするのは…。

きっとそう見えるのはコイツがきっと名前を得て、しゃんと地に足をつけたからに違いない。この一瞬で男を上げたんだ、コイツは…。

急加速で成長し続ける舎弟を前にそう無理矢理結論付けた。
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