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左の道

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「なんだなんだ。せっかくびっくりさせようと思ってたのに。」

ケイジは、大袈裟にむくれて見せる。 



あれから、俺は、幸の経営する店に連れていってもらった。 
『ヴォルケイノ』という名前のレストランだった。 



「この名前にすれば、いつか翔さんがみつけてくれるんじゃないかって思ってね。」 


幸はそう言って微笑んだ。



壁にかけられたメニューは、懐かしい幸の文字だった。
ヴォルケイノなんて店名とはおおよそ不似合いな、カントリー調の可愛らしい店だった。
店には『貸し切り』の札がかけられた。 



まだ興奮も覚めやらず、何を話したら良いのか三人でまごまごしているうちに、ケイジがやってきた。 
ケイジは昔と変わらず、明るく立ち居振る舞いがスマートで、それに加えて、環境のせいなのか、貫禄のようなものも付いていた。



「で…もちろん、結婚するんだよな?」

ケイジの言葉に、俺はコーヒーを吹き出しそうになった。 
ふと見れば、翼は目を丸くし、幸は静かに微笑んでいた。



「なんとか言えよ。
おまえ…今でも幸のことが好きなんだろ?」

ケイジの奴…調子に乗りやがって。 
俺は、年甲斐もなく顔が熱くなるのを感じた。
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