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タイムトリップ

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あいつは、平均的なファンよりは年上だ。 
それは一目でわかる。
おそらく、俺よりも年上だろうと思ってはいたが、自己紹介によると5つ年上だそうだ。



つまりは三十路。 
だからどうってことはない。 
年齢なんて何の意味も感じない。
仕事は事務をしているらしい。 
まさに見た目通りだ。 



その次のライブの時、俺はそのリストバンドを付けて出た。 
特別な理由はない。 
ただ、格好良いものだったから、付けただけのことだ。 
その日の出待ちで、あいつは『ありがとう』って言った。潤んだ目をして…
その時の俺は、何故ありがとうなんて言われるのか、まるでわからなかった。



受け取ったクッキーの袋に入っていた手紙を読んで、ようやくその理由がわかった。 
あぁ、そうだ。
リストバンドはあいつからもらったんだって思い出した。
使ってくれてすごく嬉しい!と書いてあった。
それはいつものように便箋ではなく、チラシの裏に書いてあった。 
おそらく、ライブの後に書いたんだろう。



そんなこと、口で言えば良いのに… 
古風というのか、なんというのか… 
でも、いつ見ても、本当に綺麗な字だ。 
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