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*
「聖子…君がこんなことをするなんて信じられないよ…」
家に連れ帰られた私は、暴力を受けるかもしれないと覚悟していたけれど、彼はいつもと変わらず物静かだった。
「でも、無駄だよ。
君のご両親には、君が心の病気だって話してあるから。
お義母さんはすぐに僕に電話をくれたよ。
そのおかげで目が覚めた。」
愕然とした。
母はお茶をわかすふりや着替えると言って、こっそり彼に連絡していたんだ。
せっかく…決死の想いで逃げたのに、こんなことをされるなんて……
母が悪いんじゃないことはわかってる。
彼がきっと嘘八百並べ立てて、母を信用させたんだろうから…
「……聖子。
前に僕が言ったこと、覚えてる?
僕に背くようなことをしたら、どうなるか……」
その言葉に、私の身体は震え始めた。
「……あ、秋彦さん…ごめんなさい。
私、もう二度とこんなことしないわ!
だ、だから、希美には……」
「……しばらくは、週末の買い物も僕一人で行く。」
「え……えぇ、構わないわ。
だから、どうか希美には……」
私がそう言うと、彼は肩を震わせ押し殺した笑いに顔を歪ませた。
「それはだめだよ。
僕は、決めたことは実行するタイプだからね。」
「お願い!秋彦さん!
私がやったことだもの、私が罰を受けるわ!
だから、お願い!」
「聖子……服を脱ぐんだ。」
「わかったわ。
私、なんでもする!
だから……」
私が言われるままに服を脱ぐと、彼は私をいつもの部屋に連れて行った。
「しばらく一人で反省するんだね。」
「あ…!」
私を部屋に閉じ込めると、彼は部屋の灯りを消した。
自分の掌さえも見えない漆黒の闇…
言いようのない恐怖を感じ、私は手探りでテレビの所に向かったけれど、それも付かない。
暗闇の恐怖に加え、彼が希美に何かするのではないかという不安…
私はそれらに耐えきれず、扉を叩き開けてくれと泣き叫んだ。
私が悪かった、許して下さいと懇願しながら…
だけど、彼は何も応えず、私は泣き疲れて眠るまでずっと扉を叩き続けた。
*
外の様子はまるでわからないけれど、夜が明けたのは間違いない。
昨夜泣いていたせいか、瞼が重くて開け辛かった。
あれから扉が開かれた様子はなかった。
きっと、私の声なんて外にはほとんど届かなかったんだと思う。
どうにかしてここを開けて希美の所へ行きたいと思ったけれど、この扉は私がどれほど頑張った所で開く筈がないことは身に染みてわかった。
何も出来ない事が悔しくて悔しくて…完全に打ちのめされた…
(どうか、彼が何もしませんように…)
私はどうなっても良い…
だから、どうか……!
私には、祈る事しか出来ない。
日がな一日、私は暗闇の中でそのことだけを祈り続けた。
「聖子…君がこんなことをするなんて信じられないよ…」
家に連れ帰られた私は、暴力を受けるかもしれないと覚悟していたけれど、彼はいつもと変わらず物静かだった。
「でも、無駄だよ。
君のご両親には、君が心の病気だって話してあるから。
お義母さんはすぐに僕に電話をくれたよ。
そのおかげで目が覚めた。」
愕然とした。
母はお茶をわかすふりや着替えると言って、こっそり彼に連絡していたんだ。
せっかく…決死の想いで逃げたのに、こんなことをされるなんて……
母が悪いんじゃないことはわかってる。
彼がきっと嘘八百並べ立てて、母を信用させたんだろうから…
「……聖子。
前に僕が言ったこと、覚えてる?
僕に背くようなことをしたら、どうなるか……」
その言葉に、私の身体は震え始めた。
「……あ、秋彦さん…ごめんなさい。
私、もう二度とこんなことしないわ!
だ、だから、希美には……」
「……しばらくは、週末の買い物も僕一人で行く。」
「え……えぇ、構わないわ。
だから、どうか希美には……」
私がそう言うと、彼は肩を震わせ押し殺した笑いに顔を歪ませた。
「それはだめだよ。
僕は、決めたことは実行するタイプだからね。」
「お願い!秋彦さん!
私がやったことだもの、私が罰を受けるわ!
だから、お願い!」
「聖子……服を脱ぐんだ。」
「わかったわ。
私、なんでもする!
だから……」
私が言われるままに服を脱ぐと、彼は私をいつもの部屋に連れて行った。
「しばらく一人で反省するんだね。」
「あ…!」
私を部屋に閉じ込めると、彼は部屋の灯りを消した。
自分の掌さえも見えない漆黒の闇…
言いようのない恐怖を感じ、私は手探りでテレビの所に向かったけれど、それも付かない。
暗闇の恐怖に加え、彼が希美に何かするのではないかという不安…
私はそれらに耐えきれず、扉を叩き開けてくれと泣き叫んだ。
私が悪かった、許して下さいと懇願しながら…
だけど、彼は何も応えず、私は泣き疲れて眠るまでずっと扉を叩き続けた。
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外の様子はまるでわからないけれど、夜が明けたのは間違いない。
昨夜泣いていたせいか、瞼が重くて開け辛かった。
あれから扉が開かれた様子はなかった。
きっと、私の声なんて外にはほとんど届かなかったんだと思う。
どうにかしてここを開けて希美の所へ行きたいと思ったけれど、この扉は私がどれほど頑張った所で開く筈がないことは身に染みてわかった。
何も出来ない事が悔しくて悔しくて…完全に打ちのめされた…
(どうか、彼が何もしませんように…)
私はどうなっても良い…
だから、どうか……!
私には、祈る事しか出来ない。
日がな一日、私は暗闇の中でそのことだけを祈り続けた。
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