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無為な日々が続いた。




時々、パーティが行われる以外は、訪れる者さえいない広間の鏡の中で、私は生きる屍のような日々を過ごしていた。




何の希望も楽しみもない。
セシリアを失った時に、そんなものはきっとすべて消えてなくなったのだ。




なんとかしてこの場所から出ようとしたこともあったが、身体を痛めるだけだった。
どれほど激しくぶつかろうと、透明な壁はびくともしない。
ものを投げつけても、その壁には何の変化もなかった。




それにしても、狭い部屋だ。
せめて他にも部屋があれば良いのに…そう思った瞬間、唐突に扉が現れた。
 私は戸惑いながらドアノブを回し、扉を開いた。
 扉の先には何もない空間が広がっていた。
 私は試しに部屋のことを頭に思い浮かべた。
すると、その願いは簡単に叶えられた。
 何もなかった空間が、今、私が思い描いた通りの部屋に変わったのだ。
 鏡の世界では、私の魔力は普段よりもずっと強力なものになっていることがわかった。
それが、魔導師の思惑なのかそうでないのかはわからない。
だが、そんなことはどうでも良いこと。




私は退屈しのぎに、鏡の世界に大きな屋敷を作り始めた。
どんなものでも、頭に思い描く通りに実現化出来る。
ただ、話し相手になるような人間や動物は…つまり、命のあるものだけは出来なかった。
それが出来れば、どれほど心が癒されたかしれないのに…




私はひとり…




未来永劫、このひんやりとした世界で、話し相手の一人もいないまま、死ぬことすら許されず、孤独な時を過ごすしかないのだ。




 長い年月の経過と共に、私はいつしかその辛い現実を受け入れることが出来た。
もう何が辛いのかさえもがわからなくなるほど、酷く長い時が流れたのだ。
そんなある時…考えもしなかった意外なことが起こったのだ。
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